2CELLOSのドラマー、初のソロ・アルバムは越境的ジャズ!

 まさかの伏兵現われる――。そう形容したくなる作品が届けられた。2CELLOSのツアーや録音に参加してきたドラマー、ドゥーシャンによるソロ作『Dusan』である。クロアチア生まれの彼は、クラシックの教育を受けながらも、ジャズやヒップホップに傾倒。そうした来歴を反映した本作は、複数の領域を横断する多面的な一枚に仕上がっている。ドゥーシャンが幼い頃夢中になったという、クリームやサンタナのような熱や衝動が迸ると同時に、最新鋭のジャズという趣もある。

DUSAN 『Dusan』 ソニー(2024)

 基底を成すのは、クリス・デイヴ以降の潮流も視野に入れたようなドゥーシャンのドラム。ドラマーでは、バディ・リッチ、エルヴィン・ジョーンズ、ジンジャー・ベイカーを敬愛するだけあって、とにかくそのプレイはド派手で華やかでアッパーだ。手数が多くアタックの強いビートは聴いていて痛快きわまりない。全身で歌っているようなフィルも聴きものだし、ブレイクビーツを叩かせても当代随一である。

 そんな彼が選んだメンバーがまた豪華。ピアノにジェイムズ・フランシーズ、ベースにハウス・オブ・ウォーターズのモト・フクシマ、ギターにクエンティン・アンガスが抜擢されている。中でも、フリーとビバップを自在に往来し、予測不可能な蛇行を繰り返すクエンティンのギターが冴えている。ペドロ・マルティンス、カート・ローゼンウィンケル、マシュー・スティーヴンスといった〈越境するギタリスト〉の系譜に位置する彼の雄弁で饒舌なソロが、本作の推進力となっている。

 彼の手腕についてドゥーシャンは「トラディショナルなスタンダードも、ソロもバッチリこなせて、メロディックな要素も弾ける」と述べているが、まさにその通りのプレイ。ハイライトはやはり、そんなギターとドゥーシャンのドラムがせめぎあう場面だろう。最高の好敵手であり仲間であるギタリストと競った本作、初のソロ作としては最高の船出ではないだろうか。