2021年8月、アルバム『「心略」~Fascinate your heart~』でメジャー・デビューした5人組歌い手ユニット〈帝国プリンスキングダム~ぷりだむ~〉。YouTubeのチャンネル登録者数は6万人超の人気グループだ。アルバムのリリースに合わせてタワーレコードの企画〈NE(X)T BREAKERS〉に選ばれ、また収録曲“Empire”がテレビ朝日系の音楽番組「musicるTV」の8月度オープニング・テーマ・ソングに選ばれるなど、いまノリにノっている。

この記事では、そんな〈ぷりだむ〉の魅力に迫る。歌い手が群雄割拠する現在の音楽シーンにおける彼らの独自性、充実した内容のアルバムから浮かび上がる5人の個性などについて、ライターの北野創が綴った。 *Mikiki編集部

帝国プリンスキングダム~ぷりだむ~ 『「心略」~Fascinate your heart~』 ユニバーサル(2021)

 

歌い手シーンの成熟と多様化、人気ユニットの活躍

既存曲のカバーを中心とした〈歌ってみた〉動画を投稿・発信する〈歌い手〉と呼ばれる存在が、音楽シーンを賑わすようになって十数年が経つ。ムーヴメントの起点となったニコニコ動画のサービス開始が2006年、その隆盛のなかからピコ、96猫、Geroらが頭角を現し、ネットの外まで活動の場を広げていくと、その後もEve、天月-あまつき-、まふまふ、そらる、ウォルピスカーターといった才能が続々と登場。近年では、Adoやyamaのように、歌い手やボカロ音楽を聴いて育ったであろう新世代が、〈歌ってみた〉の文化圏からメジャーに羽ばたくなど、〈歌い手〉シーン自体の成熟と多様化が進んでいる。

yamaの2021年作『the meaning of life』収録曲“ランニングアウト”

そのなかでも現在、若年層を中心に支持を集めているのが〈歌い手ユニット〉というスタイル。複数の歌い手が集まってグループ形態で活動を行うもので、メンバー各人の個性とその掛け合わせによって歌唱表現に幅や奥行きが生まれるのはもちろん、メンバー同士の関係性を踏まえた聴き方・楽しみ方ができるなど、多人数ならではのメリットは多く、それが隆盛に繋がっているものと思われる。〈歌い手ユニット〉で特に人気が高いのは、浦島坂田船(うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラの4名)、すとぷり(莉犬、ジェル、さとみ、ころん、るぅと、ななもり。の6名)の2組だが、そんな彼らに続く存在と目されるのが、本稿で紹介する、帝国プリンスキングダム~ぷりだむ~、通称〈ぷりだむ〉だ。

すとぷりの2021年のシングル“ステレオパレード”

 

キャラが立った5人の王子たちの物語

2020年6月の結成からまだ1年あまりの活動歴ながら、YouTube公式チャンネルのフォロワー数は6万人を突破、今年8月にリリースしたメジャー・デビュー・アルバム『「心略」~Fascinate your heart~』がオリコンウィークリーランキングで初登場10位になるなど、俄かに注目を集めている彼ら。その特色の一つとして、キャラクター性を前面に押し出していることが挙げられる。

あまね、そあら

ぽちいぬ、あーるん。、なぴ

歌い手は元来より素顔を見せずに活動することが多いが、ぷりだむの場合は、5人のメンバー全員が〈王子〉という設定で、基本イラストを軸に活動を展開。死の国の王子・あまね氷の国の王子・そあら犬の国の王子・ぽちいぬ忍の国の王子・あーるん。人形の国の王子・なぴ、彼らの物語がアフレコ付きのマンガとしてYouTubeに公開されており、〈歌ってみた〉動画と共に、ぷりだむが描き出す世界観の入り口として機能している。

マンガ「帝国-プリンスキングダム-」の「第1話『第0章-死の国あまね編👼👿』」