INTERVIEW

無料で当然の時代、音楽にお金を払う意味って何だ? KONCOSが本気で考えた、インディー・バンドとライヴハウスの可能性

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.11.17
無料で当然の時代、音楽にお金を払う意味って何だ? KONCOSが本気で考えた、インディー・バンドとライヴハウスの可能性

­バンドが再発見したライヴハウスの熱狂を、パンク・ソウルとでも言うべきサウンドに収めた2016年リリースのアルバム『Colors & Scale』から1年以上。遂にKONCOSが新音源“The Starry Night”を発表する。とはいっても、レコード・ショップやバンドの物販で購入……という通常の販売方法ではなく、12月に東京・下北沢SHELTERと京都・二条nanoで開催するワンマン・ライヴ〈STARRY NIGHT PARTY〉のチケットを購入すると、同曲の7インチ・アナログ盤を会場で手に入れることができる。元Riddim Saunterの古川太一&佐藤寛によるデュオとして結成されて以降、ツアーや編成の面でたえまなく〈挑戦〉し続けてきたこのバンドならではの思い切った施策だが、そうした発表方法を選んだ動機には、2017年のインディー・シーンにおけるライヴのあり方やライヴハウスの収益システムについての問題提起があったという。古川に、『Colors & Scale』以降のバンドの動きを振り返ってもらいながら、いまの彼らを突き動かしている〈変化への意欲〉に迫った。

 


いま起きていることをちゃんと歌いたい

――今回はワンマン・ライヴの前売りに7インチを付けるというアイデアがどうやって生まれたのかを掘り下げていきたいんですが、そもそも同アナログ盤に収録される“The Starry Night”という楽曲自体は、今年の序盤からライヴで披露されていましたよね?

「そうですね。­2017年の1月20日にSHELTERの企画で片想いとツーマンをやったんですけど、そのイヴェントへの出演が決まったのが(去年の)­11月だったんですよ。ちょうど『Colors & Scale』のレコ発ツアーが終わった直後だったし、自分たち的にも次に進みたいときで、片想いとのツーマンでは〈絶対に新曲を演奏したいね〉となった。(それまでライヴの最後に演奏していた)“月待つ島まで”に代わる1曲、というのが最初のテーマでしたね­」

――そして出来上がった“The Starry Night”は、ニューオーリンズ・ファンクを思わすリズムと華やかなコーラスが耳を引くナンバーで、『Colors & Scale』のグル―ヴィーな方向性を引き継ぎつつ、よりブラック・ミュージック的な側面を強めた楽曲だと思いました。

「­僕らの­クセ――ツーファイヴワン進行を転調でつないで、テンションの入ったコードを使って……みたいな曲の感じから一回離れようとは思っていました。今回はゴスペルの昂揚感を­­出したかったんですよ。それはチャンス(・ザ・ラッパー)とかにもあるじゃないですか? 僕はやっぱり(自分のルーツである)ヒップホップが好きで、ゴスペルと現在のブラック・ミュージックが混ざっている、(チャンス周辺の)シカゴの感じも大好きだし、彼らのムードを採り入れたかった。ゴスペルというテーマをふまえて、コーラスとホー­ン隊にも参加してもらうというのも当初から決まっていましたね。

あと、リズムについては、自分もLEARNERSでこの曲と同じようなパターンを叩いているし、ドラムで参加したHARVARDの“SHE IS ALL”とかもそう。これまで僕自身も­このビートで曲を­作ったことが何度かありますね。リズムというのは誰が­使ってもいいものだし、今回の曲もレコードを聴いてくれた瞬間に­、DJ的な発想で­〈あの曲と同系列だな〉となると思う。­そういうのがすごく良いと思うし、­昔から続く良いものを自分たちなりに集めて、­そこから­オリジナルを作れたらいいなって。まあ、サンプリングじ­ゃないですけど、­自分たちのルーツがわかるものであり、けれどKONCOSの音楽を­作ろうと、寛と­話していました。­­僕らがいま対バンしているようなインディーのバンドに近付いても意味がないし、­­それとはなるべく遠ざかるじゃないけど、­むしろ­自分の好きなところに行けば、­対バンしてくれるみんなもおもしろがってくれて、これからも一緒にライヴしたりできるんじゃないかな­って­」

――これまでのコード進行からの解放という点では、ロジャー・ニコルスやトッド・ラングレンのメロディー研究からはじまったというKONCOSの歴史をふまえても、新章を告げる楽曲になったんですね。

「そうなんですよ。­ファンク­に行かないと……もうちょっと黒くならないと­表現が強くならないというのを感じていたんです。­だから、これまでやってきたこととは離れようと意識していて、­いま作っている楽曲にはメロディーがないものもあるし、­ラップ的な表現も増えてきていて」

――太一さんが最近Twitterにあげているレコーディング風景の動画で、寛さんがラップしているものもありましたね。

「もうちょっと言葉に強さを持たせたい、言いたいことをちゃんと言おうとなっていますね。〈いま起きていることをちゃんと歌いたい〉というか、それには日本語ラップからの影響も多々あるんですけど」

――日本語ラップといえば、今回はミックスをIllicit Tsuboiさんが担当されていますね。彼から上がってきた音源を聴いたときの感想は?

