大好きな曲に対するリスペクト――それは大胆なアレンジよりも、忠実さプラス自分達らしさの絶妙なバランスを見つける事

丹下眞也(ドラムス)、阿部洋介(ギター)、安井義博(ベース)、橋本直樹(ヴォーカル)の4人からなる、名古屋が誇るヘヴィ・メタル・バンド、OUTRAGE。2017年には30周年ツアーを敢行、2018年にはその30周年ツアーファイナル〈極悪祭〉を映像化した「極悪祭2017」、アルバム『Raging Out』のツアーファイナルを収めたDVD「11281~怒~」をリリース。そして2019年、若かりしOUTRAGEも夢中になり、現在も多大な影響を受けているNew Wave Of British Heavy Metal(以下、NWOBHM)の 40周年を記念したリスペクト企画の狼煙を上げ、5月8日にアナログ7インチEP『Axe Crazy』をタワーレコード限定販売、完全生産限定作品としてリリースすることが決定! 今回の企画意図など、ドラマーの丹下眞也に話を訊いた。

OUTRAGE Axe Crazy ユニバーサルミュージック(2019)

「OUTRAGEは2015年にカバーアルバム『GENESIS Ⅰ』をリリースしました。今回『GENESIS Ⅱ』を制作してみようかという話が出た時に、それではOUTRAGEのルーツであるNWOBHMを対象としたカバーはどうか?とアイデアが持ち上がってきました。NWOBHM40周年と今回の企画はあくまでも偶然でしたが、OUTRAGEを応援してくださる方の中で、NWOBHMをあまり知らない方がいたら、これをきっかけにOUTRAGEのルーツまでさかのぼってもらえたら、OUTRAGEをより深く知るきっかけになると思います」(丹下眞也/以下同)

40年前というとOUTRAGEは結成前。当時まだ少年だったメンバーたちは、どのようにしてNWOBHMの洗礼を受けたのだろうか。

「それまではレッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどのハード・ロックも聴いていましたが、やはり初めてアイアン・メイデンを聴いた時の衝撃は忘れられません。スピード感や荒々しさに度肝を抜かれましたし、自分達もこのような音楽を演奏してみたいと思わされるサウンドでした。実際には自分がアイアン・メイデンなどと出会ったのは80年か81年だった記憶があります。サクソン、プレイング・マンティス、エンジェル・ウィッチ、タイガース・オブ・パンタンなど、どのバンドにもとても勢いがあり、全部好きになっていました。NOWBHMは当時中学生だった自分にとって、本当にとてもワクワクさせてくれるシーンでした」

音楽だけでなく、レザージャケットやガンベルトなど、シーンに属するバンドたちのファッションやアイテムにも強く惹かれたという。今回のリリースはCDではなくアナログ7インチのみのとなるが、ここにはNWOBHMから受けた影響と、強いこだわりがあるようだ。

「NWOBHMシーンではインディーズ・レーベルや完全自主制作で、7インチ・レコードを発売するのが特徴だったので、まさしく今回の企画にドンピシャなアイデアでした。OUTRAGEもデビュー時は作品としてアナログレコードも販売していましたが、あれから30年余りが経過し、またこうして自分の作品のアナログレコードを手にすることができ、とても嬉しいです」

今回の7インチに収録するカヴァー曲として選ばれたのは、ジャガーの“Axe Crazy”とエンジェル・ウィッチの“Baphomet”。どちらも原曲の形を壊すことなく、OUTRAGE流に攻撃的にカヴァーしており、原曲への愛が感じられる仕上がりとなっている。決して超有名というわけではないこの2曲をカヴァー対象として選んだ理由は何だったのだろうか。

「沢山の選択肢があった中で本当に悩みましたが、OUTRAGEがやってハマる曲はなんだろうかと考えた結果が今回の2曲です。エンジェル・ウィッチはOUTRAGEの曲作りにおいて、とても重要なバンドです。本当に沢山のインスピレーションを与えてくれます。またジャガーのこの曲のエネルギーはスラッシュ・メタルの1つのルーツかと思います。今回に限らずカヴァー曲をやる際は、オリジナルの雰囲気を壊す事なく、いかにその中に自分達の持ち味を振りかけていけるか。そこを大切にしています。カヴァー曲に遊び心を持って望むバンドもいると思いますが、OUTRAGEの場合は大好きな曲に対するリスペクトをまず考えます。その方法としては大胆なアレンジよりも、忠実さプラス自分達らしさの絶妙なバランスを見つける事が大切だと思っています」

2015年の『GENESIS Ⅰ』では日本のロックのオリジネーターである60~70年代のバンドをカヴァーし、今回のEPではNWOBHMへのリスペクトを表した彼ら。今後やってみたいカヴァーや、将来に向けて考えているアイデアなどについても訊いてみた。

「まだやり遂げてない事やこれからやりたいアイデアがありますので、実現に向けてどんどん動いていきたいです。いつか海外の60~70年代のバンドに焦点を絞ったカヴァー作品も作りたいと思っています。パンクバンドのカヴァーばかりの作品も自分達にとって楽しくやれるような気がします」

今回リリースされるEP『Axe Crazy』の完全生産限定〈SOUND HOUSE SET〉には、5月18日に開催されるライヴ・イヴェント〈N.W.O.B.H.M. 40th Anniversary Respect Live〉の参加券が封入されている。NWOBHM40周年を記念したこのイヴェントでは、通常とは異なる趣向のライヴを見せてくれそうだ。

「いつものライヴとは少し違った流れを楽しんでいただきたいと思います。現時点でまだライヴの内容まで詰め切ってはいませんが、NWOBHMを通っていないお客さんも沢山いる事も考慮して、OUTRAGEのオリジナル曲との配分を考えたいと思います。今回のライヴはまさしくレアなライヴになると思いますので、お見逃しなく!!」