照りつける太陽に青い空、しかし、その下には灰色のスモッグ――そんな光と影のコントラストが不思議な魅力を放つLAの光景は、名門インディー・レーベル、ダーティ・ヒットと契約した同地の4人組、アンタイトルド(ヘイロー)の音楽性そのものだ。実際、ジェイ・アー(ドラム・プログラミング/ヴォーカル)は、飛行機の窓からその光景を見たとき、「僕たちの音楽をパーフェクトな形で表していないか?」と思わず口にしたという。
LAを愛する彼らだが、同地の音楽シーンの在り様には納得していないと語る。ジャック・ディオン(ギター/ヴォーカル)いわく、LAは「シーンが存在しない。空っぽな感じ」。ジェイはシーンのサイクルが速すぎると指摘したうえで、だからこそ「LA発のプロジェクトとして定義されるような、息が長いものを作ろう」と考えたという。そうして、ジェイとアリアナ・マムヌーン(ヴォーカル/ギター/ベース)のセッションから始まり、そこへ次第にジャックと、ニコラス・ノーネマン(ギター/シンセサイザー)が加わった。
アンタイトルド(ヘイロー)の音楽的な関心は幅広い。ジェイは「ラップトップや楽器の可能性を極限まで押し進め、新しいテクスチャーを発見した」クラウド・ラップの先駆者、クラムス・カジノを影響源に挙げ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやトゥイー・ポップも好きだと明かす。一方のジャックは、バースデイ・パーティのメンバーでもあったローランド・S・ハワードの『Teenage Snuff Film』を「こよなく愛するアルバム」に挙げる。
また、アリアナとニコラスは今回の取材に同席しなかったが、ニコラスはディアハンターなどを好んでいるという。そして4人の共通項として挙げられたのが〈90年代〉への愛情。だがそれは特定の音楽家への関心ではなく、「いろんなカルチャーがジャムっている」(ジェイ)時代に溢れていた、異質なもの同士が交わる感覚に惹かれているそうだ。
このたび完成したセルフ・タイトルのデビュー作『untitled (halo)』は、そんな4人の異なる感性を散りばめた音のコラージュだ。ポーティスヘッドを思わせる気怠いブレイクビーツ、コクトー・ツインズのような夢見心地の歌声、低音ヴォイスの物憂げなラップ、そしてそこにインターネット・ラップ由来の刺激的なテクスチャーが加わる。“aimee lou wood freestyle”は、激しくも陶酔的なギターやドリーム・ポップに重なるヴォーカルと、「ジャーク(ヒップホップのサブジャンル)っぽいベースライン」(ジェイ)の結合。“how to make your love (stay)”では、トリップホップ風のドラムと甘い歌に、「ものすごくヘンなヴォーカル・チョップやアコギのブレイク」(ジェイ)が差し込まれる。
一転して“easy rider”では、どこかスマッシング・パンプキンズの“1979”を思わせるメランコリックなギター・ロックが、男女ヴォーカルの掛け合いでクライマックスへと駆け上がる。「それぞれのアイデンティティーをしっかり残しつつ、いくつかの人格が集まってひとつの大きなことをやっているように聴こえる」というジャックの見立てにも頷ける。
「僕たちの曲は、ハイエナジーでパーティー向きのものでさえ、歌やギターには哀愁がある」とジャック。その言葉通り、彼らの曲は音楽的に多彩なだけでなく、そこには相反するいくつもの感情が同居している。「メランコリアを捉えながらも、世の中ってこんなに美しいんだと思わせられる。悲しみのなかにもユーモアがあるし、喜びのなかにも悲しみがあるんだ」――全員が大ファンだというリチャード・リンクレイターの映画について話を振ると、ジャックはその魅力をこう語った。それは、彼ら自身の音楽を的確に説明した言葉としても聞こえてくるだろう。
アンタイトルド(ヘイロー)
アリアナ・マムヌーン(ヴォーカルほか)、ジャック・ディオン(ギターほか)、ジェイ・アー(ドラム・プログラミングほか)、ニコラス・ノーネマン(ギターほか)から成るバンド。2023年にLAで結成され、同年に配信での初シングル“limewire”、EP『towncryer』、2024年にセカンドEP『headbanger』を発表した。LAのアート・シーンでのパーティー開催など、DIYな活動が話題を集めるなか、11月6日にファースト・アルバム『untitled (halo)』(Dirty Hit)をリリースする。
