美しい映像を引き立てるセンス抜群の音楽を追体験できる5枚。
淡々と展開するストーリーを彩る、圧倒的な映像美。ウォン・カーウァイ監督作品といえば、こんな印象を持っているのではないだろうか。加えて、要所で印象的な音楽が挿入され、さらに美しい映像を盛り上げていくのも特徴だ。そんなセンス抜群の音楽使いで定評があるウォン・カーウァイの代表作5作品のサウンドトラック盤が、なんと一挙アナログ化されるという。映画を追体験するだけでなく、音楽作品としても味わえる5枚ばかりだ。
やはりインパクトという面で言えば、「恋する惑星」だろう。カーウァイの出世作であり、混沌とした重慶大厦さえも清々しく見せてしまう映像は、フェイ・ウォンが歌う“夢中人”(ザ・クランベリーズの“Dreams”の広東語カヴァー)の存在が大きかった。この曲はもちろんだが、挿入歌として使われたママス&パパス“夢のカリフォルニア”やダイナ・ワシントン“縁は異なもの”なども収められ、なおかつフランキー・チャンとロエル・A・ガルシアによる都会的なスコアも印象深い。90年代の香港の空気感も味わえる作品と言えるだろう。

ミッシェル・リーと金城武の何とも言えない関係が印象に残る「天使の涙」は、音楽的に言うとこちらもフランキー・チャンとロエル・A・ガルシアのコンビによるスコアを堪能できる。プログラミングが軸で作られたサウンドだが、ギターやサックスなどで奥行きを作っていくサウンドメイクが独特だ。いかにも90年代っぽい懐かしさもあるが、逆に今聴くと新鮮。チン・チーがドラマティックに歌う主題歌“想う人”も収録されている。

アルゼンチンでロケが行われた「ブエノスアイレス」は、音楽的にも注目したい作品だ。いちばんの聴きどころは冒頭のイグアスの滝のシーンに重なるカエターノ・ヴェローゾの名曲“ククルクク・パロマ”。そしてアストル・ピアソラによる“3人のためのミロンガ”と“タンゴ・アパショナード”。それ以外にも舞台となった実在する〈Bar Sur〉のライヴ音源も使われている。トニー・レオンとレスリー・チャンという主演の2大スターのセリフが収められているのも嬉しい。

カーウァイ作品の中でも最高傑作と称される「花様年華」は、音楽の使われ方も非常に素晴らしい。なかでも、梅林茂が鈴木清順の映画「夢二」のために書いたスコアがそのまま流用されており、これが古き良き香港の記憶を呼び起こす映像にしっくりと合っている。また、ナット・キング・コールの名曲群が実に艶めかしく聴こえるのもこの映画の特徴だ。他にも古い流行歌や京劇の音楽が随所で効果的に使われており、様々な文化が入り乱れる香港の雰囲気を知るドキュメントのような作品でもある。

「花様年華」の続編でありながら近未来SF的要素を持つ異色作の「2046」。木村拓哉が出演したことでも大きな話題となった。音楽にはドイツの映画音楽作家ペール・ラーベンを起用しており、これまでよりもスケール感のあるオーケストラ主体のスコアを聴くことができる。また、梅林茂が書き下ろしでテーマ音楽を提供していることにも注目。コニー・フランシスの“シボネー”からベッリーニのオペラ「ノルマ」、そしてナット・キング・コールの“クリスマス・ソング”、さらにはジョルジュ・ドルリューの映画音楽からの引用など、予想外の選曲にも魅了される。

もちろんウォン・カーウァイ作品は音楽だけでは語れないが、その一方で音楽を抜きにして語れないのも事実。残されたサウンドトラックをLPというフォーマットでじっくりと紐解きながら、なぜ彼が作り出してきた作品がこれほどまでに美しく愛おしいのかをあらためて考えてみるのもいいだろう。
RELEASE INFORMATION
■作品詳細
・完全生産限定盤
・180g重量盤仕様
・解説・歌詞/対訳付
■封入特典
映画シーンのクリアカード3枚





■タワレコ特典
先着:スマホサイズ・ステッカー
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