2023年、デビュー5周年を迎えた安月名莉子。「メイドインアビス 烈日の黄金郷」のオープニングテーマソング“かたち”(2022年)など、人気アニメのテーマソングを歌いながら、シンガーソングライターとしてもその表現力を発揮している才能だ。そんな安月名が、5周年記念のワンマンライブ〈安月名莉子 5th Anniversary Live「Azu is」〉を開催した。キャリアの総決算と次のステップを提示し、力強いパフォーマンスを見せたソールドアウト公演の模様を、ライターの坂井彩花が伝える。 *Mikiki編集部
安月名莉子の完成
――ようやく安月名莉子が完成できたと思います。
11月26日、渋谷チェルシーホテルにて開催された〈安月名莉子 5th Anniversary Live「Azu is」〉で、安月名は誇らしそうにそう語った。さらには、ライブタイトル〈Azu is〉にこめた「ありのままの私の音楽を聴いていただきたい」という想いをステージで体現して魅せたのである。
ここまでの道のりが順風満帆だったといえば、嘘になるだろう。突発性難聴を発症して、歌の人生が終わったと絶望した日もあった。いろいろなコンセプトの楽曲を歌うことに、一貫性がないのではないかと思い悩む日もあった。自分の気持ちも他人の気持ちもわからないと、葛藤し涙した日もあった。しかし、そんな日を越えた先で彼女は、安月名莉子という表現者のひとつの完成形を見出した。その事実を、パフォーマンスのすべてで証明してみせたのである。

〈アニソン界の女優〉そのものなパフォーマンス
ライブは「メイドインアビス 烈日の黄金郷」のオープニングでありながら、安月名のアーティスト人生を歌った曲である“かたち”からスタート。真っ直ぐに前を見つめる視線は力強く、ここからステージをやり抜くという決意を感じさせる。サビには深くブレスを取り、その息遣いだけで会場を魅了した。


「みんな会いたかったよ! 盛り上がっていきますか!」と焚きつけると、“keep weaving your spider way”へ。彼女の誘いに乗り、熱いコールと盛大なクラップを巻き起こすオーディエンス。序盤から、ライブ会場一体となったステージを作り上げていく。
ガンフィンガーで打ち抜く振り付けがキュートな“Chance! & Revenge!”、「きみの手をにぎろう」と手を差し伸べ大切に握りしめる“Glow at the Velocity of Light”と、続けざまにタイアップ曲を展開。楽曲に没入してヒロインや女神といった様々な役を演じるかのように昇華すると、冒険譚やラブコメ、SFサバイバルといった異なる世界観を、安月名莉子という媒体で繋ぎ合わせていった。その姿は、彼女が事あるごとに「なりたい」と切望してきた〈アニソン界の女優〉そのもの。歌だけに飽き足らず、モーションや視線といった細かなニュアンスで見せたいものを描きあげていく。

ギターを手に強い決意を歌声に乗せる
「ブギーポップは笑わない」のタイアップソング“Whiteout”“Sayonara”で豊かな歌声を披露する頃には、すでにライブは中盤パート。愛用しているCole Clarkのギターを手に、自身で作詞作曲をした“DAISY”を投下する。バンドサウンドと重なった柔らかな歌声は、エネルギーが増して音源とは違う印象を与えた。一方でフリーハンドからギターボーカルへスタイルが変わっても、表現力が衰えることはない。

「もっともっとみんな、青い炎を見せて」と煽り、ファーストアルバムのラストソングである“BLUE CYALUME”が導かれると、ブルーに煌めくサイリウムが会場を埋め尽くした。「私の人生 私が決めるの」という強い決意は歌声に乗り、フロアの隅々にまで広がっていく。
観客の熱気が最高潮になるのを見越していたのか、続いて誘われたのはコール&レスポンスで盛り上がる“ないものねだらせたもん勝ち”だ。ジャカジャカとギターをかき鳴らしながら、ボーイッシュな声色を響かせる安月名。「Wild & Free! Go my way!」の声がチェルシーホテルを満たすと、嬉しそうに口角をあげた。

5年の成熟を見せながらも愛されポンコツキャラ?
このまま全力疾走で駆け抜けていくのかと思われたが、「Re:ゼロから始める異世界生活」の後期エンディングテーマである“Stay Alive”のカバーでクールダウン。先ほどまでとは一変した、しっとりとした透き通る歌声を響かせていく。なかでもロングトーンは豊潤で、ただ声を伸ばしているだけではなく、たくさんの想いがギュッと濃縮されている。声が放たれるたびに、魔法の杖が一振りされて、想像していた情景がぶわっと広がっていくようだった。
“たたくおと”で「きっと未来はきれいだよ」と祈りをかけると、いよいよデビューソング“君にふれて”のお出ましだ。音が鳴り始めるとスイッチが入ったかのように曲の世界観に潜り込んでいく彼女だが、この曲を演奏しているときだけは、どこか等身大なオーラを放つ。5年間という年月をかけて、デビューソングやタイアップ曲という枠だけに収まらない、大切なファンを想う曲としても成熟してきたのだろう。「遠くに見えていた未来が こんなに近くに感じる」と紡ぐ声も変な飾り気がなく、彼女自身の言葉として伝わってきた。

