SCOOBIE DOの結成20周年記念シリーズ、いよいよ最後になりました。先輩・フラワーカンパニーズを迎えて好評を博した対談企画の第2弾、スクービーの可愛い後輩・THE BAWDIESを迎えてのメンバー全員インタヴュー! THE BAWDIESのインディー時代からすでに交流があったということで、お互いに思うところも多くある模様。THE BAWDIESが見せるスクービーへのリスペクトや、両者共ガレージ・ロック~ロックンロールをルーツにしていながら、それぞれまったく異なるアプローチでその血を体現していることについてなど、興味深い話が多く飛び出しました。ぜひご覧ください!
★SCOOBIE DO×フラワーカンパニーズのスクービー20周年対談はこちら
【参加メンバー】
from THE BAWDIES
ROY(ヴォーカル/ベース)
JIM(ギター)
TAXMAN(ギター/ヴォーカル)
MARCY(ドラムス)
from SCOOBIE DO
コヤマシュウ(ヴォーカル)
マツキタイジロウ(ギター)
ナガイケジョー(ベース)
オカモト“MOBY”タクヤ(ドラムス)
THE BAWDIESは〈俺たちはロックンロール・バンドなんだぞ!〉という思いが一人一人から出ている(ナガイケ)
――SCOOBIE DOとTHE BAWDIESはいつ頃からのお付き合いなんですか?
ROY「僕らがまだインディーズの頃ですね、2007年~2008年あたり」
――というとTHE BAWDIESの初期にもう出会っていたんですね。
マツキ「僕らがちょうど(独立して)自分たちでツアーを組むようになった頃にTHE BAWDIESがインディーでやりはじめて……という時期だったと思うんだけど」
MOBY「いまのTHE BAWDIESのマネージャー氏がもともとthe NEATBEATSのマネージャーをやっていて、その縁で早くからTHE BAWDIESの音源はもらっていたよね」
ROY「初めて聞きましたその話!」
マツキ「まだデビュー前だったのに、とにかく女の子のファンが凄かった。別のバンド主催のイヴェントなのにほぼTHE BAWDIESのお客さんだろ、みたいな時があったりして(笑)」
ROY「いやいやいやいや(笑)」
――THE BAWDIESの皆さんは、出会う前からSCOOBIE DOの音楽は聴いていたんですか?
ROY「もちろん聴いてきました。僕らが学生の頃にガレージ、ロックンロールとかそういう音楽に興味を持ったんですが、日本には同じようなルーツを持ったバンドはいないだろうと思ってたんです。そうしたらすぐにthe NEATBEATS、SCOOBIE DO、KING BROTHERSなどの存在を知って〈ウワッ! 先にいたんだ!〉と。いつか対バンさせていただけたらなと思っていて。うちのマネージャーと初めて会ったときに出演したイヴェントで最初にKING BROTHERSと対バンさせてもらって、次はthe NEATBEATSだ、SCOOBIE DOだ、とひとつずつ上がっていこう、みたいなことを考えていましたね」
マツキ「THE BAWDIESは最初に出会った頃からいまのスタイルだもんね。だから印象はずっと変わってないんですよ。僕らはTHE BAWDIESよりちょっと世代が上だから、60年代のいわゆるガレージとかロックンロールを志そうとすると、排他的というか村になりがちなんですよね。対バンにしても、自分たちとわかり合えるものがないとなかなか打ち解けないというか。そういうところが2000年代初期のガレージ・シーンやモッズ・シーンにあったと思う。でもTHE BAWDIESは、音楽的にはそういう(ガレージ/ロックンロールの)匂いを感じるのに、他と垣根がないというかね。音楽もそうだし本人たちのライヴ運びもそうだし、僕らが感じていた〈村臭さ〉がない。僕らはメジャーな音楽に対してのカウンターとして、昔のガレージやロックンロールをルーツにしたバンドを始めたようなものだったんだけど、THE BAWDIESは全然カウンター感がなく、むしろメジャー・シーンに前からいました、みたいな感じでバンドをやってるように見えたんですよね。初めから村も何もないっていうか、〈俺らはTHE BAWDIESっていう看板でやってんだ〉という確固たる自信みたいなのが見えて、それがすごく新鮮でカッコイイなと思った」
――シーンに属するということではなく、バンドとして立っていると。
マツキ「ある意味出来上がってるというかね。僕らの世代や僕らの先輩たちの世代のバンドが突き詰めていってやろうとしていたことを、いとも簡単に最初からやってたようなイメージです」
ROY「僕らは逆に、先輩たちがそのシーンをすでに確立させているのを知って、入りたいけど入れないなと感じたんです。入れないというか、完成しきってるところがあったので。モッズ、ガレージ、ロックンロール、ひっくるめて60sみたいなシーンに憧れていて。とにかくどのバンドもライヴがめちゃめちゃカッコ良くて、いわゆるロック・バンドのライヴとは全然違う、はみ出てる感覚というか、スタイリッシュに見せて終わりではなく、ちゃんと感じるものがあったんですよね。僕らと同じ若い世代の子たちも、観たら衝撃を受ける人たちがたくさんいるだろうと感じたので、僕らはそのシーンに入っていくんではなく、この先輩たちが作っている空気感を若い人たちに向けて見せて、(その若者たちを)取り込めればいいんじゃないかと思った。なので先輩方のところにお邪魔して吸収しつつ、それを若い人たちに伝える役をやりたいなと最初に思いましたね」
――ほほ~、そこまで考えていたとは!
