INTERVIEW

ヒップホップ・アーティストが生真面目に見えるほど刺激的―サックス奏者・大石将紀、ヤコブTVのブームボックス作品に挑む

ヒップホップ・アーティストが生真面目に見えるほど刺激的―サックス奏者・大石将紀、ヤコブTVのブームボックス作品に挑む

サックスの音響派―ヤコブTV作品集

 いろんな意味で「ノイズ」が大好物なせいか、私の場合、クラシック系サックス奏者による作品にときめいたという経験はあまりない。しかし、これはすこぶる刺激的で胸高鳴った。大石将紀の初ソロ・アルバム『NO MAN'S LAND Masanori Oishi plays JacobTV』。なにしろタイトルどおり、ヤコブTVヤコブ・テル・ヴェルデュイ)の作品ばかりを演奏したコンセプチュアルな作品。それもブームボックスものばかり。ヤコブTVの作品ばかりを演奏したCDはピアノやサックスなど過去にもいくつかあったが、ブームボックス作品ばかりのサックス・アルバムというのは、おそらく世界初だろう。

大石将紀 NO MAN'S LAND Masanori Oishi plays JacobTV ZIPANGU(2015)

 オランダ人ヤコブTVは、ロック・ミュージシャンを経て作曲と電子音楽を学んだ後、1980年代から本格的に現代音楽の世界で活躍してきた。ポップアート的な軽やかさとユーモアと斬新さ、そしてシャープな同時代性を身上とする手法から“ニューミュージック界のアンディ・ウォーホル”などと呼ばれることが多いわけだが、とりわけ、スピーチと様々なサウンド(電子音を含む)を複雑に組み合わせて作ったテープをバックに生演奏するというコンセプトのブームボックス作品は、「ヒップホップ・アーティストが生真面目に見えるほど刺激的だ」と評されるなど、前衛音楽家としての彼の勇名を高めてきた。

 大石のこの初ソロ・アルバムは、刑務所の囚人たちのスピーチを使った名曲《Grab It !》をはじめとするブームボックス作品7曲(1曲は、日本の声明を素材にした、本CDのための書下ろし作品)を、多重録音も交えながら単独で演奏したもので、更に、最前衛の音響構築家である日本人実験音楽家dj sniffによる圧巻のリミックス・ワークも1曲追加されている。

 「人の語りを混ぜた現代音楽作品はあるにはあるけど、言葉の高低や抑揚とサウンドがここまでぴたっとはまり、ヒップホップ的カッコよさをもつ音楽は聴いたことがなかった」と、08年にヤコブTV作品に出会った時の興奮を振り返る大石。数年前にはヤコブTV作品だけのコンサートを開くなど着々と心の準備を進め、遂に今回の録音にこぎつけたのだという。

 「人間の生きたスピーチが自分のサックスの音と交わり、融合すること。更に、彼の作品が持っている社会的メッセージを自分なりに体感し、考えながら演奏できること」

 ヤコブTVのブームボックス作品の演奏、そしてCD完成の喜びをそう語る大石。取材の締めの言葉は「松蔭浩之さんが制作したPVも素晴らしい出来です」。是非Youtubeでチェックしていただきたい。

 

LIVE INFORMATION

"HORIZON" 大石将紀コンサート

○11/25(水)18:30開場/19:00開演 
出演:大石将紀(sax)松尾俊介(g)
○2016年1/27(水)18:30開場/19:00開演
出演:大石将紀(sax)有馬純寿(electronics)
会場:近江楽堂(東京オペラシティ内)
www.okamura-co.com

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