INTERVIEW

TIGRAN HAMASYAN

アルメニアの伝統的なメロディ、トイ・ピアノ…イノセントな夢の世界へ

写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久

 

 セルゲイ・パラジャーノフがアルメニアの映画監督ではなく、世界の映画監督であるように、そして彼の『ざくろの色』(1969)があたかも“未来の映画”であるかのように、ティグラン・ハマシアンはすでに世界レベルの“越境プログレ音楽家”、音楽の未来を担わんとする若き猛者(1987年生まれ)の一人だ。

 「パラジャーノフを引き合いに出してもらえるなんて、光栄のひと言につきる。僕の好きな映画監督はパラジャーノフ、アルタヴァスト・ペレシャンアンドレイ・タルコフスキー、あとはスタンリー・キューブリックミケランジェロ・アントニオーニ。僕にとって映画はインスピレーションの源のひとつであり、僕の音楽は映画的だとよく人から言われる。ただし、音楽を創造し、発展させるために本当に必要なものは、音楽からしか得られないと思っている」

【参考動画】ティグラン・ハマシアンの2013年作『Shadow Theater』告知映像

 

 ティグランは3歳の時からトイ・ピアノを弾き始め、すぐに音楽にのめり込んだ。そして16歳の時、家族とともにアルメニアからロサンゼルスへ移住するが、渡米前から自分のアイデンティティーのことを強く意識していたという。

 「LAに移住したことによって、母国に対する想いが強まったのは確かだけど、僕は13歳の頃からグルジェフの音楽をきっかけに母国の音楽に興味持ち、自分のルーツを理解しなければならないと思うようになった。世界のことを理解するためにも。だからLAのアルメニア人コミュニティからは、あえて距離を置くようにしていた。外の世界を知りたかったから」

【参考動画】ティグラン・ハマシアンの2011年作『A Fable』告知映像

 

 複雑な曲の構造や高度な演奏力に話題が集中しがちだが、それ以外のティグランの音楽の魅力をひとつ挙げよう。彼の音楽に取り入れられているアルメニアの伝統的なメロディは、郷愁と旅情を誘う。そしてチェレスタやグロッケンシュピールなどの愛らしい音色は、聴き手を童心に返らせ、夢の世界へ誘う。子供の頃に見たイノセントな夢の世界へ。オリジナル曲やアルメニアの民謡だけではない。『ア・フェイブル』にはディズニー映画の『白雪姫』の挿入歌《いつか王子様が》のピアノ・ソロが収められているが、アルメニアに生まれたセロニアス・モンクが星降る夜に子守歌を弾いているような趣で、涙ぐんでしまいそうになる。

 「それはとても興味深い指摘だね。僕は、子供の頃に弾いていたトイ・ピアノの響きを今でも愛していて、この手の高い音を好んでいる。メロディについて言うと、普段は自分たちの伝統を意識していないアルメニア人も、僕のコンサートにくると、深く感じ入ってしまうようだ。僕の音楽が、きっとアルメニア人の記憶の奥底にあるものに触れるからだろうね」

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