「ずっと前から、ツボイさんにはミックスをお願いしたいとスタッフとも話していたんです。実際に上がってきた音を聴いたときは、いままで自分たちにない音の置き方がとても新鮮で、パッと目の前の視界が広がるような印象を受けましたね。もちろん即OKで、そのままNYのスタジオへとマスタリングに出しました」

 

これからも一緒にやっていくような仲間たちが見えてきている­

――リリースから1年以上を経て『Colors & Scale』という作品に対しての、太一さんの位置付けも変化してきたんじゃないですか?

「『Colors & Scale』が完成したときは、〈ようやく出来たな­〉と思ったんですけど、­ツアーで全国のライヴハウスを回ってみると、­やっぱりなんか物足りなくなってきましたね­。­『Colors & Scale』のツアーでは、その地方で活動するバンドに対バンしてもらったんですけど、とにかく出てもらったバンドの熱量がすごくて、このアルバムじゃ負けちゃうなと思うことが多々あったんですよね。­こっちから出てくる熱をもっともっと表現しないと­、­(対バンに)押し潰されるみたいな(笑)」

――アルバム発表時のインタヴューでは〈一生これを持って生きていくくらいのモノが作れた〉と話してくれていたけど、それだけ自信があった作品への評価を変えるほど刺激的なツアーだったんですね。

「こっちから投げっぱなしで当日を迎えるような段取りじゃなくて、地方のバンドやライヴハウスと一緒に作っていけたんですよ。自分的には、あと­何人は来てほしかったとか動員的に悔しい面もあったけど、そこにいたバンドマンや来てくれたお客さんとの繋がり­が、いま気付いたらすごく大きなものになっているんです。­­あのツアーで出来た繋がりをベースに今年も活動しているし、­­そこにいた人は次に僕らが行ったときも変わらずいてくれたし、­〈出会ったときよりもおもしろいことをやろう〉と話せるようになった。もっと­近くなったというか。­マインドの共有が各地­のバンド――特に岡山や高松、北海道のバンドたちとはできていて、〈自分たちがどこにいるべきか〉〈どういう活動を­すべきか〉が見えました」

『Colors & Scale』ツアーの岡山編に出演した、さんだるズのライヴ映像
 

――マインドの共有というのをもっと具体的にいうと、それら地方のバンドのどういった点にシンパシーを感じているんですか?         

「自分たちで場所を作っている、というところですかね­。東京に憧れて­るわけでもないし、かと言って無理に地元をレペゼンしている感じでもなく、­独自の音楽性や文化が育っていて、­そういうところに魅かれました。­どこかで聴いた/見たことがあるようなサウンドや­方法ではなく、地元のノリが勝手に­大きくなって、ほかにない空気を作っているんですよね」

――特別な地方として挙げてくれた北海道のバンド、toiletとは今年の10月にも札幌と帯広でイヴェント〈SUPER RELAX!!!!!!!!!!!!!!〉を組んでいましたね。

「­彼らと出会ったのは2015年で、そのときに(toiletの音源をリリースしてきた)I HATE SMOKE RECORDSを主宰する大澤(啓己)くんたちも含めて仲良くなった­んですけど、­­一緒にちゃんと作ったのは『Colors & Scale』のツアーが最初で、toiletのキムくんが帯広と札幌の対バンをすべて組んでくれたんです。そしたら、まあ変なバンドが出てくるわけですよ(笑)。とにかくおもしろくて、もうその日に­1年後の­ハコをおさえました。それがこの前のイヴェントだったんですけど、­その間に僕らも東京の下北沢SHELTERで主催したイヴェント〈AFTER SCHOOL〉に彼らを呼んだり。­僕らとは地元(帯広)が一緒ですけど、そんなのは関係なくマインドと音楽性で共感できる仲間­だなと思います。それは­岡山や高松のバンドもそうだし、あとは山形・酒田のFRIDAYZのみんなとかも。­やっぱり自分たちの街で自分たちで這って活動している奴ら­と話していると、熱くなりますよ。­そういう横の­繋がりが『Colors & Scale』のツアーからバッとできたんですよね­」

※帯広の対バンは、カジヒデキ、toilet、A Quiet Evening、INQ.、REAL SHOCKS MATTER。札幌は、カジヒデキ、toilet、the hatch、k!so & her friends、Two layers of paint

〈AFTER SCHOOL〉でのtoiletのライヴ映像
FRIDAYZの〈DO IT 2016〉でのライヴ映像。メンバーの酒井健太は同フェスの主宰者の1人でもある
 

――じゃあ、『Colors & Scale』を経て、今年はさらに輪が拡がっていった感じ?

