関西を拠点に活動するVesper the Aerialが1stアルバム『Devote Eternal』をリリースした。前身となるDeGraceもシーンでは相応に知られていた存在だが、新たなメンバーで2023年にVesper the Aerialとして新生した経緯がある。彼らの理想とするメロディックデスメタルとはいかなるものなのか。耳を傾けるほどに奥深さも見えてくる本作について、Kiske(ボーカル)とReN(ギター)に語ってもらった。

Vesper the Aerial 『Devote Eternal』 Repentless(2024)

 

プログレやハードロックからハードコアやロカビリーまで――Kiskeのルーツ

――基本的なことからお伺いしますが、お2人が音楽に興味を持つきっかけはどのようなものでした?

Kiske「父親がプログレやハードロックが好きで、書斎にあったキング・クリムゾンの1st(『クリムゾン・キングの宮殿(In The Court Of The Crimson King)』)を見て〈なんじゃこの怖いジャケは!?〉と思ったところからですね。

あとは車の中でよくクイーンや(レッド・)ツェッペリンも聴いてましたし、音楽に囲まれた環境で自分なりのディグり方を見つけていきました。最初はJ-POPから始まって、父親の職場にあったLOUDNESSやアイアン・メイデンのCDを聴いたり。あとは地元のCDショップでコーンのベストアルバムとか、とりあえず色々買ってみてました。

でも、高校のときはパンクとかハードコア、ロカビリーのライブハウスばかり行ってたんです」

――それはどういうきっかけで?

Kiske「入学して最初に隣の席になったやつと仲良くなって、そいつがドラムを叩いていたロカビリーバンドのライブに行くようになったんです。そこから日本脳炎とかTHE MACKSHOWとか、そういったアーティストのライブに行くようになって。THE BLUE HEARTSも好きでした。

そうやってライブハウスで遊び続けていた高校2年のとき、大阪のアメリカ村に服を買いに行ったんですけど、たまたまそのショップで働いてたのがErrorというバンドのメンバーで、〈俺、バンドやってんねん〉ってライブに誘われたんです。それがError主催のイベントで、CrossfaithやPALM、coldrainとかがローカルなライブハウスに出演していて衝撃を受けたんですね。そのときに、うるさい音楽のバンドをやりたいと思いました。

その後、大学に入学したぐらいの年にアーク・エネミーの来日公演があったので行ってみたんですけど、そこで〈ああ、デスメタルってかっこいいんや!〉と思って。それで、大学のサークルでState Craftに強く影響を受けたニュースクールハードコア~メロデスのオリジナル曲をやるバンドに入ってからボーカリストとしてのキャリアがスタートしました」

 

カントリーやブルースからハードロックへ――ReNのルーツ

――ReNさんは?

ReN「僕がずっと住んでいる京都って、カントリーやブルースが盛んなところなんですよ。親父がバンドマンで、晩年は京都にいらっしゃったドリフターズの山下啓二郎さんのバックをやったりしてたんです。だから、生後3か月でライブハウスにいました(笑)。

親父は1960~1970年代のブルースロックばかり聴いてるし、母は1980年代のハードロックが好きで……あとはサザン(オールスターズ)も好きでしたね。だから、小学生や中学生の頃なんて、僕にとって最新の音楽は1980年ぐらいで止まってたんです。自分にとって一番激しい曲がディープ・パープルの“Fireball”で(笑)。

ギターを始めたのは14歳の夏ですね」

――周りにミュージシャンが多い環境でありながら、意外と遅かったんですね。

ReN「親父がギターをくれたりもしたんですけど、あまりに身近だから、かえってやらなかったんですよ(笑)。聴くことに関しても、めっちゃ好きだったわけではなく、そこにあるから聴いてた感じです。でも、急に弾きたい、ジェフ・ベックみたいになりたいと思ったんですよ(笑)」

――何をきっかけにそう思ったんですか?

ReN「僕の師匠というか、親父と一緒にバンドをやってた人がジェフ・ベックが大好きでコピーをよくやってたんです。それを耳にしていて、自然とあのニュアンスやボイシングの感じに惹かれて。エディ・ヴァン・ヘイレンも好きやったな。

その師匠は、グランド・ファンク・レイルロードの“Inside Looking Out”を流して〈これはキーがGmやから、これで一生ギターソロ弾いとけ〉って言って、外にタバコを吸いに出ていくような人やったんですよ(笑)! 〈2時間弾けたら、ギターっていうのがわかるから〉って」

――確かにその練習法は効果的ですね(笑)。

ReN「ドゥービー・ブラザーズやオールマン・ブラザーズ・バンド、キッスとかも好きだったんですけど、もっと激しいのが聴きたいなと思って。子供の頃って剣に巻きついたドラゴンとかが好きやないですか(笑)? ザ・バンドにしても“Time To Kill”が一番好きやったんですよ。なぜかというと、〈Kill〉って入ってるから(笑)。ユーライア・ヒープもジャケットがいかついから好きで、ブラック・サバスの『Paranoid』にもハマりました。そういう中で自分はハードロックが好きなんやって思ったんです。それが中3やったかな」