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雨のパレードがポップスの概念を変える―サウンドの先鋭性と歌の強度増した新作『Change your pops』でめざすものとは?

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  • 2017.03.17
雨のパレードがポップスの概念を変える―サウンドの先鋭性と歌の強度増した新作『Change your pops』でめざすものとは?

新世代の音楽で時代を変える──ちょうど1年前にそう宣言した4人が目論む次なる変革。サウンドの先鋭性と歌の強度を増した信念が聴き手の人生と共振したとき、新たな〈ポップス〉が誕生する

 

ポップスの概念を変える

 アトモスフェリックなインディーR&Bの潮流にある全13曲をもって〈新世代の音楽で時代を変える〉と宣言したメジャー・デビュー作『New generation』から1年。雨のパレードよりニュー・アルバム『Change your pops』が到着した。その表題からして、バンドの姿勢にまったくブレはない。

雨のパレード Change your pops スピードスター(2017)

「世界的な基準でカッコイイって思える音楽を、この日本に〈ポップス〉として浸透させたい。できれば、同世代のバンドと一緒に音楽のレヴェルを底上げしたいっていう気持ちがあります。洋楽しか聴かないっていう人にも、逆に洋楽はそんなに聴かないっていう人にも、〈これもポップスって言っていいんだ、カッコイイね〉って言わせたいというか。『Change your pops』は、どっちのポップスの概念も変えてやるぞっていう、そういうアルバムですね」(福永浩平、ヴォーカル:以下同)。

 そんな意志が象徴的に表れているのが、冒頭の“Change your mind”。ラウドなイントロやトラップ・ビートを挿みつつ、ダンサブルに疾走するアップ・チューンだ。

「“stage”(2016年12月のシングル)を出したとき、自分たちとしてはアッパーな曲のつもりだったんですけど、そうじゃないと感じる人もいて、〈これ、アッパーじゃないのか〉と(笑)。それで今回は、BPMを速めにしてみたりとか、ダッキングって言って、バスドラとシンセの音の出方を調整するテクノ寄りの技術を使ってみたりとか、シンセにディレイをかけて踊れる感を出してみたりして、自分たちのなかでアッパー寄りのものを作ったって感じですね。落ちサビとかアウトロにはトラップのビートも入れてみたりして。で、そこに、3~4年前に作ってたパラ・ワンっぽいダブステップのネタをイントロとしてくっ付けたんです。最近いろんな音楽を聴くなかで、ガラッと印象の違うものをくっ付けてもイントロは成立するなって感じたので。歌詞は、『Change your pops』について書きたいなと。人はみんな、それぞれが〈自分なりのポップス〉を持っていて、まずは自分がそれを認めることで、時代にもそれがポップスとして認められるっていうことを歌ってて。自分の信念に素直になれるようにと思って書いた曲ですね」。

 本作の制作は、“You”を発表した昨夏頃から開始したという。最初期には2泊3日の合宿も行ったそうで、そこで形になったのが2通りのエレクトロ・ハウス“Count me out”と“feel”。全編を覆う音響的なエフェクトはまさに雨パレ印だが、聴き手を柔らかく抱き込むような官能性を湛えたグルーヴは、初めて見せる一面だろう。

「〈アルバムに、ディスクロージャーみたいなのが2曲ぐらい入ってたら超カッコイイんじゃない?〉ってことで、“Count me out”と“feel”はドラムマシーンを使って作った曲ですね。最近デイヴ・スミスっていうメーカーのテンペストっていう、すごく良いやつを手に入れて、もう嬉しくて(笑)。歌詞は、“Count me out”に出てくる彼は挑発的(笑)。僕らのMVの監督をやってる同年代の友人が、別の人に〈作風が丸くなったんじゃない?〉みたいなことを言われたらしく、それが僕に飛び火して、〈そもそも曲を作ってる僕が丸くなったんじゃない?〉ってことになって。それで〈はあ?〉と思って、尖った歌詞を書きました(笑)。楽曲的には尖り散らして、歌詞では聴き手に寄り添うみたいなイメージで最近はいたので、自分のなかではまた違う道が作れたなと思います。“feel”のほうは、ドスケベな感じがしますよね(笑)。僕、25歳になったんで、ちょっと大人の魅力を出したいなって思いはじめて書いた歌詞です」。

