ピアニストの中山ナミ子がディレクターを務めるスチュディオ・エクレール。中山自身が演奏家だからこそ可能な楽曲や演奏、楽器に対する深い理解のもとでアルバムを制作し、音質の高さにもしっかりとこだわり、高品質なクラシック作品を世界に届けている注目のレーベルだ。

そんなスチュディオ・エクレールの新作は、気鋭オルガン奏者・清水奏花のデビューアルバム『フルール・ドルグ』。パイプオルガンという楽器のポテンシャルを最大限引き出し、多彩な音で幅広い曲を演奏した本作は、まさにオルガンの魅力が花開いた渾身の一作である。その制作背景から清水の音楽家としてのキャリアについて、ジャーナリスト/文筆家の岩崎貴行がインタビューした。 *Mikiki編集部

清水奏花 『フルール・ドルグ』 スチュディオ・エクレール(2026)

 

下谷教会のオルガンの表現力を最大限伝えたい

――アルバムのタイトルに『フルール・ドルグ』(オルガンの花々)とあるように、バッハ、北ドイツオルガン楽派のブルーンス、フランスのヴィエルヌ、ドイツ・リューネブルクのベーム、メンデルスゾーンと多彩な楽曲が並びました。どうやって選曲したのでしょうか?

「アルバムを録音した日本基督教団下谷教会のパイプオルガンは、北ドイツ・バロック期の伝統に基づいて製作され、表情豊かに歌う魅力を持つ楽器です。このオルガンの持つ表現力を最大限に伝えたいという思いから、すべて自分の演奏したい曲で今回のプログラムを構成しました。

プログラムには、北ドイツ・バロック期のブルーンス、ベームやバッハに加え、フランス・ロマン派のヴイエルヌ、ドイツ・ロマン派のメンデルスゾーンによるオルガン曲やピアノ曲のオルガン編曲も収録しています。下谷教会のオルガンを使い、多彩な楽曲を演奏したいという思いは強かったです」

――ドイツとフランスに留学していたのですね。

「アルバムの曲は基本的に自分が弾きたいレパートリーを集めたものですが、北ドイツ・バロック期の曲を入れたのは、私が北ドイツのリューベックで3年半勉強したためです。フランスのトゥールーズでも2年学び、ドイツとフランスに計5年間留学しました。ですので、フランス・ロマン派であるヴィエルヌの作品も入れています」

――アルバム作成にあたり工夫したのはどんな点ですか?

「今回のアルバムでは、プロテスタントの賛美歌をもとにしたコラール作品を多く入れています。コラールはドイツ・バロックの作品が多いのですが、教会とコンサートホールでは意味合いが違ってきます。両方の場所で弾くとどうなるかというのは意識しましたし、アルバムを聴く皆さんが飽きないよう、いろいろな曲を入れ、曲順を工夫し、曲ごとに緩急をつけました。

1曲目のニコラウス・ブルーンス“前奏曲 ト長調”には、下谷教会のオルガンについているベルのキラキラッとした音を使いました。ベル付きオルガンは、日本の教会のオルガンでは珍しく、結果的に明るい、盛り上がる曲になったと思います。下谷教会のオルガンは北ドイツのバロック的なコンセプトで作られましたが、ガルニエというフランスの会社が手がけたこともあって、柔らかい音もあるんです。北ドイツとフランス、双方のいい要素を持ち合わせています」