輝かしいコンクール歴を持つコブリンが40歳を目前にして録音したソナタ3曲は、堂々たる構築ぶりを堪能させる圧巻の弾きっぷり。細部まで綿密に考え抜かれた表現が迷いなく明快に刻印され、楽曲を横断する。ダイナミクスの微細なニュアンスは鮮やかに変化し、フレーズの出し入れが明晰に描出されることで立体感が増幅される。ふところの深い緩急の手さばきには達意がこもり、音楽も大きい。第2番の葬送行進曲などでは、そういった開陳の冴えに、時には凄みをもって聴き手を引き込む。第2番冒頭楽章や第3 番終楽章といい、俯瞰に支えられたダイナミックな筆致がコブリンの存在感をあらためて強力に示している。