2018年に突然この世を去った俳優・大杉漣への愛に溢れた一冊である。笑福亭鶴瓶、松重豊、斉藤和義、稲垣吾郎をはじめとする友人・共演者の追悼文や対談に、転形劇場/ピンク映画/Vシネマ/一般映画/TVドラマ/TVバラエティでの多岐にわたる活動の論考が並ぶ(余談だが、篠崎誠論考での、黒沢清vs大杉漣の現場での〈アドリブ〉攻防戦とその顛末は抱腹絶倒の面白さだ)。分けても青春時代や舞台・映画・音楽・サッカーなどについて語る大杉自身の23編のエッセイ! 肩の力のほどよく抜けた飾らない語り口は絶品。本書の素晴らしさは、大杉漣が存在したことの〈多幸感〉に満ち溢れていることだ。そのことが例えようもなく嬉しくも寂しい。