関西を拠点に活動するVesper the Aerialが1stアルバム『Devote Eternal』をリリースした。前身となるDeGraceもシーンでは相応に知られていた存在だが、新たなメンバーで2023年にVesper the Aerialとして新生した経緯がある。彼らの理想とするメロディックデスメタルとはいかなるものなのか。耳を傾けるほどに奥深さも見えてくる本作について、Kiske(ボーカル)とReN(ギター)に語ってもらった。

Vesper the Aerial 『Devote Eternal』 Repentless(2024)

 

プログレやハードロックからハードコアやロカビリーまで――Kiskeのルーツ

――基本的なことからお伺いしますが、お2人が音楽に興味を持つきっかけはどのようなものでした?

Kiske「父親がプログレやハードロックが好きで、書斎にあったキング・クリムゾンの1st(『クリムゾン・キングの宮殿(In The Court Of The Crimson King)』)を見て〈なんじゃこの怖いジャケは!?〉と思ったところからですね。

あとは車の中でよくクイーンや(レッド・)ツェッペリンも聴いてましたし、音楽に囲まれた環境で自分なりのディグり方を見つけていきました。最初はJ-POPから始まって、父親の職場にあったLOUDNESSやアイアン・メイデンのCDを聴いたり。あとは地元のCDショップでコーンのベストアルバムとか、とりあえず色々買ってみてました。

でも、高校のときはパンクとかハードコア、ロカビリーのライブハウスばかり行ってたんです」

――それはどういうきっかけで?

Kiske「入学して最初に隣の席になったやつと仲良くなって、そいつがドラムを叩いていたロカビリーバンドのライブに行くようになったんです。そこから日本脳炎とかTHE MACKSHOWとか、そういったアーティストのライブに行くようになって。THE BLUE HEARTSも好きでした。

そうやってライブハウスで遊び続けていた高校2年のとき、大阪のアメリカ村に服を買いに行ったんですけど、たまたまそのショップで働いてたのがErrorというバンドのメンバーで、〈俺、バンドやってんねん〉ってライブに誘われたんです。それがError主催のイベントで、CrossfaithやPALM、coldrainとかがローカルなライブハウスに出演していて衝撃を受けたんですね。そのときに、うるさい音楽のバンドをやりたいと思いました。

その後、大学に入学したぐらいの年にアーク・エネミーの来日公演があったので行ってみたんですけど、そこで〈ああ、デスメタルってかっこいいんや!〉と思って。それで、大学のサークルでState Craftに強く影響を受けたニュースクールハードコア~メロデスのオリジナル曲をやるバンドに入ってからボーカリストとしてのキャリアがスタートしました」

 

カントリーやブルースからハードロックへ――ReNのルーツ

――ReNさんは?

ReN「僕がずっと住んでいる京都って、カントリーやブルースが盛んなところなんですよ。親父がバンドマンで、晩年は京都にいらっしゃったドリフターズの山下啓二郎さんのバックをやったりしてたんです。だから、生後3か月でライブハウスにいました(笑)。

親父は1960~1970年代のブルースロックばかり聴いてるし、母は1980年代のハードロックが好きで……あとはサザン(オールスターズ)も好きでしたね。だから、小学生や中学生の頃なんて、僕にとって最新の音楽は1980年ぐらいで止まってたんです。自分にとって一番激しい曲がディープ・パープルの“Fireball”で(笑)。

ギターを始めたのは14歳の夏ですね」

――周りにミュージシャンが多い環境でありながら、意外と遅かったんですね。

ReN「親父がギターをくれたりもしたんですけど、あまりに身近だから、かえってやらなかったんですよ(笑)。聴くことに関しても、めっちゃ好きだったわけではなく、そこにあるから聴いてた感じです。でも、急に弾きたい、ジェフ・ベックみたいになりたいと思ったんですよ(笑)」

――何をきっかけにそう思ったんですか?

