©Andreas Neumann

ハード・ロックの絶対王者が6年ぶりに帰還。強面のメンバー5人が一丸となって作ったニュー・アルバムは、ときに艶めかしく、ときに獰猛な表情で世界を震わせる!

QOTSAは丸くなったのか

 レーベルが謳う〈USオルタナ~ハード・ロックの絶対王者〉は決してハイプではない。アングラ臭をプンプン漂わせるストーナー・ロックの突然変異だったのもいまは昔。アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーにリーゼントを教えた伊達男、ジョシュ・ホーミ(ヴォーカル/ギター)率いるクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ(以下QOTSA)は、彼らのファンを公言するデイヴ・グロールを巻き込みながら、2000年代のロックでメキメキと頭角を現してきた。

 エキセントリックな魅力も持ちながら、実のところ、骨太のロック・バンドであるQOTSAは精力的にツアーを行う一方で、意欲的にスタジオ・ワークにも取り組み、2、3年おきにアルバムのリリースを続けてきた。そんな活動がハネたのが2010年代の半ば。2013年の6作目『...Like Clockwork』とマーク・ロンソンをプロデューサーに迎えて、2017年にリリースした7作目『Villains』が、それぞれ全米1位および全英2位、全米3位および全英1位というチャート・アクションを記録。後者は日本でもオリコン洋楽チャートの4位に入った。また、2作品共にグラミーの最優秀ロック・アルバムにノミネートされるという快挙を成し遂げ、QOTSAはロックのメインストリームを代表するバンドとして、この時代にガツンとくるロックを求めるリスナーの欲求を満たしながら、その地位を揺るぎないものにしたのだった。

 同時にジョシュがレディ・ガガの『Joanne』に客演したり、ポール・マッカートニーの『McCartney III』をさまざまなアーティストが再構築した『McCartney III Imagined』にベックやセイント・ヴィンセントらと並んで参加したり、QOTSAとしてはコールドプレイやエド・シーランらが参加したエルトン・ジョンのトリビュート・アルバム『Revamp: Reimagining The Songs Of Elton John & Bernie Taupin』で“Goodbye Yellow Brick Road”をカヴァーしたりと、彼らを語るときに挙がるアーティストの名前もずいぶんと華やかなものになってきた。

 もっともある意味ロック界のセレブに仲間入りしたことで、QOTSAは丸くなってしまったんじゃないかと心配しているファンもいるだろう。その意味では、6年ぶりにリリースする今回の『In Times New Roman...』は、QOTSAがいまだ〈絶対王者〉と呼ぶにふさわしい存在なのかを判断する試金石としても注目されているのではないか。

QUEENS OF THE STONE AGE 『In Times New Roman…』 Matador/BEAT(2023)

 『Villains』を引っ提げたワールド・ツアーを終えたあと、QOTSAのメンバーたちはそれぞれの活動に励みながら新作を作りはじめるタイミングを待っていた。ジョシュは、ライフワークであるデザート・セッションズを16年ぶりに再始動させたり、カントリー・シンガーであるニッキー・レーンの4作目『Denim & Diamonds』をプロデュースしたりと、積極的に客演活動を展開。そうした動きを経て、ジョシュ、トロイ・ヴァン・リューウェン(ギター)、ディーン・フェルティータ(ギター/キーボード)、マイケル・シューマン(ベース)、ジョン・セオドア(ドラムス)の5人はジョシュのスタジオ、ピンク・ダックに再集結。その後、マリブにあるリック・ルービンのシャングリラ・スタジオも使いながら、『In Times New Roman...』を完成させたのだった。