新時代の〈武満ソング・ブック〉

 オーディションで指揮者の原田慶太楼を驚かせ、2024年日生劇場に“連隊の娘”で鮮烈なオペラ・デビューを果たしたソプラノの新星。難役マリーを堂々と歌いこなして絶賛を浴びた。

 「子どもの頃“夜の女王のアリア”をテレビで聴いて、私この高い音でるかも?と真似したのが出発点です(笑)。声楽を学び始めたのは大学3回生からで、以来コロラトゥーラまっしぐら。でもただ歌えるってだけじゃダメだと思い知らされたのが“連隊の娘”の舞台。ベテランの皆さんに囲まれ、全てが凄く勉強になりました」

熊木夕茉, 山田和樹 『武満徹のうた SONGS of TORU TAKEMITSU』 コロムビア(2026)

 1stアルバムは没後30年迎えた武満徹へのオマージュ。世界的なマエストロ・山田和樹も彼女の声に惚れ込んで自ら演奏を申し出て、これまでありそうでなかった全編ソプラノによる〈武満ソング・ブック〉が完成した。

 「いろんなジャンルの方の歌唱からインスピレーションを得て、お風呂場とか様々な場所でたくさん練習してから本番に臨みました。マイクを近くに置き、マエストロの弾くピアノと同じ空間での通し録音は緊張もしましたが、とても親密な空気に包まれて気持ちよく歌うことができた」

 ジャズやシャンソンの和声やリズムを纏い、テキストと深く結びついた〈うた〉が、魅力的な地声とベルカントな高音を自在に行き来する歌唱によって紡がれていく。

 「テンポ速めで軽快に歌うつもりだった“翼”について、マエストロの〈どこかに諦めの気持ちもある〉っていう解釈を聞いてはっとして、谷川俊太郎さんがシンプルな言葉で書いた“死んだ男の残したものは”や“見えないこども”の、自分の経験を超えた奥深い世界にドキドキし、映画『他人の顔』の主題歌である“ワルツ”ではプロデューサーの〈椎名林檎さんみたいな感じで〉という助言に救われたり……短いながらも充実したレコーディングの日々でした。“明日ハ晴レカナ、曇リカナ”の歌詞(※武満自身の作詞)がいちばん等身大で、好きです」

 現在ミラノで研鑽を積む彼女は、年末にはBunkamuraの「こうもり」に出演。年明けには初のリサイタルも控えており楽しみだ。

 「マリーと同じくアデーレも私向きのキャラで自分を素直に出せそう(笑)。いつか演じてみたいのは『ランメルモールのルチア』の表題役です。この前イタリアで声帯を診てもらったら〈長くて分厚いから年齢と共にリリックになるはず〉と言われたのが楽しみ。応援してくださる皆さまの期待に感謝しつつ全力で頑張ります!」

 


LIVE INFORMATION
熊木夕茉 ソプラノ・リサイタル

2027年1月17日(日)東京・富ヶ谷 Hakuju Hall
開場/開演:13:30/14:00
出演:熊木夕茉(ソプラノ)、三澤志保(ピアノ)
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2254/