2014年に結成、名古屋出身の男女混成4人組バンドによる初の全国流通盤。ひんやりとしたピアノの音色を中心とした楽曲からはジャズやファンク~ネオ・ソウルの素養を感じさせつつも、スタイルを限定しない曖昧さを良しとするような、いい意味で掴みにくいクロスオーヴァー感覚が楽しい。そんななかで言い訳ばかりの人を皮肉る“Nib”、SNSに鋭く斬り込む“installation”など、挑戦的なリリックはいいスパイス。
ヴォーカル/ギターの望世を知ったのは、実はペンギンラッシュではなくゲーム「スプラトゥーン」の楽曲を演奏するバンド、Wet Floor Shibuyaのライヴでのこと。ギターをかき鳴らしながら歌うWet Floor Shibuyaでの彼女の姿も印象的だったが、本体ではもっとスゴかった。彼らの音楽は、キーボードを軸にファンクやジャズの要素をプラスしたバンド・サウンド……ではあるんだけど、そう形容されるバンドなんてたくさんいるわけで。ペンギンラッシュが他と圧倒的に違うのは、とにかくひねくれていること。どれだけ褒められても満たされない、口をへの字にしたような表情がぴったりの女の子が夜の街を歩きながら聴くような、そんな音楽。でも好きでしょ、そういう女の子。もちろん演奏面でも、ジャジーやファンキーもイケるドラム&キーボード、“街子”でのベース・ソロ、突然の転調や意表を突く展開などを聴けば、バンドの音楽的素養が高いのは言わずもがな。このひねくれサウンドが次来るような気がするんだよなあ。