〈世間の偏見に対するアンチテーゼ〉から〈誰かのための歌〉へ——あえて〈オネエ〉という言葉を掲げてきた3人のサウンド&ヴィジョンが節目のベスト盤にて実を結んだ!

 〈オネエ3人による総合エンターテイメント・ユニット〉を謳うENVii GABRIELLA(エンヴィ ガブリエラ:略称エンガブ)が、2017年の結成から5年目に入って初のベスト・アルバム『ENGABEST』をリリースした。まずは、グループについてリーダーのTakassyに訊いていこう。

 「私たちは、必ずピンヒールを履いて、歌って踊るグループです。私が作詞/作曲/編曲からジャケットのデザインなどもやっていて、振付けはダンサーのKamus。あと、空気担当のHIDEKiSMって3人で活動しています。もともと3人ともソロで活動してたんですよ。でもアラサーになったとき、3人でやったほうがイケるんじゃね?って結成したんです。なので、夢や目標を持ちつつも、武道館行こうぜ!ドーム行こうぜ!ってよりか、10年後も生活しようぜ!みたいな堅実な感じです(笑)」。

 登録者数10万人超えのYouTubeチャンネル〈スナックENVii GABRIELLA〉でエンタメ要素たっぷりの配信も行っているエンガブだが、あくまでもその中心にあるのは音楽だ。

 「日本の芸能界で〈オネエ〉をセールスポイントにしてる方もいらっしゃいますが、本格的な音楽をやってる方はあまりいないので、そのパイオニアになろうっていうのがありました」。

 そのサウンドは、EDM、R&Bなどのクラブ・ミュージックが主軸。

 「私のルーツは、90年代から2000年代のR&Bやクラブ系のアーティストなんです。エンガブを始めたときに、アン・ヴォーグ、TLC、デスティニーズ・チャイルド、日本だとMAXといったガールズ・ユニットを参考にしたんです。影響を受けたアーティストのフェミニンなところ、カッコイイところを落とし込んで独自にアレンジしていってますね。あと、私たちはステージでパフォーマンスするのが大前提と考えているので、踊りたいと思う曲じゃないとボツにしちゃいます」。

ENVii GABRIELLA 『ENGABEST』 P'Z(2021)

 ゴージャスなヴィジュアルとストイックな姿勢で4年間走ってきたエンガブ。その集大成が、CD+写真集という形でリリースされた今回の『ENGABEST』である。

 「CDには、いままで発表した楽曲と、新曲が5曲入ってます。あと、64ページの写真集をつけさせてもらったんですけど、1曲ごとに衣装変えて撮影したり、ライナーノーツも全曲書いたり、すっごくこだわって作りました」。

 バウンシーなダンス・ミュージック、キャッチーなナンバー、バラードまで幅広い楽曲が並ぶ本作の中からオススメ曲を挙げてもらった。

 「ディープ・ハウス寄りの新曲“SLAY”が今回の目玉曲のひとつですね。マドンナの“Vogue”をエンガブらしい見せ方でやりたいなと思ってたんです。ハウス調の曲でヴォーギングの振りもガツッとやりました」。

 歌詞の面では、全体的に聴き手のマインドをポジティヴに促すものが多い。

 「エンガブを始めた頃は気持ちが先走ってて、わりと世間に攻撃的な歌詞が多かったんです。でも、YouTubeでお悩み相談のコーナーをやって、いろんな方から相談が持ち込まれて気持ちが変わっていったんです。私たちもLGBTQってものに属してるけど、ゲイだからって悲観的になってるとチャンスを逃すだろうな、人間誰でも悩みはあるし、解決方法もそれぞれだよなって思えたんですよね。若い子にも、いまを耐えたらその先には待ってくれてる人がいるんだよってことをすごく伝えたくなったんです。私たちも〈オカマ〉ってボロクソ人生叩かれてたけど、こうやって楽しくやってるよって(笑)。共感の押し売りじゃなく、聴いた人に自分でカーテンを開けようかなって思わせられるようなユニットでいたいですね」。

 4年間をパッケージした作品を完成させ、さらに前進していくエンガブのこれからの目標を聞いてみた。

 「すごく大きいことを言うと、名声が欲しい(笑)。というのも、この4年間で誰かの役に立ちたいってマインドに変わってきたんですよ。それをするには、世の常として力が必要じゃないですか。コロナ禍で、力を持ってるのにロクな発言しない人も多いなか、身近で飲食やってる人とか苦しんでる人を見て何もできない悔しさがあったんです。世界のためとかじゃなく近くの人に何かしたい。そのためにも、エンガブがもっとみなさんに知ってもらえて力を持てるようになりたい。それで、みんなが幸せになれるようにって思ってます。最終的な目標は3人の家を建てて一緒に暮らすことだけど(笑)」。