(左から)コヤマシュウ、マツキタイジロウ、タイ・テイラー、リック・バリオ・ディル、ナル・コルト、リチャード・ダニエルソン

 

2015年の音楽シーンに華麗なる旋風を巻き起こしたヴィンテージ・トラブル。名門ブルー・ノートよりリリースされたセカンド・アルバム『1 Hopeful Rd.』は日本でも大ヒットし、プロモーション来日中はTV番組に出演するなど、その名前はお茶の間レヴェルで浸透してきている。怒涛のライヴ・バンドとして名を馳せる彼らの実力は、過去の来日公演でも証明済み。2016年4月にはジャパン・ツアーも決定しており、熱いパフォーマンスがいまから待ちきれない。片や、結成20年のメモリアル・イヤーに大車輪の活躍を見せたSCOOBIE DOの充実ぶりは、これまでMikikiで何度もお伝えしてきた通り。2016年1月27日(水)にはニュー・アルバム『アウェイ』と初の東京・日比谷野音公演を収めたライヴDVD「FILM DANCEHALL YAON」の同時リリースを控え、来年以降の活動ももちろん見逃せない。そこで、共にオールド・タイミーなルーツ志向を持ち、ロックンロールを愛する両者による日米会談を企画した。

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【参加メンバー】 

from ヴィンテージ・トラブル
タイ・テイラー(ヴォーカル)
ナル・コルト(ギター)
リチャード・ダニエルソン(ドラムス)
リック・バリオ・ディル(ベース)

from SCOOBIE DO
コヤマシュウ(ヴォーカル)
マツキタイジロウ(ギター)

まずはお互いの自己紹介を済ませてから、SCOOBIE DOの2014年作『結晶』のオープニング曲“真夜中の太陽”をその場で再生。ゴキゲンな演奏にヴィンテージ・トラブルの一同から〈クール!〉の声が飛び交うなど、和やかな雰囲気でスタートした。

SCOOBIE DO 結晶 CHAMP(2014)

 

ヴィンテージ・トラブルは本物の匂いがしたんですよね(マツキ)

――こちらがSCOOBIE DOのお2人です。

コヤマ・マツキ「よろしくお願いします」

リック「いまかかってる曲、カッコイイね。アナログで聴きたいな。他にはどんな音源を出しているの?」

マツキ今年に入ってベスト盤(『4×20 ~ 20 YEARS ALL TIME BEST』)を出したんですよ。もう20年バンドをやっていて」

リチャード「ワーオ! そうなんだ、20歳に見えるのに」

マツキ「僕らはいま40歳です(笑)。それで、2012年に〈サマソニ〉でヴィンテージ・トラブルが来日したときにファースト・アルバム(2011年作『The Bomb Shelter Sessions』)を聴いて、すごく格好良いなと思ったんですよ。〈この時代に、ここまでストレートなロックンロールをやるバンドがこの世界にいるんだ!〉と驚いて。そうそう、僕らも同じ年に〈サマソニ〉に出演してました。出演日は違いましたけど」

リックリアーナが出演していた年だよね。よく覚えてるよ、あのときは暑かった(笑)」

ヴィンテージ・トラブルの〈SUMMER SONIC 2012〉でのパフォーマンス映像。『1 Hopeful Rd.』のリード・シングル“Strike Your Light”をこの時点でプレイしている

 

――ヴィンテージ・トラブルのどこが具体的に気に入ったんですか?