早口言葉のようなフレーズが特徴的な“Shouting My Soul”をきっかけに、ついにライブはラストスパート。“はいてはすう”では歌い出しのタイミングがわからなくなり、もう1回仕切り直すハプニングもあったが、それすら愛されポンコツキャラたる安月名らしい。バンドメンバー紹介も、もう一度きちんとやり直し、タンバリンを揺らしながら笑顔をキラキラ輝かせる。

特大のシンガロングが巻き起こる“be perfect, plz!”、「僕らたしかに生きていく」と高らかに刻む“BEYOND”とパフォーマンスし、大団円のうちに本編の幕を下ろした。
もっと大きくなりたい
安月名がステージから去ると、すぐにアンコールが沸き起こり、ライブグッズに着替えた彼女が登場。ラストのMCでは瞳を潤ませながら、「この景色を見たら、もっともっと大きくなりたいと思いました」と、5周年を迎えて初めて言えるようになった言葉を口にする。5年という年月を経て、彼女自身も〈Azu is〉の答えを掴んできたのだろう。その言葉は凛々しく、確固たる自信に溢れていた。


“知らなきゃ”と“selfish”を自信満々にステージングし、最後には観客と一緒に締めのジャンプ。今あるすべてを出し切っていくような、全身全霊のライブを作り上げたのだった。
安月名莉子は次章へ
5周年を迎えて、ひとつの完成形に到達した安月名莉子。時には求められたイメージを全力で演じ切り、時にはありのままに自分の本音を吐き出す。アニソン界の女優でありながら、ギター1本でも勝負できるシンガーソングライターという個性は唯一無二だ。
しかしながら、この到達は安月名莉子という物語の終わりではない。次なる章の始まりにすぎないのだ。果たして次の彼女が、どのような世界を描いてくれるのか。新しい経験や出会いを得て、さらなる飛躍を見せてくれるネクストフェーズが今から楽しみでならない。
SETLIST
1. かたち
2. keep weaving your spider way
3. Chance! & Revenge!
4. Glow at the Velocity of Light
5. Whiteout
6. Sayonara
7. DAISY
8. BLUE CYALUME
9. ないものねだらせたもん勝ち
10. Stay Alive (cover)
11. たたくおと
12. 君にふれて
13. Shouting My Soul *
14. はいてはすう
15. be perfect, plz!
16. BEYOND *
EN1. 知らなきゃ
EN2. selfish
当日のセットリストをSpotify公式プレイリストにて公開中!(*は未配信楽曲)
RELEASE INFORMATION
リリース日:2023年11月8日(水)
品番:FRAZ-0001
価格:1,500円(税込)
配信リンク:https://linkco.re/BSXdDeda
TRACKLIST
1. DAISY
2. ないものねだらせたもん勝ち
ほかボーナストラックを含む全3曲収録
LIVE INFORMATION
ワンマンライブ「いちにのさん」
2023年12月3日(日)東京・青山 月見ル君想フ
開場/開演:14:30/15:00
チケット価格(全席自由):8,800円(税込/入場時別途ドリンク代必須)
一般発売:2023年11月25日(土)10:00~2023年12月2日(土)23:59 ※お1人様4枚まで申し込み可能
https://azuna-riko.com/ichininosan/
FC限定イベント「いちにのさん後夜祭」
2023年12月3日(日)東京・青山 月見ル君想フ
開場/開演:18:00/18:30
チケット価格(全席自由):4,500円(税込/入場時別途ドリンク代必須)
オフィシャルFC先行(先着):2023年11月18日(土)10:00~2023年12月2日(土)23:59 ※お1人様2枚まで申し込み可能
https://azuna-riko.com/ichininosan_koyasai/
PROFILE: 安月名莉子
幼少の頃よりミュージカルやテレビへの出演を通し、役者としての表現を学ぶ。大学進学と同時に自身の思いを形に残すためシンガーソングライターとしての活動を開始。2018年10月放送のテレビアニメ「やがて君になる」のオープニングテーマ“君にふれて”でメジャーデビュー。同時に「Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow」の挿入歌“Memories”の歌唱に抜擢される。以降も「ブギーポップは笑わない」「彼方のアストラ」「慎重勇者 ~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~」「蜘蛛ですが、なにか?」「幼なじみが絶対に負けないラブコメ」「ハコヅメ ~交番女子の逆襲~」「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」と人気アニメのテーマソングを歌う。さらにゲーム「夢現Re:Master」では〈ニエ〉役として声優としてもデビューを果たしている。その才能はアニソンシンガーに留まらず、シンガーソングライターとしてもギターテクニック、繊細な歌唱力が認められオーストラリアのギターメーカー・Cole Clarkとエンドース契約。2019年12月にはCole Clark 安月名莉子シグネチャーモデルが発売された。卓越したギター演奏と寄り添う声で、こころを歌い上げる。
