読んでいて清々しい気分になってくるブルックナー本だ。その理由は、新世代の演奏家や研究者のインタヴューが多いことと、20~30代の新進ライターが多く起用され、清新で柔らかなブルックナー論を展開、その文章にキラキラした感性が脈打っているからだ。巻頭の石原勇太郎氏の〈時代はブルックナーを求める〉はブルックナーを聴くヒントを、その複雑な受容史を含めて、短い文で颯爽と表現しているし、若手ライター5人による〈ブルックナー会議2024〉も、彼らのブルックナー愛とともに、作品を聴きたくて仕方がなくなってくるワクワクがある。50~60代のライターが脇をしっかり固めて、スリルと安心が共存する一冊となった。