ReN「僕の師匠というか、親父と一緒にバンドをやってた人がジェフ・ベックが大好きでコピーをよくやってたんです。それを耳にしていて、自然とあのニュアンスやボイシングの感じに惹かれて。エディ・ヴァン・ヘイレンも好きやったな。

その師匠は、グランド・ファンク・レイルロードの“Inside Looking Out”を流して〈これはキーがGmやから、これで一生ギターソロ弾いとけ〉って言って、外にタバコを吸いに出ていくような人やったんですよ(笑)! 〈2時間弾けたら、ギターっていうのがわかるから〉って」

――確かにその練習法は効果的ですね(笑)。

ReN「ドゥービー・ブラザーズやオールマン・ブラザーズ・バンド、キッスとかも好きだったんですけど、もっと激しいのが聴きたいなと思って。子供の頃って剣に巻きついたドラゴンとかが好きやないですか(笑)? ザ・バンドにしても“Time To Kill”が一番好きやったんですよ。なぜかというと、〈Kill〉って入ってるから(笑)。ユーライア・ヒープもジャケットがいかついから好きで、ブラック・サバスの『Paranoid』にもハマりました。そういう中で自分はハードロックが好きなんやって思ったんです。それが中3やったかな」

 

俺がなりたいのはこれだ――ReNのデスメタルとの衝撃的な出会い

――そのうちにバンド活動もするようになったんですよね?

ReN「そうですね。それこそギターを始めた直後に、OZZFESTの10周年公演がWOWOWで放映されたことがあったんです。バンドに興味があったし、トリがブラック・サバスでしたし、好きやろうなと思って観たんですよ。

最初がアンスラックスで〈すげえ! めっちゃかっこいい!〉って楽しんでたんですけど、2番目のトリヴィアムで、デスボイスってものを知ったんです。〈この声、何?〉〈この音楽、何?〉みたいな感じで(笑)。で、中間部で煽りのパートがあるんですけど、見渡す限りの観客が応えてて、ボーカルのマシュー(・キイチ・ヒーフィ)がすっごい嬉しそうに笑ったんです。しかも、ギターを弾いてる姿もかっこよかった。それを観て、俺がなりたいのはこれだと思ったんです。それがバンドを始めたいと思ったきっかけでした」

――マシューに衝撃を受けたんですね。

Kiske「俺は、ボーカリストに憧れるようになったのはクイーンのフレディ(・マーキュリー)やわ。ライブ・エイドの“Radio Ga Ga”の映像を観て、うわ~!ってなって。

ReNはギター&ボーカルとギターやったら、どっちがやりたかったん?」

ReN「そのときは特になくて、バンドをやってみたいという思いだけだった。

それでデスメタルというジャンルを知ったんですけど、情報が少なかったんです。どんなものが好きかもわからへんけど、小遣いも少なかったので一枚だけ厳選して買おうと。それで、CD屋の店頭にリリースされたばかりのイン・フレイムスの『Come Clarity』が置いてあったんです。試聴したら、ボーカルが入ってきたときに〈あっ、無理!〉ってなって(笑)。

もう一枚かっこいいジャケットを見つけたんですけど、それがブラック・ダリア・マーダーの『Miasma』だったんです。それで買って家に帰ってCDプレーヤーに突っ込んでみたら、『Come Clarity』よりすごいやつがドーンと出てきた(笑)」

――多くの人が経験する話ですね(笑)。

ReN「当時はホントに無理やと思ったんですよ。でも、せっかく買ったし、メタルを知りたいし、これを聴くしかないと思って、ずっと聴いてたんです。そしたら完全に慣れて(笑)。毎日聴いてるうちに驚きと苦手意識が消えて、曲に耳がいくようになったんです。ただ、わかりやすい歌モノの音楽しか聴いてこなかった人間からすると、なかなか入り込めない。

そんなときにチルドレン・オブ・ボドムにハマったんですよ。僕がゲーム好きやったのを知っていた友人が、『Hate Crew Deathroll』を貸してくれたんです。ゲームミュージックみたいなメタルがあんねやと。そこで……これは数万人が同じことを言ってきたと思うんですけど、とにかく衝撃を受けまして(笑)」

――音楽のキャッチーさとアレキシ・ライホのスター性ですよね。

ReN「金髪のイケメンが尖ったギターを持って、ギター&ボーカルをしてて。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインの『The Poison』もその頃に出てました。どちらのフロントマンもランディVを持ってて、めっちゃかっこよくて。

好きなのがその2人だったので、僕も必然的に考え方がフロントマン寄りになっていったんです。で、DVDを観ながら歌や目線のやり方、パフォーマンスも真似して。

ただ、バンドを始めるにあたって、ボーカルって探してもいないことが多いじゃないですか。しかも〈デスボイスやります〉なんて高校生はいなかった。だから、バンドを始めるにしても自分が歌うしかなかったんです」

Kiske「ReNのインタビューだけ切り出したら、VesperはReNがギター&ボーカルのバンドやって思われそう(笑)」

 

Kiske(ボーカル)

No Limited SpiralやDeGraceで駆け抜けたVesper the Aerial前史

――2人はどういう出会いを?