マツキ「古いロックンロールの影響を受けたバンドは世界中にたくさんいるけど、コスプレっぽい人たちが正直多いじゃないですか。そういうバンドも僕は好きですけど、ヴィンテージ・トラブルは本物の匂いがしたんですよね。オーセンティックなブルース・ロックだけど、〈なんちゃって感〉がないというか、本当に(ロックが)好きな4人が集まっているんだなと」

タイ「俺たちみんな、子どもの頃から家で50年代や60年代の音楽と慣れ親しんで育ってきたし、物心がついて歌いはじめて、楽器を演奏するようになったときに憧れたのもその年代のバンドだった。そういう音楽を後から手に入れたというよりは、出会うべくして出会ったんだよ」

コヤマ・マツキ「うんうん」

タイ「最初に集まったときはそこまで考えてなかったけど、一緒にプレイしてみたら最高の組み合わせだと気付いたんだ。それって頭で考えてどうにかなることじゃないよね。だから、この4人が集まったのもラッキーだった。ロックンロールやゴスペルとか、似たような趣味をしていてもバックグラウンドは違ったりするのが普通なのにさ。だからこそ、ヴィンテージ・トラブルとして〈なんちゃって感〉もなく、ナチュラルに活動できているんだと思うよ」

マツキ「僕らも20年間活動しているんですけど、最初の頃にリズム隊のメンバー交代があっただけで、いまの4人で15年続けているんですよ。だからメンバーとの出会いには、そういう奇跡が必要なんだなと思う」

ナル「ああ、その通りだね」

マツキ「あとは皆さんもっと若いんだと思ってましたけど、実は僕らより年上だと聞いて、なるほど、と思ったんです(笑)」

ナル「僕らはヴィンテージ・トラブルを結成する前に、各々がいろんな仕事をやってきた。正直に言えば、(自分ではなく)他人のために音楽をやっている部分もあったよ。いいことも悪いこともいっぱい経験してきた。そういう経緯もあって、誰かのためではなく自分のために音楽をやろうと思って集まった4人なんだ。もちろん、みんなの心を震わせる音楽を作りたいとは思っているけど、それよりも自分たちが楽しめなくちゃ意味がない。そういう気持ちが、いまも根本にあるんだよね」

タイ「いまの編成になって15年経ったそうだけど、〈このメンバーが一番なんだ!〉と感じられた瞬間はあった?」

マツキ「SCOOBIE DOはレーベル(CHAMP RECORD)もマネージメントも自分たち4人でやっているんですよ。ツアーのスケジュールも自分たちで組んで、車一台で日本全国を廻っている。自分たちのマネージメント会社を設立したのが9年前で、そのときに〈この4人で一生やっていくんだな〉と思いましたね」

SCOOBIE DOのベスト盤『4x20 ~20 Years All Time Best~』収録曲“新しい夜明け”

 

リチャード「そういうスピリットは素晴らしいね」

タイ「財政的な理由でそうすることにしたの? それとも、それが自分たちにとって最適だと判断したのかな?」

マツキ「どちらもあてはまるんだけど、それが自分たちに相応しいやり方だと思ったんです。レコード会社にいると、売れなくなってきたら商品としてのプライオリティーがどんどん低くなっていくというか。僕らは以前メジャー・シーンにいて、そういうことを経験してきたんですね。だから、自分たちだけでやれることがあるんだったら、試しにやってみることにした。そこから、いろんなことがうまく回り出して」

タイ「なるほどね」

 

これからも自分たちの信じる道を突き進むべきだと思うよ(タイ) 

――ヴィンテージ・トラブルの『1 Hopeful Rd.』を聴いてみて、いかがでしたか?

マツキ「前作に比べて、もう少しサウンドの幅を広げてくるんだろうとは予想していたんです。でも聴かせてもらったら、その想像を上回る振り幅でしたね。メロディックな曲もあれば、いままで以上に攻撃的な曲も入っている。でも、どちらの曲調も削ぎ落としたバンド・サウンドが骨格にあって。どんなにテンポが遅い曲でもすごくソリッドに聴こえたんですよね」

VINTAGE TROUBLE 1 Hopeful Rd. Blue Note/ユニバーサル(2015)

ヴィンテージ・トラブル『1 Hopeful Rd.』収録曲“Doin' What You Were Doin'”

 