 

聴き手の人生に寄り添う

 そうしたエレクトロニックな色合いの強い楽曲がある一方で、“Take my hand”“Hey Boy,”ではバンド・サウンドが前面に。リリックも、従来のイメージからはみ出した先述の2曲とは対照的に、“You”以降の方向性――さりげなく聴き手に寄り添い、背中を押すものとなっている。

「“Take my hand”は、80sポップ感を出したいと思って作りはじめた、自分たちとしては明るめのコード感が新鮮な曲ですね。メンバーは誰ひとりTOTOを通ってないんですけど、なぜか〈それぞれの思うTOTO〉に向かって出来た曲(笑)。歌詞も気に入ってて、〈人生に寄り添う〉っていう、アルバムのテーマに近いものですね。全国民の兄になったような気持ちで、楽しんで書けました(笑)。“Hey Boy,”はメロディーがノれる感じだったので最初はブレイクボットみたいにしようかと思ってたんですけど、ベース発信で、これも80sポップみたいな感じにしてみたらすごくハマって。あと僕、最近はロック寄りな流れがきてるような気がしてて、それでギター・ソロを、エモいフレーズをガッチガチに固めて入れてもらいました(笑)。歌詞は……僕、いろいろあって、一時期学校に行ってなくて。当時の引きこもりの自分と、いまの自分が会話してるようなイメージで書いたものですね」。

 また、さらなる新曲としては、恋人と眠りに落ちる前のひとときをアンビエントなミディアムに溶け込ませた“寝顔”も。

「これは、NHKのアニメ『ほのぼのログ』に“morning”を提供したときに作ったメロが元で。サビのコード進行は“morning”と一緒なので、対になるよういろいろ考えましたね。あっちは朝だからこっちは夜だとか、あっちはピアノでこっちはエレピだとか、Aメロ、Bメロのコード進行を変えてみたりとか。あと、〈雨のパレードを聴くと眠くなる〉って言われることがあるので、じゃあ逆に、全力で寝かせにいってやろうと思って。エンジニアの人からは、〈甘すぎてドキドキして寝れへんがな〉って言われましたけど(笑)。これも、歌詞はセクシー感を出そうと。全国民の恋人になった感覚で書かせていただきました(笑)」。

 また、それら歌モノの間で本作の世界観を支えるのが3つのインタールード“perspective”“intuition”“speech”。アブストラクト~トラップ+フリーキーなベース・ソロ~ゴスペル的なハーモニーと先鋭的に攻める音に冠したタイトル――〈物の見方・視点〉〈直感〉〈それを伝える能力〉は、「自分が前に進むときに大事だと思っている3つのこと」だと福永は語る。そんなふうに、細部まで自身の身上を行き渡らせることで完成した『Change your pops』。その言葉と旋律が聴き手の人生と共振したとき、本作はつまり〈ポップス〉となる。

「サウンドはディープに、新しいことに挑戦してると思うんですけど、歌モノであること、メロディーがポップであることはすごく意識してて。ユーミンとかSMAPとか、それこそワン・ダイレクションジャスティン・ビーバーもそうだと思うんですけど、ホントにカッコイイことやってるのに、知らず知らずのうちにみんながポップスとして受け取ってる。このアルバムを聴いた人にはそういう感覚になってほしいし、そうなってもらえる音楽に今後も挑戦し続けたい。それをやれる土壌を作りたいっていうバンドなんです、雨のパレードは」。

雨のパレードの作品。

 

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