COLUMN

70歳を迎えたキース・ジャレット、バーバー&バルトークのクラシック演奏とソロ即興を圧倒的技術力で聴かせる2作品登場

即興演奏とクラシック演奏の領域

 一昨年にスタンダーズ・トリオとしてはラストと銘打った来日ツアーを、そして昨年は単身来日ツアーを行った現ジャズ・ピアノ界の最高峰キース・ジャレット。今年5月に70歳を迎えるのを記念して、新旧録音の2作品が同時発売される。

KEITH JARRETT バーバー:ピアノ協奏曲/バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番 他 ECM NEW SERIES/ユニバーサル(2015)

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 『バーバー:ピアノ協奏曲/バルトーク:ピアノ協奏曲第3番』は文字通りのクラシック作品。現代アメリカの保守主義派を代表する作曲家バーバーの方は1984年にミュンヘンでの、ハンガリーが生んだ20世紀最高の作曲家バルトークの方は翌85年に東京 (秋山和慶指揮/新日フィル)での録音である。

 ジャズにありがちなアドリブ的な部分は一切なく、徹頭徹尾、譜面に忠実に弾いている。クラシックに真摯に向き合う姿と、その圧倒的な技術力はやはり何度聴いてもすごい。他方、拍の捉え方や足ペダルの使い方などからはジャレットらしさも出ていて、特にリズムが瑞々しい点が、生粋のクラシック・ピアニストとは一線を画している。東京公演の方はアンコールで演奏されたピアノのみによる即興テイクも収録されていて、こちらも秀逸。ジャレットは1980年代半ばから1990年代にかけて複数のクラシック作品に挑んでおり、その時期における音源が発掘されたのは貴重かつ意義深い。

 

KEITH JARRETT Creation ECM/ユニバーサル(2015)

 もうひとつの『クリエイション』は、冒頭でも触れた昨年のジャレットの単独ソロ・ツアーのもので、世界各地で行われた中からより選られたトロント、東京、パリ、ローマでのテイクをパート1~9として収録。すべてが完全即興演奏である。

 1971年にECMレーベルへ自身初となるソロ・ピアノ作を吹き込んで以来、同フォーマットをライフワークのひとつとしてきたジャレットが、70歳を前にして繰り広げたパフォーマンスは円熟の極み。自己との対話とも言えるソロにおいて、予定調和におちいることなく、創造意欲を掻き立て、維持していくのは想像を絶するもの。結実した至高の1音1音に最初から最後まで引き込まれる!

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