マツキ「聴いていると、ヴォーカルはもちろんとして、ひとつひとつの楽器の音が前作に比べて奥行きがあるしクリアに聴こえてくる。ブルー・ノートと契約して初のアルバムというのもあって、ある意味でジャズ的な聴き方もできるというか。ジャズのアルバムって、ひとつひとつの楽器(の演奏)を味わいながら聴くことができるじゃないですか。そういう聴き方もできるロックンロール・アルバムというか。バンドとしての進化を感じたし、新鮮な衝撃を受けました」

リック「サンキュー、ベリー・マッチ(笑)。ジャズ・レーベルに所属したことの影響は自分たちではわからないけど、ドン・ウォズは素晴らしいプロデューサーだし、(ブルー・ノートの)オーナー兼5人目のメンバーとも言える形で制作を手伝ってくれたんだ。『1 Hopeful Rd.』にはツアー中に書いた昔の曲と、ドンに誘われてから書いた曲との半々を収録している。ドンは穏やかで優しい人で、そんな彼のスピリットや共同作業で培ったものもサウンドに反映されていると思う。あと、前作はリリースしてから4年も経つからね。そこから長いツアーを経験して成長した部分もあると思う。ツアーで見聞きしたものは、すごく音楽に反映されてくるよね」

――コヤマさんはいかがでした?

コヤマ「〈ヴィンテージ・トラブルってバンドがいるんだよ〉とリーダー(マツキ)に教えてもらって。YouTubeで観たんだけど、ヴォーカリストが客席に雪崩れ込んで歌ってるんだ……という話を聞いて、すごくワイルドな、新しいガレージ・バンドが出てきたのかなと最初は思ったんですよ」

マツキ「あれ最高だよね(笑)」

ヴィンテージ・トラブルの2015年〈グラストンベリー・フェス〉でのパフォーマンス映像。4分過ぎにタイが客席へダイヴ!

 

コヤマ「それで今回のアルバムを聴いてみたら、リーダーも言ってたけどハッタリがないというか、本格派の音楽で。そこにビックリしましたね。〈4人それぞれの音で勝負しているんだぞ、ロックンロール・バンドなんだぜ〉と音楽で示しているというか。あとは、5曲目の“Shows What You Know”が〈声のくぐもってないオーティス・レディング〉みたいな感じでとても好きでした」

タイ「若い頃は誰かと比べると〈いや、俺は俺だから!〉みたいに思ったりしたこともあったけど(笑)、でも考えてみれば幼い頃からいまに至るまでオーティスやジェイムズ・ブラウンの音楽を浴びるように聴いてきて、それが単に通りすぎていくんじゃなくて、自分のなかに蓄積されていったんだろうね。だからいまは、僕らの音楽を聴いてくれた人が、彼らの影響を感じさせると言ってくれるのは物凄く光栄なことだと思えるよ。オーティスのような素晴らしいシンガーだったらなおさらね」

ヴィンテージ・トラブルの2015年の“Shows What You Know”パフォーマンス映像

 

タイ「あとはYouTubeを通じて、そういうふうに感じてくれたことも嬉しいな。自分たちも映画を観るのと同じ感覚で、伝説的なライヴ映像を観たりするからね。ティナ・ターナーの“Proud Mary”ローリング・ストーンズの“(I Can't Get No) Satisfaction”、あるいはエルヴィス・プレスリーが腰を振ってるTVショウとかさ。現代のそれとは違う、リアルな興奮があの時代にはあるじゃない。それを自分たちもオーディエンスに感じさせたいんだ。もっとクレイジーにさせられたらと日々思っている。売れたいと思ってるバンドって、テレビに出たいがために迎合するような演奏をするものだろう? 俺たちは逆さ。〈そんな演奏するんだったら出入り禁止だ!〉と言われるほどのパフォーマンスをやってやりたい(笑)」

