INTERVIEW

村治佳織『シネマ』 デビュー25周年を祝う意欲作は、ほとんどが新アレンジによる映画音楽集

©Naoki Hashimoto

デビュー25周年を祝う意欲作は、ほとんどが新アレンジによる映画音楽集

 素晴らしい18曲が並んだ。村治佳織のニューアルバム『シネマ』(DECCA)は、彼女のリサイタルデビュー&CDデビュー25周年、及びDECCA専属15周年を記念するアルバムであり、そのタイトル通り、古今東西のシネマからの名曲が並んでいる。

村治佳織 シネマ ユニバーサル(2018)

 「まず、膨大にあった候補曲から何を収録するのか、それを選ぶのにとても時間がかかりました。イギリスと日本でやり取りをして、ようやく決まったのがこの18曲です」

 と村治。彼女が休養から復帰した作品である『ふしぎな岬の物語』(企画/吉永小百合、2014年)から《望郷》、ジブリの名作として知られる『ハウルの動く城』(2004年)から《人生のメリーゴーランド》という2曲の日本映画の作品をはじめ、モリコーネの音楽で知られる『ミッション』の《ガブリエルのオーボエ》、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の《デボラのテーマ》、そしてオールド・ファンには懐かしい『禁じられた遊び』の《愛のロマンス》、『第三の男』の《テーマ》などが収録された(弟の村治奏一も2曲で共演している)。

 「今回は、一部の作品を除いて、編曲も全部新しいものにしました。そのアレンジャー探しもなかなか大変で、これもイギリスとの様々なやり取りを経て、人選が決まりました。そして譜面が送られて来ると、さっそく練習に取りかかる。録音の前はそんな感じで忙しかったですね」

 この18曲のアレンジの中で筆者が個人的に気になったのが、『ロミオとジュリエット』(1968年)からの《愛のテーマ》と、『ローカル・ヒーロー/夢に生きた男』からの《ワイルド・テーマ》を編曲したポール・キャンベルという作曲家/編曲家。とても繊細で複雑な味わいのアレンジだった。

 「私もそう感じました。彼のことは詳しくは知らないのですが、譜面がとても細かく書かれていて、同時にフィンガリングまで書いてある。知り合いにギタリストがいて、おそらく協力してくれているのでしょうね。アレンジにも斬新な部分があって、とても気に入りました。もちろん他のアレンジにも様々な個性があって、シンプルで良いものもあります。また、私自身も最近、作曲、編曲を手がけるようになっているので、このアルバムの中でも2曲、『ラストエンペラー』からの《テーマ》と『ティファニーで朝食を』の有名な《ムーン・リバー》の編曲に挑戦しています」

 もちろんアレンジの多彩さだけでなく、演奏にも工夫が凝らされている。デビュー25周年ということで、村治がこれまでに愛用して来た4本のギターを録音に持ち込んだ。その中には1859年製の名器・トーレスもあった。

 「実際には2曲ぐらいに使えるかなと思って録音に臨んだのですが、録音してみると、トーレスの繊細な味わいがとても良い効果を作り出してくれたので、『この曲もトーレスで弾いてみよう、この曲も』となり、結局、この18曲の中で10曲の録音にトーレスが使われることになりました。コンサートではちょっと音の量感に欠けるところもあるのですが、マイクの近い録音の場合、トーレスの音の減衰の仕方がとても綺麗で、作品の雰囲気によく合っていました。やはりライヴと録音は違う種類のものなのだなと改めて思いました」

 村治が映画音楽に取り組んだのはアルバム『カヴァティーナ』(ビクターエンタテインメント)が最初だった。このアルバムのリリースは1998年なので、偶然だが、今年20周年ということになる。この時には『ディア・ハンター』からの《カヴァティーナ》、『サウンド・オブ・ミュージック』」からの《マイ・フェイヴァリット・シングス》、『バグダッド・カフェ』からの《コーリング・ユー》の3曲を映画音楽としては録音していた。

 「映画の魅力は、自分には体験できない人生を、その映画の中で体験できるということだと思います。私自身はそうやって映画を楽しんでいます。この映画音楽集で、映画の面白さを思い出して頂ければ嬉しいです」

 DECCAとの契約も延長されたそうで、村治のさらなるインターナショナルな活躍にも期待したい。

 


村治佳織 (Kaori Muraji)
クラシック・ギタリスト。東京都出身。幼少の頃より数々のコンクールで優勝を果たし、15歳でCDデビュー。1994年に国内での協奏曲デビューをし、翌年にはイタリア国立放送交響楽団の定期演奏会に招かれ、その模様がヨーロッパ全土に放送され好評を博す。2003年、英国の名門クラシックレーベルDECCAと日本人としては初の長期専属契約を結び、以後数々のアルバムを発表。

 


LIVE INFORMATION

読売日本交響楽団 多摩市民感謝コンサート 〈アランフェス〉&〈展覧会の絵〉
○10/6(土)14:30開場/15:00開演
[曲目]モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ムソルグスキー(ラヴェル編): 組曲「展覧会の絵」
出演:鈴木優人(指揮)村治佳織(g)
会場:パルテノン多摩 大ホール
www.parthenon.or.jp/music/3365.html

オーケストラとめぐる旅 第1回
○10/7(土)14:30開場/15:00開演
[曲目]同上
出演:鈴木優人(指揮)村治佳織(g)読売日本交響楽団
会場:ウェスタ川越 大ホール
www.westa-kawagoe.jp/event/detail.html?id=1132

関連アーティスト