大胆に舵を切った〈衣食住〉3部作の完結盤

 オーガニックな風合いも持つカラフルなエレクトロニック・サウンドや洗練されたヴィジュアルを活かし、早耳のインディー・ポップ/ロック好きを中心に支持を得てきた男女混成5人組バンド、LILI LIMIT。〈次のステージへ行きたい〉〈変わりたい〉という意志をじわじわ見せていた彼らだけれど、正直ここまでの大変貌は想像していなかった。もしや、〈食〉がテーマだった前作『LAST SUPPER EP』は布石!? 新規リスナーの入口になりやすいメニューを賞味させたうえで、濃厚すぎるこの新作『LIB EP』で虜にする筋書きだったのかも。

LILI LIMIT LIB EP キューン(2018)

 いずれにしても、ヤラれた。〈衣食住〉をコンセプトとしたEP3部作の完結盤〈衣〉。〈個性を隠す必要性も特にないのかもしれないな〉と歌う冒頭の“COLORS”を聴けば、今回は自分たちに似合う音を自由に纏ったことがわかる。無限の荒野を思わせるダークで簡素なトラックに乗せて表現者としての自我を宣誓すると、続く“GET UP”もバンド感を逸脱し、嗜好性を剥き出しにした印象だ。音数は激減し、低音は強調されてビリビリくる。ベース・ミュージックの震えが全編を覆うナンバーだが、音の質感こそ変われど、あくまで歌モノとしてJ-Popの真ん中を狙う野心は不変だ。“ENCLOSE”の英語/日本語の併用の仕方なんて、いい意味でベタ。なのに挑戦的な表情を浮かべる焦げ付くようなギター・ソロもあったり、次の“FEEL IT”にはピアノと打ち込みによるクールにハズしたリズム感覚も。まさに〈New Pop Standard〉と呼ぶに相応しい一枚!