韓国の映画作家ホン・サンスの、公私ともにパートナーである女優キム・ミニとのタッグ4作目。小さな出版社の社長の不倫をめぐる顛末と、その出版社へ入社するキム・ミニのささやかな物語。主要なエピソードがほぼ一日の出来事であるにもかかわらず、会話やシチュエーションの反復と差異が、観客の時間感覚を確実に狂わせていく。タクシーに乗ったキム・ミニの顔に光が差す瞬間の美しさ! そしてそれと同じくらい出版社オフィスのバッハとブラームスのCDジャケットが脳裏にこびりつく不思議。意味などない世界のむきだし。ホン・サンスは世界だ。