20世紀のイギリスの歴史家E. H. カーの主著「歴史とは何か」の中で〈歴史とは現在と過去の終わりのない対話〉と表現したように、クラシック音楽の歴史を振り返って紐解くには、同じくらい今日におけるクラシック音楽の事情を知る必要がおのずと求められてくるものです。本書はクラシック音楽の歴史を支えた多くの作品が抱える構造に着目し、時代が進むにつれて変化していく構造の推移を解きほぐしていきます。特に後半で語られる21世紀のためのクラシック音楽論はいよいよ四半世紀を迎える今日において先駆的な試みとして読み応えがあります。