ROY「僕がスクービーを知った時期は、まだガレージもブラック・ミュージックにもそんなに深く入ってない時期だったんです。だからこそ自分たちと同じように、触れただけで人生観が変わっちゃうような衝撃を受ける人、もしくはそういうものを求めてる人がたくさんいるはずだから、そういう音楽に触れてほしいなと。でもすごくマニアックなシーンではあるので、自分たちから掘っていかないと出会えない音楽だったりするんですよ。それこそ若い世代はそういう(掘っていく)ことをしなくなってると感じていたので、TVから流れてくる音楽がすべてじゃないんだよ、ちゃんと自分で自分に合った音楽を探していかないと最高なものは見つからないんだよっていうのを証明しなきゃいけないなと思っていたんです。だから先輩方からはできるだけ吸収して、しっかり受け渡そうみたいな気持ちではいました」
――具体的にどういうことを吸収したいと思ってましたか?
ROY「いちばんはライヴですね。最初はどうやってライヴをやったらいいかわからないところもあって。しかもガレージやロックンロールのライヴに足を運ぶお客さんはいわゆる〈コンサートを観に来る人〉とはまた違って、本当に(場を)楽しみにして来ていて、バンドも観せるだけじゃなくてしっかり楽しんでる。僕がそれまでに体験したことがない、バンドとお客さんのグルーヴがひとつの大きな空間を生んでいるようなライヴだったんです。しかもお客さんに乗せられるわけじゃなくて、お客さんの楽しむ気持ちを引き出す、引っ張り出す、みたいなバンドのスタイルをスクービーやthe NEATBEATS、KING BROTHERSはみんな持っていて、これが〈ライヴ・バンド〉なんだなと。こういうライヴをやりたいと思ってもなかなかできるものじゃなくて、最初の頃は自分たちではやってるつもりだけど全然足りてないから、特に大阪へ行ったときは逆にお客さんから〈もっと楽しんでやりなよ〉って言われるぐらい、すごく悔しい思いもした。だから同世代のthe telephonesなど全然違うジャンルのバンドと戦っても、〈自分たちはここ(ガレージ/ロックンロール)の畑出身なんだ〉というのが誇りに思える。こういう先輩たちとやってきたから、誰とやっても負けないという気持ちはありますね」
――こういう気概のある後輩バンドが出てきて、先輩たちはどう思っていたのでしょうか?