Kiske「当時やっていた大学のオリジナルバンドで、No Limited Spiralと対バンしたんですね。みんなド派手な長髪でかっこいいなと思ったんですけど、その後、NLSからボーカルが抜けたタイミングで僕が誘われたんです。それで行ってみたらReNもいたんですよ」

ReN「ボーカルとギターの方が抜けて、僕も声をかけられたんです。メロディックデスメタルをやりたいと思っていたとき、No Limited Spiralのオーディションに参加することになって。それで2人とも加入することになったんです」

Kiske「さっき話したErrorのドラムはNLSのKegoiさんやったんです。だから、NLSと対バンしたとき、憧れの気持ちがあったんですよ。Kegoiさんがとんでもなく重い音で叩いてて」

――自分が加入することになるとは思ってもみなかったでしょうね。

ReN「そこでKiskeと出会ってから、しばらく一緒にやって……」

Kiske「1年半ぐらい? めっちゃ駆け抜けたな」

――KiskeさんのNo Limited Spiralでの活動は短期間で終わったんですね。

ReN「電話がかかってきて、いきなり〈俺、辞める〉って言い出したんです。しかも〈ReN、歌えるやろ?〉って(笑)。で、その2週間後ぐらいに僕はギター&ボーカルとしてNLSでデビューするっていう(笑)。

その後もなんだかんだやりとりしつつ、また一緒にバンドをやったり……腐れ縁みたいな感じで続いてきました(笑)」

Kiske「NLSの脱退後、一時期ニューメタル~デスコアのバンドを覆面でやってたんですけど、そこでもReNと一緒にやってたんです。

で、なんだかんだあって久々にDeGraceというVesperの前身バンドを復活させようとなったときに、ライブサポートにReNを誘って……」

――DeGraceはNo Limited Spiralを辞めた後に活動していたバンドですね。

Kiske「はい。僕が2代目ボーカリストなんですけど、NLSを辞めて暇してたときに誘われて。ただ、マネジメントとかデザインとか、外に向けた発信があまり視野に入ってなかったっぽくて、僕が全部やることになったんです(笑)。

そこで自分が主体的に動かすんやったら面白いことをやったろと思って、イベントを企画したり。今、メタルやハードコアシーンの中核だったり、重鎮だったりする人たちにも早いうちから出てもらってました。イタリアのデストレイジの来日公演を大阪で主催したこともありましたね。

そのうちに拠点を東京に移すことになったんですよ。それでしばらく活動したあと、色々うまくいかなくなり、活動を続けることに納得がいかなくて僕は脱退することにしたんです。バンドは残ったメンバーで改名して続けたみたいなんですけど、それも中途半端に終わったようで。

心血注いだバンドがそういう状態で終わったことに悔いが残ってたんですよ。だから、もう一回、大阪で活動していた頃のメンバーと一緒にやりたいなと思って、あらためてDeGraceを始めることにしたんです。ただ、活動するなら昔の曲しかやらないんじゃなくて、ちゃんと新曲を作りたかった。そこでReNに加わってもらって、活動をコンスタントにしようと。そもそもReNがメロディックデスメタルをやらないのが、マジで損失やと思ってたんです」

ReN「(笑)。No Limited Spiralが活動休止したとき、僕は音楽が嫌いになりそうなレベルでバンド活動が嫌になってたんです。そんな中で純粋に音楽を突き詰めようって始まったのがKeg’s Towerというプログレのインストバンドやったんですね。それを始めてから、またバンドへの誘いを結構いただいたんですけど、断ってたんです。

ところが、ある日、Kiskeから電話がかかってきまして。〈DeGraceを復活させようと思ってんねんけどギターがおらん。しかも、コーラスも必要やねん。一人おるやろ〉って。〈俺か!〉と(笑)。元々サポートをやっていたし、サポートやったらいいよと引き受けたんです。

