『ピアノ・ホライズン』に80年代の日本の音楽シーンを垣間見る。ローズからモールス信号のような単音の連打が聴こえ、クラヴィのクラスターが連打を断ち切る。ファンキーな音色にマイルス・デイヴィスの音楽のようだと感じるが、リズムにグルーヴが感じられるわけではない。松平頼暁がこのアルバムを企画したピアニスト里見暁美に書き下ろした“エリクサトーン”だ。しばらくしてピアノが緩やかに辿る下降音形が聴こえ、そこに時折りピアノからの異音が混じり、雨後のアスファルトから昇る蒸気のような音場が立ち上がる。藤枝守の“フォーリング・スケール第6番”だ。この二人の作品は「表現内容よりも構造が強調」されていると近藤穣はノートに記す。