マツキ「僕らは古いなと思いました(笑)。回りくどいんでしょうね。ヤフオクで掘ってる7インチ屋さんが同じじゃないかという話を俺がまことしやかにするぐらい、ROYくんと音楽の趣味が近いんですよ。60年代後半のファンキーなリズム&ブルースとかが好きで、そういうのを僕らもやりたいんだけど、スクービーはどうしてもそれを日本語でやりたいっていうのと、日本人の情緒というか日本人としてのブルース感を入れたいという思いがすごく強い。それがいつもいろんな混ざり方をするので、THE BAWDIESとルーツは一緒のはずなのにまったく同じものができない。もしかしたら、ある意味聴いている人にとってはスクービーの音楽はわかりづらいのかなって気もするし。だけど、そのわかりづらい感じを伝えたいという思いが勝っちゃうんで、どうしても変な形のまま転がってるバンドなんですよね。だけどライヴの現場に立ったら、目の前にいる人たちをどれだけ楽しませられるかっていうところでは同じなんだけど」
――ルーツは近いのに、そのアウトプットの仕方が両者でまるで違うというのがすごくおもしろいところだと思うんです。SCOOBIE DOの音楽は全然わかりづらいどころか、自身のルーツにある音楽を日本人にわかりやすく提示してくれていると感じています。メロディーもそうだし、日本語詞であるというのもあるし。逆にTHE BAWDIESは当時のリアルな音をいまの時代に再現するというピュアな感覚が、すごく高いクォリティーで結実しているところに、半端じゃないものを感じます。
ROY「僕らは日本人としてこういう音楽をこう解釈してこう伝えたいんだ、というものがそもそもなかったんですよね。それは単純にいまのルーツにある音楽だけを聴いて育ってきたわけではなくて、それこそタワレコで流れていたソニックスを聴いて〈なんなんだこれは!〉と衝撃を受けて、ソニックスのアルバムを世界中の若い人たちに配りたかっただけなんですよ。みんなこれを知ったら自分たちと同じような気持ちになるに違いないと。でもそれが物理的にできないから、だったら僕たちがソニックスになればいいって思っただけなんですね。だから〈オリジナリティー〉ということをまったく考えてなくて、とにかく自分が受けた衝撃をストレートに伝えたかっただけなんです。そういう感じなので日本語詞というのも頭になく、ストレートに伝えないと自分たちの目的とは曲がってしまうと思ったからそのまま始めました。ただ、やっていくなかで、40年、50年前の音楽を若い人たちに伝えるには現代の感覚で伝えなければいけない部分も出てきて、それによって変化していくことで自分たちらしさみたいなものが勝手に出てきたというのはあるけど」
マツキ「僕らもスクービーを始めた頃はもっとシンプルなスリー・コードのブルース・ロックみたいな曲をオリジナルで作ってはいたんだけど、やっていくうちに聴いてる人の心にまで届けたくなるというか、心を動かしたい気持ちになってくるんですよね。踊らせて楽しかった、というのにプラスαで何かを残したいというのがどうしても出てくる。そのためにどうしたらいいのかと考えてやってるんですよね。ルーツはなんであれ、音楽ができることの可能性をもうちょっと信じてるというか、スクービーだけにできることがもっとあるんじゃないかという思いをいつも持ちながらやってる感じはします」
――なるほど。ちなみに、マツキさんとROYさんは音楽の趣味がとても合うとのことでしたが、他のメンバーの方同士でそういった音楽の話をすることはあるんですか?
MOBY「ちょっと前に(TAXMAN)と一緒に呑みに行きました(笑)」
TAXMAN「(自宅が)近所なんですよ。でもMOBYさんと呑むときは音楽の話っていうよりは、〈この店のこれが美味い〉とか〈このウィスキーがいい〉とか(笑)」
MOBY「そんな話ばっかり」
TAXMAN「音楽もそうですが、そういう趣味の面も合うから一緒にいて楽しいです」
MOBY「ありがとうございます(笑)」
TAXMAN「あと、たまたまお互い別の案件で同じ日に金沢にいたことがあって、打ち上げ会場が一緒だったんですよ。〈どうやら同じ店にスクービーがいるらしい〉と知って、一緒に打ち上げしたりとか、そういうことができる先輩は後輩からするとすごくありがたいんです。先輩面をするんじゃなくて、一緒に仲間として扱ってくれるのがすごい嬉しいし、僕らも後輩にはそう接したいなと思う。そういうところが最高っす」
MOBY「あとJIMくんも昔、僕らのイヴェントに踊りに来てくれたことがあるよね。広島で」
JIM「あー、行きましたね」
――広島まで!
JIM「ちょうど僕らが『1-2-3』(2013年)のツアー中で、移動日だったんですよ。それでたまたま遊びに行かせてもらって」
ナガイケ「カヴァー曲を中心にやる〈DOの部屋〉というイヴェントを広島でやったときに。僕らは広島でワンマンがあると、夜中にDJイヴェントをやることがあって、そっちにも来てくれたんです」
――あ、もうダブルヘッダーで。
ナガイケ「ライヴ、打ち上げ、DJイヴェント」
――フル・セットですね(笑)。
JIM「ライヴでめちゃめちゃゴキゲンになっちゃって。普通にTシャツも買って(笑)、次の日からリハのときはずっとそれを着てた。単なるファンですからね」
――ではスクービーのファンとしての目線で、JIMさんが思うスクービーの魅力はどういうところですか?