その後、コンスタントにやるんやなと思ってたら、〈曲が必要やねん〉って言い出して。〈誰か作らへんの?〉って聞いたら、〈作れるメンバーがいなくて。ReN、作ってくれへん?〉ってぼそっと言いよって。そんな感じで絡め取られていったんです(笑)」

――それが現在につながってくるわけですね。

ReN「そこで最初に書いた曲が、今回のアルバムに入ってる“Unexist Nostalgia”で。メロデスだけどスラッシュな要素もあってメタルコアの要素もあるみたいな、僕の中のDeGraceのイメージで書いたんです。そしたら〈めっちゃ良いやん!〉と褒めそやしてくれて、僕も気分が良くなってくるわけですよ(笑)。

だから、アルバムに向けて曲を書いていくことになったんですけど、僕が書くことによって(DeGraceとは)世界が違ってくるからということでバンド名を変え、加入することになったんです」

Kiske「コンスタントにやる以上は曲は作らないといけない。メロディックかつエクストリームな音楽で一番良い曲を書く人間は誰か。そう考えると彼しかいなかったんです」

 

ReN(ギター)

幻想を抱く対象としての金星=Vesper

――Vesper the Aerialというバンド名にはどんな由来があるんですか?

Kiske「ReNの作る曲も踏まえて、世界中の色んな神話……ギリシャ神話とかメソポタミア神話、それらの神と結び付けられる宇宙に浮かぶ星座、その下で揺蕩う夜の海と、それを照らし道標となるかがり火とか灯台とか、色んなイメージが浮かんできたんですね。

その中で、モチーフとして金星を選びました。宵の明星や明けの明星と呼ばれるように、金星は神話においても夜の中で一番光り輝いてて目印になる美しいものと捉えられていて。そこでまず〈Vesper〉という言葉が出てきたんですけど、それだけでは伝え切れなくて、幻想的といった意味の〈Aerial〉をつけたんです。幻想を抱く先としての金星をモチーフにしたいなと。

さらに、その星を僕は人に見立ててるんです。昔から好きなTYPE-MOONのゲームは、よく人を星に例えるんですよね。それがしっくりきてて……。あと、本はめっちゃ読んできたので、そういった影響は大きいとは思います。海外/国内の小説やゲーム/アニメ文化の文字的な表現、中学のときによく聴いていたSound Horizonや筋肉少女帯などの文学的な物語などには、ずっと惹かれていたんです」

――歌詞を見ても、天文学から歴史から、色んなバックグラウンドが浮かんできますね。

Kiske「映画をモチーフにした曲も多かったりします。DeGrace時代からある“Lost Millennium”は『アラビアンナイト』に着想を得たものです。語り手であるシェヘラザードには実は思いが通じ合ってた清い関係の恋人がいたという架空の前日譚を書きました。

大義のために王に嫁がないといけない。ただ、王から信頼を得るには恋人と一晩でも結ばれることはできない。だから、王に嫁ぐ前、最後に手を重ねながら星空を見上げて一緒に過ごす一夜が千年にも匹敵するほどに感じられる。その思い出を胸にこの先を生きていく。そういう架空の物語なんです」

――だから、女性ボーカルが入る構成になっているんですね。

Kiske「そうです。(エボニー・ティアーズのカバーである)“Harvester of Pain”と”Lost Millennium”以外はすべてReNが書いた曲で、彼が映画やドラマをモチーフにしたものもあるし、僕なりに曲を解釈して映画や他作品に結びつけたものもあるし、あとは“Lycoris Immaculate”はお互いの共通の友人が題材になっていたりしますね」

 

SEやカバーを物語的に配置したアルバムのコンセプチュアルな構成

――ReNさんが最初に書いたのは“Unexist Nostalgia”でしたね。

Kiske「自分の選択が間違っていなかったのを確信した曲です。でも、DeGraceならではの曲を作ってくれたこともわかったし、もっと曲を重ねていくことで本来の持ち味が100%になるだろうなと。そこは“Blissful Another”以降の曲で吹っ切れた感があります」

ReN「Vesperの作曲家としてチューニングが合ったと言ったらいいんですかね。Vesperの語り手の後ろで弾くものを作る、文章を書く、雰囲気を作る、それが僕の役目やと思って書き始めたのが、2〜4曲目の“Blissful Another”“Lycoris Immaculate”“Paralyzed”かな。アルバムもそこから組み立てました」

――4曲目までで、このアルバムがどんな作品なのかわかりますね。

ReN「それ以降で言えば、“Halo”だったらオルタナティブじゃないですけど、ルーツとして影響を受けたものをストレートに出しています。普通にパッと思い付いたものじゃなく、実験的なことをしてみたのが“Avenger”だったり。色んな要素を足したり変化をつけたりしたのが後半ですね」

――アルバムを構成する上で曲のバリエーションは当然求められますよね。

Kiske「そうですね。曲順とかSEの置き方とかも含めて、すべて意識してます」

――インストゥルメンタルを1、5、10曲目に配置するアイデアも当初からあったんですか?

