(左から)JIPON(ベース/シンセサイザー)、PETAS(ボーカル/ギター)、TATSU(ドラムス)、MARU(ギター)

前作『Life Is Beautiful』から約2年10か月ぶりに届けられたニューアルバム『Loading...』。Dortmund Moon Slidersは、海外インディーロックのエッセンスを感じさせながらも、J-POPのキャッチーさ、シンセポップ、インディーフォーク、ダンスミュージックといった多彩なジャンルを自在に取り込み、自分たちのオリジナルな音楽を追求し続けている。しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

仕事とバンドの両立、創作の迷い、そしてコロナ禍を経て、〈次に進むための一歩〉を探し続けた彼ら。そんな中でたどり着いたのが、〈ライブで映える曲を作る〉という新たな視点だった。セッションを重ねながらバンドとしてのサウンドを磨き、日本語の多義性を活かした歌詞表現にも挑戦。まさに今も〈Loading...(読み込み中)〉である彼らの最新モードが詰め込まれた本作について、PETAS(ボーカル/ギター)とJIPON(ベース/シンセサイザー)に話を聞いた。

Dortmund Moon Sliders 『Loading...』 405 PRODUCTION(2025)

 

僕らは〈読み込み中〉、まだ進化し続ける

──前作から約2年10か月と時間が空いた印象がありますが、その間にバンド全体でさまざまな変化があったようですね。

PETAS「僕らメンバーはみんな働きながらバンドを続けているのですが、特に僕とJIPONは仕事の忙しさが増していた時期でした。

それに、もともとDortmund Moon Sliders(以下、DMS)には前身バンドがあって、『Life Is Beautiful』でサウンドを大きく変えたこともあり、次はどう進むかが見えなくなってしまったんですよね。〈こういう曲をやった方がDMSっぽいんじゃないか〉〈今の僕らに求められているサウンドは……?〉などと考えすぎるあまり、かえって曲作りが停滞してしまって。メンバーに聴かせてもピンとこないことが多く、前に進めない時期が続きました。

でもその発想を、〈ライブで映える曲を作ろう〉と切り替えたところ、自然と曲が生まれ始めたんです。セッションを重ねるうちにバンドの方向性も明確になり、ようやくアルバムとして形になりました。時間はかかりましたが、その過程があったからこそ生まれた曲ばかりですね」

──環境の変化は、作品にも影響を与えましたか?

PETAS「そうですね。もともと僕は環境を大きく変えるのが苦手で、昨年転職を決断したときは正直、不安も大きかったんです。

レコーディングの最終盤にできた“Climber”も、そうした自分自身の変化を象徴する曲。最初から〈応援歌みたいな曲を作ろう〉と思っていたわけではないんですが、結果的にリアルな気持ちが反映され、リスナーを奮い立たせる曲になったのかなと感じています」

──アルバムタイトルも、そうした変化がテーマになっているそうですね。

PETAS「タイトルはかなり悩みました。ただ、“Climber”の冒頭に 〈Loading...〉というフレーズが出てくるのですが、その言葉がずっと引っかかっていたんです。ちょうどメンバーそれぞれが変化と向き合っている時期でもあったので、無意識のうちにその言葉が象徴的に残っていたのかもしれません。

前作から2年以上経ち、年齢を重ねて経験も積んだけど、僕ら自身まだ〈読み込み中〉だよな、と。決して完成形にならず、これからも進化し続けていく。その表明として〈Loading...〉という言葉にしっくりきたので、最終的にこのタイトルに決めました」