ザッパの録音メンバーだった父の影響下で育ったグレッチェンは、〈ワン・アンド・オンリー〉な存在として敏感な感性の音楽ファンの人気を博した。一方、ペナンから現れたルエケ。ハンコック・バンドでの来日から20年がたつが、その感性は相変わらず瑞々しい。〈グラスパー世代を前世代に押しやった〉、ウエスト&サウス・ロンドンの〈新ジャズ世代〉を代表する作品Joe Armon-Jonens『Archetype』と聴き較べると彼女の普遍性が聴こえてくる。プログレッシヴ・ジャズの時代にもロンドンは世界に先行していたが、グレッチェンの志向する音楽は、それさえを超えて時間の感覚をなくし、人間の感性へ直接訴えかけてくる。