Kiske「ありました。それに基づいてReNに作ってもらって。SEだけタイトルを日本語にしてるのは、物語の補助線みたいにする意図からなんです。

まず絶望的な底の部分の感情から始まって、最後にアルバムタイトルの『Devote Eternal』という感情や感覚、意志に結びつくまでをストーリーにしていて、ほぼ狙った通りに全体が繋がってます」

――その中にエボニー・ティアーズのカバー“Harvester of Pain”をあえて入れたのは?

Kiske「まあ、〈めっちゃ好きやから〉が最初に来るんですけど(笑)。

アルバムの流れが見えてきたとき、シンプルなスピードナンバーがここに欲しいと思ったんです。で、オリジナルよりはリスペクトを示すカバーが相応しいんじゃないかと。

カバーってボーナストラック的にアルバムの最後に入れることが多いと思うんですけど、自分が参考にしたのはヘヴン・シャル・バーンのアルバムでの入れ方なんですね。例えばエッジ・オブ・サニティの“Black Tears”やブラインド・ガーディアンの“Valhalla”を彼らなりに咀嚼をした上で、流れの中のうまいところに置いていて。

今回の“Harvester of Pain”はメロデスを深掘りしてる人なら誰もが知ってると思うんですが、そうでない新しいリスナーにも今はもう活動していない素晴らしいバンドの楽曲に触れてもらえるきっかけの一つになってほしいという思いもありました」

 

‘Criminal’ Inoue(ギター)

終わる世界で愛する人の未来のため抗う者の物語“The Halo of Fallen Sky”

――6曲目の“The Halo of Fallen Sky”の歌詞の背景には何があったのでしょう? 〈Halo〉という言葉がすごく象徴的です。

Kiske「2つありますね。〈Halo〉という言葉からは、光の輪や『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』というゲームに象徴される生命の輝きを連想します。特に配信シングルのジャケットの日輪がイメージに近いですね。この曲は、終焉を迎える世界の中で愛する人の未来を遺すために抗う人間の物語なんです。

シングル“The Halo of Fallen Sky”のジャケット

あとReNと〈ザ・ヘイロー・エフェクト、どうよ?〉って話もしてたんですよ(笑)」

ReN「彼らがデビューしてすぐぐらいですね。イン・フレイムスとかダーク・トランキュリティーとかが大好きだから、あのメンバーが再び集まるということで『Whoracle』みたいなのが聴きたいって話になるじゃないですか。でも、最初のシングルはそういうイエテボリ系統じゃなかった。

そこでKiskeに電話して、期待してたのはこれじゃないよな、俺が書くわって、そのまま書き始めたのがあのリフやったんです(笑)」

Kiske「他の曲にも言えますが、歌詞的にはアルバムタイトルにもある〈Devote〉という言葉がキーワードです。自分を犠牲にしてでも守りたいものは受け手によって違うと思うんですが、それを重要なテーマにしていて。

特にこの曲はサビでギターのメロディを輝かせつつ、どう日本語の美味しさを失わずに書けるかに挑みました。シャウトで日本語を歌うことに関しても、すごくこだわりがあるんです。影響を受けたのがPALMのToshiさん、SWARRRMのTSUKASAさん、TERROR SQUADの宇田川(浩一)さん。この曲は特にその要素が出てると思います。普通、デスメタルで〈私はあなただけのもの〉なんて出てきませんから(笑)」

 

宗教、映画、文学などの要素が張り巡らされたKiskeの詞世界

――歌詞からキリスト教的観念も見えてくるんですが、ご自身はクリスチャンなんですか?

