INTERVIEW

ヘヴィーが描く〈痛みと無情〉、レッドゾーンに振り切った激しいロックンロールが耳に迫る新作『Hurt & The Merciless』を語る

ヘヴィーが描く〈痛みと無情〉、レッドゾーンに振り切った激しいロックンロールが耳に迫る新作『Hurt & The Merciless』を語る

生演奏の比重を高め、いつも以上にヘヴィーらしいヘヴィーなロックンロールが、重量オーヴァーのグルーヴを伴って耳に突入する! 遠慮など一切なし!!

無慈悲にタックルしてやるぞ

 ケルヴィン・スワビー(ヴォーカル)とダニエル・テイラー(ギター)を核とするUKの4人組、ヘヴィーが通算4枚目のニュー・アルバム『Hurt & The Merciless』を完成させた。前作『The Glorious Dead』(2012年)収録曲“Same Ol'”が2014年になってペプシのTVCMで使われ、バンドは〈フジロック〉にも出演。日本でも格段に知名度を上げてのリリースとなる。本稿では、そんな注目盤をケルヴィンの発言も交えながら紹介していこう。まずは〈痛みと無情〉なんていう、何とも痛々しいタイトルについて。

THE HEAVY Hurt & The Merciless Counter/BEAT(2016)

 「俺とダニエルは今回のアルバムまでに、いくつもの悲惨な出来事やトラウマを経験してね。俺は『The Glorious Dead』のツアー前に結婚したんだけど、すぐに離婚したんだよ。あれは言うまでもなく、物凄い苦痛を伴う事件だった。で、そうしたエモーションに対して、無情に立ち向かわなければいけないと思ったんだ。少なくとも自分は、この難関に対して思う存分、無慈悲にタックルしてやるぞ、と。そういうノリでタイトルを決めたんだな」。

 曲の内容も辛いものが多そう……。もっとも、「西部劇っぽいフィーリング、具体的には『The Good, The Bad And The Ugly(続・夕陽のガンマン)』みたいな響きを持たせたくて、最初は『The Hurt & The Merciless』にするつもりだった」と言うから、そのへんは軽いか。

 さて、本作は2014年6月に作りはじめ、昨年8月にすべての作業を終了。約2年をかけている。

 「過去の作品と比べても長いプロセスではあったけど、今回は異なるアプローチを取ったからじゃないかな」。

 これまでの制作方法は、ケルヴィンやダニエルが自宅で作ったデモをスタジオに持ち寄り、そこに他のメンバーが各自のパートを加え、好きなパートをすべてキープしたうえで、「コンピュータ画面を相手に、テクノロジーを使って曲を形にしていった」というもの。サンプリング、カット&ペースト、ループなども用いて、言わば生のバンドがヒップホップをやっているような感覚だ。

 「俺は自分たちについて、〈コンテンポラリーな資材を使って、ヴィンテージな音を鳴らすバンド〉というふうに形容してきたんだ。ヘヴィーはビートを超タイトにすることもできるし、ほとんどループのように演奏することもできるけれど、実はテクノロジーを駆使しているんだな。だけど、『Hurt & The Merciless』について言うと、サンプリングやループを使ったのは……おそらく全体の20%程度」。

 一度レコーディングした曲をライヴ向けにリハーサルし、実際にツアーに出て演奏していくと、それらの曲が変化することに改めて気付いたらしく、「今回はまず曲そのものをばっちりモノにすることを最優先させた」とか。その過程で曲/パフォーマンスも自然に練られ、変化していった模様だ。

 

レッドゾーンに振り切ろうぜ

 2007年のデビュー時には〈カーティス・メイフィールドレッド・ツェッペリンがセッションしているよう〉とも評されていた通り、彼らのサウンドはロックに潜むソウルが大きな要素となっている。本作も冒頭曲“Since You Been Gone”は、まんまじゃないにせよ、テンプテーションズ“Get Ready”風だったりする。いずれにせよ、リード・トラックとして申し分のない派手な始まりだ。それを支えるのはバンドのリフと、そして一丸となったゴージャスなホーンズ+ストリングス+10名を超えるコーラス隊。ヘヴィーは基本的に4人編成のバンドであるが、ライヴにおいても多数のサポート・ミュージシャンを起用してきた。そうしたサポーターが今回はこれまで以上に活躍。とりわけ、“Since You Been Gone”でホーンのアレンジとスコアを書いているキーボード奏者のトビー・マクラレンは、重要なライヴ・メンバーであり、ケルヴィンのアイデアをカタチにしてくれる人物だそうで。

 「トビーは素晴らしいセンスの持ち主だからな。俺が何かグレイトなラインを思いついて歌ってみると、それを曲として具体化するために必要なスタックを割り出してくれるんだ。頭に浮かんだメロディーを伝えたら、〈OK! こういう感じにしたいのか!?〉と試しに何か演ってくれて、こっちも〈うんうん! でも、それよりも何というか、エディ・フロイドの“Big Bird”みたいなノリがいいな〉と返す。で、驚いたことに彼はそれらを完璧に翻訳してくるんだよ」。

 60年代のスタックスを代表するスター、エディ・フロイドの名前が出たついでに、「俺はもともとかなりのグレイト・ディガーだし、古い7インチ・シングルだの、忘れ去られた音楽を掘り起こすのが本当に好きで、60年代後半から70年代にかけてのメンフィスのハイスタックス作品、アン・ピーブルズシル・ジョンソンアル・グリーンといった人々と、彼らのホーン・アレンジメントのファンだ」ともケルヴィンは語っている。

 一方で、90年代から2000年初頭にかけてのヒップホップを愛し、また一方で「ソニックスだとか、ファビュラス・ウェイラーズみたいなガレージ・ロック・バンドが大好き。要するに俺は、メーターをレッドゾーンに振り切るような激しいものも好きなんだよ」とのこと。もちろん、新作もそうした嗜好が全開だ。ノーザン・ソウル風味が出た“Turn Up”、サザン・ソウル・バラード調の“Goodbye Baby”、マリアッチっぽいアレンジが効いた“Nobody's Hero”、怪奇リズム&ブルースジャイヴ趣味の“A Ghost You Can't Forget”から、キンクス“You Really Got Me”のリフを使った直球ガレージ“What Happened To The Love?”などなど、ミクスチャーぶりを見せながら、ヘヴィーという名のひとつの世界に落とし込んでいく。

 スタジオ内で生演奏を練っていくという作業により、メンバー全員がよりダイナミクスを込めたパフォーマンスを行えたのではないだろうか。なお、今年も〈フジロック〉に登場することが決定した彼ら。ひと回り大きくなった姿が観られる日を、ファンは期待して待つべし。

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