RETURN OF SONGSTARS
[ 緊急ワイド ]R&Bに浸る秋と冬
★Pt.1 CHRIS BROWN『Heartbreak On A Full Moon』
★Pt.2 ELIJAH BLAKE『Audiology』
★Pt.3 DEMETRIA McKINNEY『Officially Yours』
★Pt.4 BRIAMARIE『432』
★Pt.5 112『Q Mike Slim Daron』
★Pt.7 ディスクガイド
ERIC ROBERSON
インディーの雄が臨む暗黒への挑戦
ハワード大学在学中の20余年前にメジャーからデビューするも、現在はインディーR&B界のキングとして破格の支持を得ているエリック・ロバーソン。最近では裏方としてエイヴリー・サンシャインの最新作『Twenty Sixty Four』に関与したばかりだが、2010年代の彼はロバート・グラスパー・エクスペリメントと共演すればユナイテッド・テナーズの一員としてゴスペルに回帰するなど、持ち前のテンダーな歌声を活かしつつ、さまざまな形のコラボが続いている。とりわけ10年ほど前から親交があるフォンテとはフォーリン・エクスチェンジ絡みの作品で共演を繰り返し、デュオ作『Tigallerro』も発表。ソロ作もコンスタントに出し、今年は『Earth』『Wind』『Fire』という洒落の効いたネーミングのEP3部作を3か月おきにリリース。それぞれ〈創造の源〉〈制御不能な愛〉〈未来への情熱〉をテーマに、本人いわく「マーヴィン・ゲイ『What's Going On』をお手本にして、現在のアメリカが抱える諸問題を1年間に渡ってリスナーと共有する」ことで足元を見つめ直そうという意気込みだ。
EPはDJジャジー・ジェフを中心とした企画アルバム『Chasing Goosebumps』の流れも汲み、ジェイムズ・ポイザーやヴィダル・デイヴィスといったかつてのネオ・フィリー勢と旧交を温めれば、ダニエル・クロフォードやカイディ・テイタムらと組んでビート・ミュージック的な方向にも傾きながらネオ・ソウルの現在形を提示。が、軸となるのはラップ・シンギングも交えたエリックの人懐っこい歌声であり、『Wind』でのウィル・ダウニングとの共演でも示されるように、端々に〈ソウル・シンガー〉として歌い続けてきた彼のプライドが見え隠れするのだ。