Kiske「中学と高校がミッション系だったんです。そこで聖書も読破したんですけど、キリスト教に対して思ってることは基本的にBurden of Despairという別のバンドで歌詞に落とし込んでいます。

僕は宗教という概念には否定的で、信仰はあっていいんですけど、各自が持つべきであって、誰かと共有すべきじゃないと思っていて。なので、色んな宗教の思想と歴史については勉強しつつも、それら全部を混ぜて独自解釈をしています。仏教もモチーフにしていて、例えば“Blissful Another”の歌詞にある〈犀の角のようにただ独りゆく〉という一節は仏陀の言葉から取ってます」

――歌詞も細かく紐解いていくと、かなり掘り甲斐がありますね。

Kiske「自分と同じ人生を歩まないと理解できないぐらい四重、五重に意味を持たせてます(笑)。

曲同士で共鳴させていることもあって、“Lost Millennium”の〈Witness me〉という言葉は映画『マッドマックス フューリー・ロード(怒りのデス・ロード)』から取ってるんです。最初は〈俺の生き様をお前らが見届けろ!〉みたいな戦士として鼓舞するような意味なんですけど。映画の後半になるとニュークスというキャラが出てきて、自分の命を恋に落ちた女性に捧げるときだけ、ぼそっと呟くように〈Witness me...〉と言うんですね。それは〈戦士としての死に様を見てくれ〉ではなく〈あなたのために生きた自分が存在したことを証明してほしい〉という意味だと思ってて。

それと対となるように“Lycoris Immaculate”では〈Witness you〉という言葉を用いているんですね。この曲はReNと共通の亡くなった友人に対して書いてますが、代名詞〈X〉みたいな感じで聴いた人も大切な人を当てはめてほしいです。〈We scream out loud to witness you〉という部分などは、ライブハウスでオーディエンスと一緒に、天にいる人に聞こえるように声を上げて〈お前がここにいたことを証明する〉という感じ書いてます。〈witness〉という言葉一つをとっても英語にはニュアンスの幅があって、そこが面白いです。

この歌詞を書いた後で『マッドマックス:フュリオサ』という『フューリー・ロード』の前日譚を観たんですけど、そこで描かれる関係性も、すごく“Lost Millennium”に当てはまってたんですね。なので2作の映画を観てもらうと、さらに理解が深まると思います」

 

Yu-ki(ベース)

ライブで大事なのは一回限りの生感や熱量

――ステージでの再現も気になりますが、Vesper the Aerialを知らない人にこのバンドがどんなライブをするのか、自分たちの言葉で説明するとしたら?

Kiske「難しいけど……どこかちょっと明るいかな。クールな感じではない。関西ならではだと思うんやけど、演奏力の高さをバチバチに押し出すというより、とにかく熱さ、熱量は大事にしたいと思ってます。

音源の再現をする気はないんですよ。その時々で面白いなと思ったら、例えばボーカルラインも変える。その場その場で、お客さんも含めて全てを見て感じながら表現を変えていくのが好きなので。キング・クリムゾンも毎回ライブの演奏が違うじゃないですか。そういうセッション的な面白さが好きです」

ReN「自分が曲を作るとき、ステージにいる前提で書いてるんです。だからステージでいつも完璧に弾けるとは言わないですけど(笑)、やっぱりライブでは僕らがそのときに込めた意志というか、一回限りの生感は重視してます。

もちろん、それによってリフを変えることはないですし、ただ熱量だけを求めているわけではないけど、根本はKiskeと一緒ですね」

Shingo(ドラムス)

 


RELEASE INFORMATION

Vesper the Aerial 『Devote Eternal』 Repentless(2024)

リリース日:2024年8月7日(水)
品番:RETS-0037
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. -幾度、絶望に阻まれようと星空へ手を伸ばし-
2. Blissful Another
3. Lycoris Immaculate
4. Paralyzed
5. -果て無き旅路の最果て、崩折れる足を先へ-
6. The Halo of Fallen Sky
7. The Avenger Awaits
8. Harvester of Pain
9. Unexist Nostalgia
10. -胸焦がすこの■を、今、貴方に捧ぐ-
11. Lost Millennium

■Vesper the Aerial are
Kiske - Vocal
ReN - Guitar
‘Criminal’ Inoue - Guitar
Yu-ki - Bass
Shingo - Drums

 

Vesper the Aerial オフィシャルサイト:https://vespertheaerial.wixsite.com/official
Repentless オフィシャルサイト:http://www.repentlessrecords.com/