mature R&B cells
【特集】R&Bの品格
ブームやトレンドの趨勢はともかく、注目すべき作品は次々にリリース中! この季節がよく似合う、成熟したアーバン・ミュージックの真髄を、あなたに
★Pt.1 アヴァントのコラムとディスクガイド(1)はこちら
★Pt.3 ベイビー・フェイスのコラムとディスクガイド(3)はこちら
The Braxtons
そして5人が揃った!
道端3姉妹ばりのドドーンとした佇まいには思わず平伏してしまうが、こちらはさらにドドドーンと5人である。成功したソロ・アクトとしてトニとテイマーを輩出したブラクストンズが、その名も『Braxtons Family Christmas』で勢揃いしたのだ。これは89年にデビューしていた5姉妹にとって、5人での初のアルバムということになる。
長女のトニ(67年生まれ)を筆頭に、トレイシー(71年生まれ)、トワンダ(73年生まれ)、トリーナ(74年生まれ)、そしてテイマー(77年生まれ)から成るブラクストンズは、牧師を父に持つことから各々が教会仕込みの歌唱力を備え、80年代後半から活動を開始している。89年にはアリスタからデビュー・シングル“Good Life”を発表する(テイマーは12歳!)が、トニだけが新興レーベルのラフェイスに見い出されて大ブレイク。4人になったグループからはさらにトレイシーが妊娠を理由に離脱するも、トリオとしてアトランティックから『So Many Ways』(96年)を発表、98年にグループ活動を終えてからはテイマーがソロ活動を続けた。
それから年月が経ち、ゴシップ要員となっていたトニだったが、離婚した両親まで巻き込んでの一家総出で始めたリアリティー番組「Braxton Family Values」(2011年~)の人気が姉妹の活動を後押しすることになった。その間にはセレブ・タレントとして人気になったテイマーもシンガーとしてブレイクし、トレイシーもいきなりソロ・デビュー。そして今回『Braxtons Family Christmas』が完成を見たのだ。
主導するのがトニだということは、ド真ん中でキメ顔も甚だしいジャケが示す通り。別でソロ契約のあるテイマーとトレイシーは一部参加のみのようだが、唯一の男兄弟となるマイケル(68年生まれ)も交え、ダニー・ハサウェイの“This Christmas”や“Last Christmas”などの定番をストロングなリードと厳かなハーモニーで美しく披露する様は、流石に育ちを窺わせるもの。ベイビーフェイスがペンを交えたオリジナル“Every Day Is Christmas”も絶品で、噂されるトニの新作を含め、今後にも期待できそうだ。 *出嶌孝次