ピアノとドラムスを軸にしたシンプルなバンド・サウンドで目を見張るほど多様かつカラフルな楽曲を紡いできた彼らだが、セカンド・フル・アルバムにしてメジャー・デビュー作ではそのセンスをより大胆に解放し、ポップスとしてのさらなる広がりと強度を獲得した。グルーヴィーなベースラインに乗せて膨大な言葉を放出する“ローリンソウル・ハッピーデイズ”など前半に畳み掛ける楽曲の、聴き手の耳を捉えて離さないキャッチーな吸引力が凄い。後半は「みんなのうた」に書き下ろした“月の踊り子”のような軽やかなナンバーが並び、それゆえに社会との軋轢ともがきを描出した詞世界の痛みが際立つ。流麗なピアノとエモーショナルな歌で圧倒するクロージング曲“火花”も圧巻。スケール大の風格をものにした充実作だ。