「そうですね。­­­­やっぱり一緒に­できるバンドが増えてきたのは嬉しいですね。­これまで僕らには、そういったバンドがいなかったから。いまは、これからも一緒にやっていくような仲間たちが見えてきている­し、­そういうのはシーンというか文化と言っていいと思う­。いま活動しているバンドのカルチャーがうっすらでも見えてくると、お客さんたちにとっても­ライヴに行きやすくなるし、­そういうシーンが­全国に拡がっていけば、〈あのバンドとやるんだったら行ってみよう〉­とか­参考にもなるし、それは良いですよね­」

――以前、KONCOSがライヴハウス以外の場所――カフェや飲食店での活動が中心になっていったあまり、気が付いたらライヴハウスに居場所がなくなっていた、と言われていましたよね。それをふまえると、­感動せざるをえない話です。

「­­こっちが知りたくていろいろな場所に行っていたら、各地のみんなも­­そういうふうに接してくれるし、­対等な目線というか……別に東京から来たバンドに対してというよりは、同じ­バンドマンという­目線で­­繋がれたんです。だからこそ、そのまま次に行ける感じ­があった」

――住んでいる場所は違っても価値観を共有できるバンドとの繋がりが、自分たちにとっても後押しになった。

「­自分たちのやり方はこれなんだな、と思えましたね。­でも、繋がれた­街はたまたま運が良かっただけで、­­絶対にもっともっといると思うんです。­­この街にはいなかったじゃなくて、­僕らが出会えてない­だけなんですよ。自分たちの努力が足りないから、見つけられてないだけ(笑)­。だから、このツアーを­経て、出会えてない街はもっとちゃんと見るようにしています。­大澤くんがディストロしていたり­、­ヒロくん※※が東京に呼んできたりしたバンドから、知らない地方のシーンや地域に根付いたライヴハウスを発見することは多いけど、­そういう場所には­まず自分で行かなきゃダメだから、ここには行かなきゃいけないなというメモが­たまっていく一方(笑)」

※ミュージシャンら有志が、知人のバンドの音源をツアー先やライヴハウスで自発的に販売していくこと。インディー/パンク・カルチャーで盛んに行われている

※※八王子で毎年開催している〈MATSURI〉や全国を回るライヴ・イヴェント〈BREAK A SCHOOL〉を主催しているパンク・シーンの重要人物

――いま話してくれたような興奮は、太一さんだけじゃなくメンバーの寛さんや清志さんも感じられていたんですか?

「特に­寛は僕以上に刺激を受けていたんじゃないかな­。メインのヴォーカルをとっている立場だし、ツアーの対バンを観て、〈ヤバイ〉と感じたみたいで。彼のライヴでの振る舞いも以前とは違うし、2人で話していても〈僕らは変わらないとダメだね­〉って話になる。今年の3~4月に主催したイヴェント〈AFTER SCHOOL〉で、“The Starry Night”の歌詞と僕らの想いを載せたZINE­を配ったんですよ。そのZINEに、ツアーを経て“The Starry Night”が出来たことについて、寛が文章を書いているんですよ­」

――読みました。寛さんが『Colors & Scale』ツアーで感じた衝撃と興奮を〈渦〉という喩えで綴っていて、すごく良いですよね。それにしても“The Starry Night”は、曲が出来てライヴのレパートリーになってからも、まずZINEが春に作られ、ようやく今回7インチとして音源化される。長いスパンをかけて育てていった曲になりました。

「めちゃくちゃ想いの入っている1曲を作りたかったんです­。アルバムだと気持ちが分散しちゃう気がしたんですけど、1曲を〈これ!〉みたいな­スタンスでやり続けたら、すごく大事なものになっていくんじゃないかなと思い、1年かけてみようと­。­­1曲を1年かけて伝える­というのは決めて­いたので、まず曲についてのZINEを7インチのフォーマットで作って­、そのあとに音源として­7インチのアナログ盤でリリースしたら、合わさって一つの作品になるじゃないですか? ­そういうふうに­繋がっていくのがいいなと思っていました」

次ページ音楽のどこに­お金を落とすのかを、みんなが考えていかなきゃいけない時代
関連アーティスト