嵐が約5年ぶりの新曲“Five”を2026年3月4日に配信リリースした。同楽曲は、配信初日だけで320万回以上再生され、オリコンのデイリーストリーミングランキング(3月4日集計分)で1位を獲得したほか、同社の配信開始初日の再生数としても史上最高記録を叩き出した。MVも公開からわずか10時間で200万回再生を記録するなど、数字の面でも日本を代表するアイドルグループとしてその存在感を知らしめた。
今年5月の活動終了に向けて様々な思いが寄せられるなか、嵐5人は新曲にどんなメッセージを込めたのか。本稿では様々な角度から“Five”をレビューしていきたい。
この5年で表現力が増した5人の歌声
新曲“Five”は、作詞をHIKARI、作曲をHIKARIとTomoki Ishizuka、編曲をTomoki Ishizukaが手がけた楽曲だ。HIKARIは“春風スニーカー”(Trevor Ingram名義)の作曲や“Sugar”の作詞などを手がけ、Tomoki Ishizukaも“One Love”“GUTS!”の編曲を担当するなど、両者共これまで数々の嵐の楽曲制作に携わってきた。
イントロは、シューっという車が颯爽と走り抜けるような効果音を経て、旅の始まりを彷彿とさせるメロディが続く。思いのほかシンプルな音使いだが、曲が進むに連れて楽器の音色が重なり、少しレトロな雰囲気が漂う。〈Wow Wow Wow〉という5人のコーラスは〈これからどんな世界が待っているんだろう?〉と聴き手の好奇心をくすぐり、早速嵐らしさを感じた。
Aメロの歌い出しは櫻井翔から。それに続くは松本潤(MVでは隣で大野智が〈今歌っているのは彼だよ〉と言わんばかりに松本を指で示している)。そこから二宮和也、相葉雅紀、そして大野へと歌い繋いでいく。Aメロ、Bメロをたっぷり使って5人それぞれの歌声をはっきりと聴かせる構成で、シンプルではあるが、だからこそ続くサビでのユニゾンで〈嵐感〉が強調されていく。
櫻井の人柄が伝わる真っ直ぐで前向きな歌声に始まり、低音に定評のある松本も、その厚みと深みのあるボーカルをしっかりと聴かせる。二宮はまるで映画のワンシーンのような、情景が浮かぶドラマチックな歌声を響かせ、相葉も笑顔が浮かぶ和やかな愛を歌声に乗せていく。そして大野の透明感のある安定した歌声と、ビブラートの揺れが曲に厚みをもたらす。
ブランクを一切感じさせない、むしろ表現力が増した奥行きのある5人の歌声に胸を打たれる。J-POPシーンを長らく牽引してきた嵐5人の唯一無二の歌声は今も健在だ。
歌詞に刻まれた嵐の軌跡
“Five”は、そのタイトルからもわかるように嵐5人を歌った楽曲で、歌詞も彼らの長きにわたる活動の軌跡が刻まれている。まるで5人が隣に座って語り掛けてくれているような、リスナーに寄り添いながらその思いを伝えている印象だ。
曲は、これまでの思い出を辿るように〈不思議と懐かしい風の匂い〉という言葉から始まる。また、〈どれほどの夢を描いてどこまで届いたろう〉といった内省的なフレーズは、アイドル人生のスタートからこれまでを回顧する、5人の今の気持ちを表しているようだ。〈残るのはザラついた埃の手触り〉からは、夢中で駆け抜けてきた時間の長さが伝わってくる。ここで埃を被っているものは、5人が駆け出しの頃に描いていた夢のことだろうか。
思い返せば、ジュニア時代の活動を経て、当時としても珍しかったハワイでデビュー会見を行い、ドラマやバラエティ番組を一つひとつ重ねてブレイクを果たし、国民的アイドルグループへと成長していった嵐。彼らは音楽だけでなく、様々な活動を通してあらゆる角度からファンを楽しませてきた。“Five”の歌詞は、そんなファンとの時間も思い起こさせる。
そして〈明日の行方なんて 誰にも分かりはしないから〉〈約束すら敢えて要らない 未来に怯えなくていい〉という部分には、〈約束なんかは必要ないから/今を生きるだけさ〉と歌った“ワイルド アット ハート”に通ずるものを感じた(“ワイルド アット ハート”にはHIKARIが、シングルのカップリング“ふたりのカタチ”にはTomoki Ishizukaがそれぞれ編曲で携わっていたのも興味深い)。