肉体性をダンサブルに強調したグルーヴィーなニュー・アルバム!

 今年4月に新曲“Roll (Burbank Funk)”を突如リリースしてカムバックを告げたジ・インターネット。日本では2回目の来日ツアーもあったばかりとはいえ、グラミーの最優秀アーバン・コンテンポラリー部門にノミネートもされたサード・アルバム『Ego Death』(2015年)からすでに3年が経過しているわけで、これはまさに待望の帰還と言っていいだろう。ただ、その“Roll (Burbank Funk)”を一聴して気付かされたのは、ギャズのサルソウル音源“Sing Sing”を大胆に用いていままでにないダンサブルなサマー・チューンに仕上がっていたこと、また、スティーヴ・レイシーが初めてリード・ヴォーカルを取っていたことだ。これらはバンド全体の変化を予告するものなのか、あるいはリード・トラックとしてのイレギュラーな展開なのか……その回答となる通算4枚目のアルバム『Hive Mind』がいよいよお目見えとなった。

THE INTERNET 『Hive Mind』 Columbia/ソニー(2018)

 もともとオッド・フューチャー周辺でエンジニアを務めることの多かったシド・ザ・キッド(ヴォーカル)とプロデューサーのマット・マーシャンズ(キーボード)によってLAで結成されたインターネットだが、最初のアルバム『Purple Naked Ladies』(2012年)の時点ではもう少しエクスペリメンタルなアンビエント作法のR&Bを標榜していたことはご存知の通りだろう。当初の彼らは所属していたオッド・フューチャー内の派生プロジェクトという見られ方がまだ強く、実際に同作ではレフト・ブレインが共同プロデュースを担ってもいた。また、個々のパーソナリティーも現在ほどは前面に押し出されていなかったように思う。

 が、チャド・ヒューゴ(ネプチューンズ)プロデュースのシングル“Dontcha”がヒットしたセカンド・アルバム『Feel Good』(2013年)の制作をきっかけにインターネットはテイ・ウォーカー、パトリック・ペイジ2世(ベース)、クリストファー・スミス(ドラムス)を交えたバンド形態へと変貌する。その後テイは脱退するも、新たにスティーヴ・レイシー(ギター)とジャミール・ブルーナーが加わってバンドは6人体制となった。この段階でリリースされたのが転機となった先述の『Ego Death』だ。その後はジャミール(現在はキンタローとして活動中)の脱退もあったものの、同作の高い評価も相まってインターネットはクルーの人気を後ろ盾としない独自の支持基盤を強固にし、一方では同時期に頭角を表してきたハイエイタス・カイヨーテらと並んで新種のソウル/R&Bバンドという評価を獲得するに至っている。

 それ以降、シドにはコモンやケイトラナダ、リトル・シムズ、ヴィック・メンサ、リチャード・ラッセルら多様な顔ぶれからコラボのオファーが舞い込み(直近ではダーティ・プロジェクターズの『Lamp Lit Prose』に参加したばかりだ)、2017年にはソロ作『Fin』もリリース。マットも実験的な本質に回帰してソロ作『The Drum Chord Theory』(2017年)を発表したほか、スティーヴはJ・コールやケンドリック・ラマーのプロダクションに関わって大きく名を上げるなど、メンバー各人の活躍がバンドへの待望感を強めていった。そんな個々の成長を受けて5人が再結集した2018年、ようやくアルバムの完成へと漕ぎ着けたわけである。

 その『Hive Mind』からの第2弾シングル“Come Over”はシドのアティテュードを率直に出した美しいMVが〈LGBTプライド月間〉表現に合わせて公開されて話題を呼んだが、サウンド的にはファンクのエッジを立たせながらオーセンティックなR&Bのスタイルになった印象だ。その奇を衒わないシンプルな作り、親密で開放感のあるヴァイブこそが今作のキーとなる部分だろう。意味や解釈よりも先に肉体にダイレクトに作用する『Hive Mind』は、一体感を増したバンドの疑うべからざる新境地に他ならないのだ。