JIM「やっぱりライヴがすごくいいんですよ。オーディエンスと心を通わせてグルーヴを作っていくんだけど、でも身内ノリにさせずに、あくまでも〈ステージの人〉として立っているところ、ロックスター然としているところがすごく好きで。あとアドリブのときのプレイが結構エグいんですよ。〈ウワッ!〉ってなる瞬間がある」
ナガイケ「いいのか悪いのか(笑)」
――逆にスクービーの皆さんから見てTHE BAWDIESのライヴというのはどのように思われますか?
MOBY「この間、武道館公演を観に行ったんですけど。外タレを観てる感じがした」
一同「ハハハハハ(笑)」
MOBY「日本語を喋ってるんだけど、いま30歳ぐらいの海外のバンド観てる感じだなと(笑)。これはもう想像の世界なんですけど、GSのいわゆるアイドル、バンドじゃなくて、ザ・ゴールデン・カップスのようにわりと骨太なGSバンドたちって、こんな感じだったんじゃないかなという印象を受けましたね。すごいカッコ良かったです」
――THE BAWDIESのみるみる引き込まれて、転がされてしまうライヴの運び方はたまらないですよね。
JIM「揉まれたからね」
ROY「でもスクービーはもちろん、the NEATBEATS、KING BROTHERS、同世代だとザ50回転ズあたりと対バンすると、〈負けないぞ〉という気持ちでいくんですが、絶対勝てない」
JIM「まず勝てない。100%負けるもんね」
ROY「やっぱりライヴ・バンドはほんとに強いんですよ。バンドをずっとやっていればいい時も悪い時もあると思うんですけど、ライヴを観れば〈やっぱすごいんだな〉というのが一発でわかる。それをずっと続けている人たちは絶対負けないんですよね。いい勝負をすることはあるかもしれないですけど、負けない。だから僕らは絶対に勝てなかったし、それはいまだに感じますね」
――いまだに感じますか。
ROY「先輩たちと対バンをやらせてもらうときは僕らが最初に出るので、〈どうだ!〉っていう気持ちになるんですが……やっぱり先輩たちはすごいな、となるんですよ」
JIM「落ち込んで帰る」
ROY「やっぱり自分たちの見せ方をちゃんとわかってるし、武器がしっかりある。もちろんライヴ・バンドはその場の勢いでバッとやるカッコ良さもあるけど、一方でちゃんと必殺技を持ってるし、〈必ずこうすれば持っていける(盛り上げられる)〉という〈何か〉を持ってるんです。その〈何か〉がどういうものかと言われたら言葉にはできないけど、そういうものを自分たちが持たない限りは絶対戦えないと思います」
――その〈何か〉はTHE BAWDIESのライヴにもありますよね?
ROY「いまはたぶん自分たちなりのそういうものを持っているとは思うので、対バンもしたいですし、勝ちたいなと常に思ってます。でもやっぱりいまだに勝てないという気持ちは常に持ってますね」
――こちらからしたら十分素晴らしいと思うのですが、そういった気持ちを持ち続けていることが重要なのかもしれませんね。
マツキ「THE BAWDIESだけじゃなくて全体的に言えることなんだけど、ちょっと前の時代に比べて演奏の上手い人がいっぱいいるというのと、ライヴ運びを研究してるなというのはすごく思いますね。話題のバンドのライヴを観てがっかりする、みたいなことは一昔前はよくあったけど、いまはそれなりに良いライヴをやっている人たちが前線に出てきている。それは音楽業界、バンド業界がそうじゃないとダメなんだよという風潮になってきてるからなんだと思いますけど」
ナガイケ「THE BAWDIESがライヴ・バンドだというのは、昔からずっと全国をドサ回りしたり、オーストラリアとか海外でやっていたりするから、いろいろ揉まれていまがあるんだなというのは観てて思うし、ステージで一人一人がちゃんと主張している感じもカッコイイ。THE BAWDIESが〈フジロック〉の〈GREEN STAGE〉に出たとき、僕は福原美穂ちゃんのサポートで前日に出てたので観ていて、朝イチだったよね?」
ROY「はい」
ナガイケ「外タレじゃないですけど(笑)、それまでバンドが積み上げてきたものをそこで全部見せつけられたような思いがしたんです。それがロックンロール・バンドであることの誇り、ロックンロールへの愛とか、俺たちはロックンロール・バンドなんだぞ、最高だぞという思いが一人一人から出ていて、カッコイイなと思いましたね」