コヤマ「僕らも同じスピリットですよ」

――そういえばSCOOBIE DOも『GRAND-FROG SESSIONS』(ライヴ会場限定で販売された洋楽カヴァー・アルバム)でオーティスをカヴァーしてましたよね。

ナル「どの曲?」

コヤマ「“Hard To Handle”です」

タイブラック・クロウズもやってるよね。そっちは若い頃によく聴いてた気がするよ」

オーティス・レディングの68年作『The Immortal Otis Redding』収録曲“Hard To Handle”

 

リック「僕からもひとつ質問していいかな。君たちの歌詞は日本語と英語、どちらが多いのかな?」

マツキ「日本語ですね」

タイ「“Hard To Handle”はどうカヴァーしたの?」

コヤマ「そちらは英語で」

マツキ「僕らの音楽的なルーツは、その時代のアメリカのリズム&ブルースなんです」

――ヴィンテージ・トラブルとSCOOBIE DOは、若い世代へのルーツ・ミュージックへの入り口として機能しているという点でも、共通する部分があるのかなと。

マツキ「ヴィンテージ・トラブルの音楽を聴いていると、昔の音楽をそのまま再現しようという感じではなくて、メンバー4人のキャリアも反映しつつ、そういう(古い)音楽をフィルターというかモチーフにして、自分たちオリジナルのロックンロールをやろうとしているのが伝わってくるんですね。僕たちもリズム&ブルースや日本のグループ・サウンズ昭和歌謡などのルーツを持っているし、そういうのを全部ひっくるめたうえで、いまのSCOOBIE DOにとってスタンダードなロックンロールを鳴らそうと思っているので。そういうスタンスは共通しているのかなと思いますね」

タイ「みんなバックグラウンドは異なるわけだし、摩擦や衝突が生じることもある。それらが上手く作用すれば、素晴らしいケミストリーを生み出すことができるわけだ。僕らの場合は、そういうのがうまく働いているってことだよね。他の人たちとは違うことにトライしているけど、これからも自分たちの信じる道を突き進むべきだと思うよ」

 


 

ヴィンテージ・トラブル ジャパン・ツアー
【大阪公演】
日時:会場/2016年4月4日(月)大阪・BIG CAT
【名古屋公演】
日時:会場/2016年4月5日(火)名古屋・DIAMOND HALL
【東京公演】
日時:会場/2016年4月7日(木)東京・EX THEATER ROPPONGI
【横浜公演】
日時:会場/2016年4月8日(金)横浜ベイホール
開場:開演(全公演共通)/18:30:19:30
料金(全公演共通)/6,500円(税込・1D別)
★詳細はこちら 

 

~SCOOBIE DOからのお知らせ~

SCOOBIE DO アウェイ CHAMP(2016)

結成21年目のニュー・アルバム。2016年1月27日(水)リリース!
★詳細はこちら 

SCOOBIE DO FILM DANCEHALL YAON CHAMP(2016)

2015年10月4日に超満員の日比谷野外大音楽堂で行われた、SCOOBIE DO結成20周年記念ライヴ〈ダンスホール野音〉で当日演奏された全31曲を収録。2016年1月27日(水)リリース!
★詳細はこちら 

 

「COUNTDOWN Funk-a-lismo!」
2015年12月31日(木)東京・下北沢GARDEN

「21周年ライヴ初め〜DO新ホールでFunk-a-lismo!」
2016年1月9日(土)札幌・道新ホール

「Young Bloods vol.1」
2016年2月13日(土) 東京・下北沢SHELTER
出演:SCOOBIE DO / never young beach

「Young Bloods vol.2」
2016年2月14日(日) 東京・下北沢SHELTER ★SOLD OUT!
出演:SCOOBIE DO / Suchmos

SCOOBIE DO TOUR「Funk-a-lismo! vol.10」
2016年2月26日(金) 千葉LOOK公演から全国ツアーがスタート!
★ライヴの詳細はこちら