
1979年のYMOを最新技術でよみがえらせた快挙
YMOのボックスセット『YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY』が2025年4月30日(水)にリリースされる。
本作は、YMOが1979年に行なった海外公演の模様を収めた5枚のCDと1枚のBlu-rayで構成されたボックスセットだ。〈YMO LIVE AT THE GREEK THEATRE 08/04/1979〉と銘打たれたディスク1には、ロサンゼルスのグリークシアターで行なわれたザ・チューブスのコンサートにスペシャルゲストとして出演した、記念すべきYMO初の海外公演の模様が収められ、ディスク2~5には日本のバンドとして初めて開催したワールドツアー〈TRANS ATLANTIC TOUR〉より、ロンドンとパリ、ニューヨークで行なった4つのライブをそれぞれに収録。
さらに、過去にVHSやDVDなどでリリースされた〈YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR〉と〈COMPLETE HURRAH〉を1枚のディスクに収め、待望のBlu-ray化を実現させた〈YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR〉もパッケージされるほか、ブックレットには最新の細野晴臣のインタビューや未発表の写真も掲載されるという、〈永久保存版〉とも言うべき豪華な仕様に仕上がっている。
また、ファンにはおなじみのGOH HOTODAがミックス(2ch & 5.1ch)とマスタリングを実施、細野監修のもと最新の音源に。そして、映像も最新の技術でアップコンバートされている。
このときの音源といえば、1980年にリリースされたライブアルバム『パブリック・プレッシャー』に各公演のパフォーマンスが収められているが、サポートを務めた渡辺香津美のギターパートは諸事情により削除され(該当部分は、坂本龍一のシンセに置き換え)、その後、渡辺のパートが復活したバージョンは『FAKER HOLIC』などに一部が収録されたものの、今回のように録音が実施された各ライブの演奏の全貌が可能な限り再現された形でお披露目されるのは〈快挙〉と言って差し支えないだろう。
矢野顕子も大活躍! 変化していく演奏は聴き比べ必至
さて、肝心の各ライブについての詳しい説明だが、あまり紹介しすぎると〈ネタバレ〉になってしまうので、いくつかピックアップしていきたい。ディスク1のグリークシアター公演は〈スペシャルゲスト〉扱いということもあり、セットリストは7曲とほかのライブに比べると少ない。“BEHIND THE MASK”に始まり、“TONG POO”で終わり、途中坂本のソロ曲“1000 KNIVES”を挟むものの、当時のYMOの〈はじめの一歩〉的な選曲がなされている印象だ。なお、同公演の模様は1997年にアルバム『LIVE AT GREEK THEATER 1979』ですでに商品化済みだが、向上した音源の影響もあり新鮮さをもって聴くことができるだろう。オーディエンスの熱狂を受け、アンコールとして演奏した“TONG POO”における細野のファンキーなベースプレイだけでもリピート必至だ。
一方、ディスク2~5の収録曲はそれぞれ14~15曲のセットリストで構成。1曲目“CASTALIA”、2曲目“RYDEEN”、3曲目“BEHIND THE MASK”まではどのライブでも同じで、4曲目以降は各公演で若干異なっているが、グリークシアター公演では披露されなかった“FIRECRACKER”“TECHNOPOLIS”“SOLID STATE SURVIVOR”といった『イエロー・マジック・オーケストラ』『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』収録曲を中心に、シーナ&ザ・ロケッツの“RADIO JUNK”“ROCKET FACTORY”やサポートを務める矢野顕子の“KANG TONG BOY”、のちにYMOの『増殖』『BGM』にて再演される坂本のソロ曲“THE END OF ASIA”“1000 KNIVES”という、これ以上ない〈ベスト〉な選曲に。被っているナンバーがほとんどなので、各公演での聴き比べは必至。
なかでも、回数を重ねるごとに熱を帯びる演奏へ変化していく“KANG TONG BOY”が凄い。各メンバーによるテンションMAXな演奏と矢野の自由奔放なボーカルが、各会場のオーディエンスを完全にノックアウトさせたことは演奏終了後の拍手喝采ぶりからわかってもらえるだろう。