FIVE NEW OLDのセカンド・フル・アルバム『Emulsification』が届けられた。そこで見られるもの、ひとつは昨年サポート・メンバーから正式メンバーとなったベース、SHUNの加入によって獲得したと思われるスケール感とポピュラリティーを兼ね備えたサウンド。そしてLUCKY TAPESのKai Takahashiや踊Foot WorksのTondenhey、さらにヴェテラン・ギタリスト、是永巧一といったゲストを迎えていっそう多彩な表現をめざそうとするチャレンジングな姿勢である。
なによりもオープンでより貪欲な感じのする点が本作を輝かせているのだが、そんなバンドの前向きで外向きな意識のあり方を読み解くうえで大事になるのが〈Emulsification=乳化〉という原理。互いに混ざり合わない水と油のようなものを混ぜ合わせる、一方を他方のなかに分散させていく働きを意味するこの言葉をコンセプトに掲げ、彼らはさらなる試行錯誤を繰り返し、これまでになく高い完成度を誇る楽曲をものにしたのだ。ブレイクスルーに向けての試金石となり得るアルバムを作り上げた彼らに話を訊いた。
FIVE NEW OLD 『Emulsification』 トイズファクトリー(2019)
音楽に言語の壁は存在しない
――まずは前作『Too Much Is Never Enough』(2018年)からここに至るまでの道のりについて、お話していただきたいです。やはり大きなトピックスとしては初のアジア・ツアーということになると思うのですが、何を得ましたか?
HIROSHI(ヴォーカル/ギター)「夢だった海外でのライヴを実現させて感じたのは、ある程度は予想していたものの、やっぱり音楽に言語的な壁は存在しないな、ってことですね。だからこそ集まってくれるオーディエンスと共有し合える音楽を作っていきたい、という思いを改めて強く抱きました。
その流れで生まれたのが“What's Gonna Be?”という曲。音楽で結ばれるものを作りたい、という思いがそこには込められていたのですが、自分たちが思っていたとおりのものをリスナーが返してくれたことが大きな収穫でしたね。そういった手ごたえを得たうえでアルバム作りに臨めたかなと」
――どの国のオーディエンスの反応が印象に残ってますか?
HIROSHI「曲に合わせて歌ってくれたり、音楽に参加する積極性が高かったのはタイのお客さんでしたね。あっちにはライヴハウスがあまりないので、お金を払って音楽を聴きに行く、というよりは、バーで飲んでいたらそこでバンドが演奏しているという環境だったりするので、自分が知らないものであろうとも平気で乗っかっていくオープンな土地柄なのかなって。
中国、台湾は日本に近いところがありましたけど、自分が好きなものに対してはよりオープン、って感じました。じゃあ日本のお客さんはただおとなしいだけかというとそうではなくて、すごく熱心に、真剣に音楽を聴きに来てくれていることがわかったというか、それはアジアに出ていったからこそできた再発見ですね。
そう思うと、国によってそれぞれキャラクターが違ってアウトプットの仕方も異なるけど、音楽に対する熱量はいっしょなんだな、って」