COLUMN

ニトロデイ――DAOKOら魅了した、次世代バンド大本命! オルタナティヴ・ロックかき鳴らし夏の風景描いた『レモンドEP』

(左から)小室ぺい、やぎひろみ、岩方ロクロー、松島早紀
 

その音と佇まいが衝撃だった。平均年齢18歳、まさに破格の原石。あどけない文化系ルックスながらも、90年代のUSインディー・ロックやグランジ、オルタナティヴ・ロックからの影響を感じさせる青くこじれたヴィンテージな轟音サウンドと、キラキラとポップに輝くメロディー。新世代を代表するロック・バンドとして話題を呼んでいるニトロデイが、2枚目のEP『レモンドEP』をリリースした。

ニトロデイ レモンドEP SPACE SHOWER(2018)

ニトロデイは、2016年3月に結成。横浜出身の小室ぺい(ギボ)、やぎひろみ(ジャズマスター)、松島早紀(ベイス オン ベイス)、岩方ロクロー(ドラムス)による4ピース・バンドだ。ピクシーズやスマッシング・パンプキンズ、ニルヴァーナ、そしてメンバーが共通して好きだというナンバーガール。そんな彼らが敬愛する音楽のフォーマットをハックしつつも、その音楽性は圧倒的なオリジナリティーを持っている。海外のバンドからの影響を多大に感じさせるサウンドながら、小室によるメッセージや意味性から逸脱した文学的な日本語詞を活かして、誰にも耳馴染みのいいキャッチーな楽曲に仕上げるセンスに長けているのだ。

※彼らはそれぞれのパート名をこのように表記している。ギボ=ギター/ヴォーカル、ジャズマスター=ギター、ベイス オン ベイス=ベース

そのサウンドで筆者が特に注目しているのは、ジャズ・マスターにこだわるギタリスト、やぎひろみがアウトロで鳴らすディレイの響き。一聴して快楽性を感じる〈鳴り〉の美しさに心を鷲掴みにされてしまった。また一方で退廃的な負の感情が溢れんばかりのサウンドに、初期衝動のエネルギーの凄みを感じた。

YATSUI FESTIVAL! 2018/Photo by 落合由夏
 

もともと彼らはバンド結成1年目に、ロッキング・オンが主催するアマチュア・アーティスト・コンテスト〈RO69JACK 2016 for COUNTDOWN JAPAN〉で、betcover!!やMr.EggPlantらと共に優勝したことでその名を知られることとなった。同コンテストでも演奏され、当時の代表曲であった“ティーンエイジブルー”は未だ音源化されていないが、初めて聴いたときのインパクトは今も忘れられない。

さらにその翌年の夏、渋谷の古着屋・ BOYのオーナー、奥冨直人主催によるイヴェント〈LIQUIDROOM&BOY presents Song For Future Generation〉で観たときも、脱力感を醸し出した佇まいながら、爆発力のある演奏で会場の空気を一変させていた。そのときは対バンでCHAI、ドミコ、King Gnu、MONO NO AWARE、odolらが出演していたが、音楽的なジャンルや年齢は異なりながらも、ニトロデイと同じく、フラットな感性で時代にメスを入れるような同時代の逸材たちが揃っていたのも印象的だった。

YATSUI FESTIVAL! 2018/Photo by 落合由夏
 

ニトロデイをフェイヴァリットにあげる音楽評論家やアーティストは多い。彼らが敬愛するART-SCHOOLや向井秀徳、THE NOVEMBERSのオープニング・アクトにも抜擢されているし、音楽フリークとして知られるDAOKOは、昨年〈この夏一番聴いた曲〉としてニトロデイの“青年ナイフ”を挙げている。自身がパーソナリティーを担当するFM番組「SONAR MUSIC」では“青年ナイフ”について、〈胸が “ギュン”ってする〉と独特な表現で絶賛していた。

ニトロデイの2017年作『青年ナイフEP』収録曲“青年ナイフ”
 

そうして各所から大きな注目を集めつつあるなか、ニトロデイの新EP『レモンドEP』は本日リリースされた。

詞曲はすべて小室ぺいによるもの。夏をテーマに制作したという本作は、青春を感じさせる〈青い〉ユース感を持ち、前作『青年ナイフEP』(2017年)以上にアッパーでパンキッシュな轟音サウンドを惜しげもなく聴かせてくれる。1曲目“レモンド”で鳴り響く、ピクシーズを彷彿とさせる乾いたリード・ギター。〈不甲斐ないな〉〈冴えないな〉とかすれ気味の声で激しくシャウトする小室。破壊的なギターをかき鳴らすやぎひろみ。骨太で屈強なリズムを奏でる松島早紀&岩方ロクローの2人。もはや初期衝動の一言では片づけられない、バンドのネクストフェーズを予感させる突き抜けたポップさがある、彼らの新たな名作の誕生だ。

“レモンド”
 

キャッチーなギター・リフと透明感ある美しいコーラスワークが感情をアップリフトしてくれる2曲目“グミ”の高揚感。とある暑い夏の日常を奥田民生的にとつとつと歌っていく3曲目“向日葵”では、暴力的なまでに暑い今年の夏を音楽の記憶で記録していくようだ。また、コーラスから始まる4曲目“氷菓”は、氷菓=アイスをモチーフにした詩的なロック・チューン。そして終曲“ユース”は、陽炎のごとく境界線を曖昧にするローファイなサウンドと力強いロッキンなグルーヴが織りなす逸品だ。

はっぴいえんどやサザンオールスターズ、TUBEとは異なる夏の風景を、ニトロデイは『レモンドEP』で、オルタナティヴ・ロックをかき鳴らし表現した。クーラーの設置が問題になり、子どもたちは自由に外で遊べなくなるほどの、かつてない今年の猛暑。終わりの始まりを予感させるような、空虚で楽しいだけじゃない僕らの夏。だからこそ、見えない何かに立ち向かってシャウトし続けるニトロデイに心をゆだねたい。

 


Live Information

〈『レモンドEP』 RELEASE TOUR〉

日時:8月4日(土) 神奈川・横浜BB STREET
開場/開演:18:30/19:00
共演:突然少年、Layne、betcover!!

日時:8月10日(金)大阪・心斎橋Pangea
開場/開演:18:30/19:00
共演:ナードマグネット、MASS OF THE FERMENTING DREGS

日時:8月14日(火)愛知・名古屋CLUB UPSET
開場/開演:18:00 / 18:30
共演:The Wisely Brothers、Layne、THE STEPHANIES

日時:8月30日 (木)東京・下北沢THREE
開場/開演:19:00/19:30
共演:uri gagarn

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