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イライジャ・ブレイク『Audiology』 トレンドを持ち味に加えたキャッチーなニュー・アルバム

【特集:RETURN OF SONGSTARS】Pt.2

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  • 2017.11.30

RETURN OF SONGSTARS
[ 緊急ワイド ]R&Bに浸る秋と冬

★Pt.1 CHRIS BROWN『Heartbreak On A Full Moon』
★Pt.3 DEMETRIA McKINNEY『Officially Yours』
★Pt.4 BRIAMARIE『432』
★Pt.5 112『Q Mike Slim Daron』
★Pt.6 ERIC ROBERSON『Earth』『Wind』『Fire』
★Pt.7 ディスクガイド

 


ELIJAH BLAKE
トレンドを持ち味に加えたキャッチーな傑作!

 

ELIJAH BLAKE Audiology Steel Wool(2017)

 デフ・ジャム傘下となるノーID主宰のアーティウムからメジャー・デビュー・アルバム『Shadows & Diamonds』を放ったのが2年前。同作からは裏方としてもキャリアを重ねてきた苦労人ならではの才気が感じられたが、〈オルタナティヴ〉という言葉で済まされがちだった尖ったセンスは、最新作『Audiology』で前作以上にキャッチーな側面を強め、ヴォーカリストとしても格段に説得力を増している。ミックステープ『Blueberry Vapors』を挿んでのリリースとなる新作は、アンダーソン・パークやジョナサン“JR”ロテムも籍を置くLAのスティール・ウール発。90sのR&Bの各種トレンドを凝縮して2017年にスライドさせたような冒頭のアップリフティングなアップ“Occupied”を筆頭に、80年前後のマイケル・ジャクソンばりに弾むブギー・ファンク“Stingy”や80年代のプリンスに通じるファンクなポップ“Technicolor”など、参照元を突き当てたくなる衝動にかられてしまう快演が続く。実際に“Technicolor”のMVはジャネットやボビー・ブラウン、ニュー・エディション、MCハマーなどのミッド80s~アーリー90s名曲のMVにオマージュを捧げたものとなっており、ここからも新作の狙いは明らかだろう。

 前作で垣間見えたミゲルとの相似点も今回は耽美系のそれではなく、ミゲル“Adorn”以降地味にトレンドとなっているマーヴィン・ゲイ“Sexual Healing”のTR-808系グルーヴを取り込み、“Black & Blue”という名曲を仕上げてきた。実にソウルフルなのだが、こうした曲の魅力を倍増させているのが、キーシャ・コール『11:11 Reset』でもヴォーカル・プロデュースに関与していた彼の、地声とファルセットを滑らかに行き来する自由自在なヴォーカルであることは疑う余地もない。ディアンジェロ~マックスウェルを経由してプリンスに辿り着いたようなスロウ・バラッド“When It's Magic”も、そんなイライジャの歌あってこそ。2017年の現在、極めて理想的な道を歩むシンガーのひとりだ。

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