(左から)Hal、Michal、Shibuki、Kohei

2021年7月にオリジナルアルバムとしては9年ぶりとなる『ArcheoNyx』をリリースしたANCIENT MYTH。海外のレーベルからのリリースやフェス出演、ツアーの実施で、ヨーロッパやアジアなど国外でも評価の高いシンフォニックメタルバンドだ。

『ArcheoNyx』ではMichal(ボーカル)がオペラ的なソプラノボイスを採り入れた他、Hal(キーボード)により壮大な楽曲アレンジが施され、さらにはShibuki(ドラムス)とKohei(ギター)という新メンバーの高い技術力も反映されるなど、文字どおりに〈新生〉したバンドの姿を強烈に印象づけたが、早くも次作のレコーディングに着手。そこで完成したのが、今回のミニアルバム『Ambrosian Blood』だ。

もちろん、シンフォニックなメロディックスピード/パワーメタル路線に変化はなく、バンドの好調な様子が音からも伝わってくる。また、付属DVDには、前作の“Chaos to Infinity”と“River of Oblivion”のミュージックビデオとメイキング映像、今夏のライブから4曲のステージの模様を収録。まさに現在進行形のANCIENT MYTHの姿がよくわかる内容に仕上がった。

『Ambrosian Blood』はいかにして生まれたのか。メンバー全員に話を訊いた。

ANCIENT MYTH 『Ambrosian Blood』 Repentless(2021)

 

アンブロシア=不老不死へ導く禁断の果実

――『ArcheoNyx』が出てから半年を待たずして、今回の『Ambrosian Blood』が完成しましたが、なぜこのような早いリリースタイミングになったんですか?

Hal「最初はMichalが作った、2曲目の“Forbidden Blaze”になる曲のデモがありまして、それを早く次の作品として出したいなと思ったんですね。だから、当初は〈シングルで〉という話もあったんですけど、MVやライブなどの映像素材もあったので、せっかくならそれらと合わせて、再録やカバーも含めた、もうちょっとボリュームのある作品にしようと。

そこでMichalから挙がったテーマがアンブロシア、つまり、不老不死へと導く禁断の果実で、まずはジャケットの写真を撮ったんですね。ただ、“Forbidden Blaze”の原曲は“Battle”という仮タイトルで、ゲームミュージックのバトル曲みたいなアップテンポのものだったので、ジャケットとこの曲調はちょっと合わないなぁと。ということで、もうちょっと妖しさ、ダークな感じに似つかわしい曲を新たに作ろうということになって、“Ambrosian Blood”が生まれたんですね」

『Ambrosian Blood』ジャケット

『Ambrosian Blood』収録曲“Ambrosian Blood”

――新たに書き下ろしたんですね。

Hal「そう。そもそもは“Battle(Forbidden Blaze)”を表題曲にするつもりで、ジャケット撮影の日も決まり、アーティスト写真の撮影も決まり、ドラム録りの日も決まり……。

その時点でまだカップリング曲もできていなかったんですが、よりジャケットに合うものを書いたほうがいいと決断したのはそのタイミングなんですよ。だから、実は撮影が終わってからドラム録りまでの3日間で書いたのが“Ambrosian Blood”なんです(笑)。Shibukiくんにはレコーディング当日の深夜1〜2時ぐらいに(新曲のデータを)送って……。こういうカッコいい画が来ちゃったからこそ、妥協したくなかったんですよ」

――まさにレコーディング直前に新曲を聴いて録るというのも、なかなか厳しい環境ですよね。

Shibuki「でも、『ArcheoNyx』のときは、ドラム録り当日の朝4時とか5時に2曲送られてきたんですよ。しかも、リードトラックとエンディング曲、要は主役級のやつですよね。それと比べたら(笑)、自分の中でいろいろ解釈する時間は前回よりありましたね。

実際、デモとして送られてきたフレーズから、自分っぽく変えたところもあって。たとえば、最初はサビがYOSHIKIさん(X JAPAN)ふうの2ビートだったんですよ。でも、曲のイメージに対して軽すぎると思って、2拍目、4拍目にスネアを入れる4ビートにしましょうと」

――ギターソロのバックのドラムのブラストビートもまたいいアクセントですよね。

Shibuki「デモの時点では同じ音階でコード内の音を上下する、スウィープみたいな感じのギターが打ち込まれていたんですけど、その裏でドラムがドンタンドドタンと叩いていると平坦でつまらないなぁと思って、足を16分(音符)で踏んで、手は同時で8分という、ドラゴンフォースのデイヴ・マッキントッシュがよくやってた、自分の一番好きなブラストを入れて(笑)」

Kohei「僕もデモ自体は同じようなタイミングで送ってもらったんですが、その後にドラムを録り終えてエディットしたものを流しながら、ギターのレコーディングに入った感じなので、Shibukiくんよりは時間はありましたね(笑)。

前作のときは、曲が出揃っている中でANCIENT MYTHに加入したので、レコーディングではデモのアレンジをなるべく忠実に表現したんですけど、今回は作曲者が再現して欲しいものを元に、好きにやらせてもらったところは多いと思うんですよ。たとえばギターソロなどに関しても、録りながら、その場でリアルタイムにHalさんと擦り合わせて進めていって。その意味では、より自分の色を出すことができましたね」

――確かにギターソロパートはより奔放なフレージングになっていますね。

Kohei「特にテーマやメロディー自体を崩すと、楽曲の世界観、構成自体が変わってしまうので、コードからそこまでかけ離れず、速弾きの中での起承転結を考えたりしました。たぎるようなパターンというか、ギターソロの中でもだんだん音数が増えてハイポジションに行ったりとか、自分らしい落とし所を考えてアレンジしましたね」

Michal「『ArcheoNyx』の曲は、私とHalの間で出来上がっていたものを落とし込んでいくパターンでしたけど、今回はShibukiとKoheiと一緒に考えながら、現在進行形で作れたからこそ、二人のよさは結構出せたのかなぁと。スケジュールはバタバタではありましたけど(笑)」

――そういった限られた時間の中でも対応できる二人の存在は、バンドにとっても心強いですよね。