活動期間僅か6年で6本の作品を残し51歳の若さでこの世を去った巨匠ヤスミン・アフマドの遺作。ある高校で行われる音楽コンクール〈タレンタイム〉に参加する高校生たちの青春群像劇。恋や嫉妬、不治の病の母への思い、多国籍国家マレーシアの民族や宗教の違いによる葛藤等が収斂するクライマックスは、ピート・テオによる音楽と相まって落涙は必至。ただ、それ以上に拙者は静かなラスト・シーンに魂が震えた。アフマド映画の〈やさしさ〉は永遠だが、それは一方で厳しい現実から目を逸らさないが故のものであることは、あらためて言い添えておきたい。