INTERVIEW

ケンチンミン『RUNT』 人間味に溢れた大分のラッパーがChilly Source発の新作を語る!

ケンチンミン『RUNT』 人間味に溢れた大分のラッパーがChilly Source発の新作を語る!

 地元の大分に根を張りながら、注目レーベルのChilly Sourceに参加し、軽快な立ち回りでその名を全国に浸透させつつあるMC、ケンチンミン。同郷のビートメイカー・illmoreとのタッグ名義による諸作や、唾奇を迎えた夜遊び讃歌“Routine”(2018年)でのいい塩梅なプレイボーイぶりに、気さくな魅力を感じた人は多いことだろう。

 もともとニルヴァーナ好きのバンドマンだったという彼がヒップホップに目覚めたのは、高校卒業後、NYに渡って路上で弾き語りをしていたときに、黒人の集団に声をかけられて彼らのラップとセッションしたことがきっかけ。その後、帰国して大分に戻った彼は、やがてラッパーとしての活動を開始。2015年には自力でミニ・アルバム『THE 6 MONTH』を発表するも思うような活動ができず、「音楽を嫌いになりそうになった」こともあったという。そこで「本当に好きなことをやろう」と一念発起した彼は2016年、以前からイヴェントで繋がりのあったillmoreに声をかける。

 「illmoreとはまず地元限定のEP『HOOD』を作ったんですけど、それを出した頃から周りの評価が変わりましたね。そこからillmoreと大学が一緒だったKROくん(Chilly Source主宰のDJ KRO)のチルいジャパニーズ音源だけを繋げたミックスに出会って、〈俺が求めていたのはこれだ!〉と思って」。

ケンチンミン RUNT Chilly Source(2019)

 〈できそこないのチビ〉という意味のスラングを表題にしたこのたびのフル・アルバム『RUNT』は、先述の“Routine”を含む全11曲で構成。まずは『THE 6 MONTH』収録曲を「いまの自分のスタイルにコミットさせた」という“ima”で、Chilly Sourceの新鋭ニューリーによる生音を活かしたトラックと共に新しい扉を開き、その後も適度な気怠さと風通しの良さで時間の流れを緩やかにするような楽曲が続く。緩急を備えたスムースな聴き心地は、illmoreに全体のプロデュースを委ねたことも大きいようだ。

 娘を授かる心情をHikari Kumamotoのビートを聴いてすぐに書き上げたという“Papa Ni Naru”、東京の仲間たちとの交歓をまったり歌った“One day in Tokyo”、「illmoreとの“Drunk”という曲で俺の名前を歌詞に出してくれたし、誰のことも見下さない、すごく愛に溢れた人」だというBASIを迎えて互いのライフスタイルを落とし込んだ“Styles”など、どの楽曲からも浮かび上がるのは等身大のケンチンミン自身。自分の生き方に真正直なリリックは、気持ち良いビートも相まって彼の好漢ぶりを伝えてくる。

 「嘘をついたりカッコつけてもバレるし、自分の経験してないことを書いたって絶対に伝わらないと思うんですよ。俺は“ima”で〈まず時計を捨てろ〉って歌ってから腕時計をつけたことがないし、ナンパするときも最初に〈やりたい〉って言うタイプなんで(笑)」。

 そしてアルバムを締め括るのが、彼の代表曲のひとつ“この街で生きてる”のスタジオ・セッション音源。近年取り組んでいるバンド編成でのライヴを受け、トランペットとピアノの抒情的な演奏と息を合わせながら、何もない〈この街で生きる理由〉を熱のこもったラップで伝える、彼の生き様を乗せた渾身のトラックだ。

 「この曲は『HOOD』にも入ってて、初めてillmoreと一緒に作った曲で、ライヴでやればやるほどデカくなっていって、初めて自分以外の人が大きくしてくれた曲なんです。最後に〈地元愛的な話じゃない〉と言ってる通り、ただ地元をレップしてるわけじゃなく、地元での俺の生き方を歌っていて。今回はドラムレスの編成で一発録りしたんですけど、ヒップホップという思想に捉われない見せ方が、自分が本当にしたかった形なんですよ。昔なら作りたい音を実現するにも時間がかかったけど、いまはChilly Sourceや地元の仲間を含めてスキルのある人が周りに増えて。アーティストとしては遅咲きかもしれないけど、〈できそこないのチビ〉だからこそ出せる音があると思うし、俺は〈できそこないのチビ〉の中で一流であればいいんです」。

 


ケンチンミン
大分出身のラッパー。中学生でギターを始めてロック・バンドを結成。高校卒業後に渡ったNYでラップを始める。帰国後は地元中心にライヴを続け、2013年にミニ・アルバム『NARCISM』を自主制作。翌年には6か月連続で楽曲を配信し、それらをまとめた『THE 6 MONTH』を2015年にリリースする。2016年にillmoreとの連名でEP『HOOD』を発表。2017年には同コンビでの『UNITED』から“だった”“とける”が話題となり、前後してChilly Sourceに加入。以降は『Chilly Source Compile Vol.1』に参加する一方、15MUSやKIKUMARU、Shohey Uemura & yuhei miuraらの楽曲にも客演。このたび初の全国流通盤となるニュー・アルバム『RUNT』(Chilly Source)をリリースしたばかり。

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