©Anoush Abrar & Classeek

アコーディオンという多彩な楽器へのあくなき探究心から生まれたニュー・アルバム

 フランスの革新的なアコーディオン奏者、フェリシアン・ブリュが昨年10月に来日し、ピエール・デュムソー指揮 群馬交響楽団との共演で、アコーディオンとオーケストラのために書かれた作品を披露した。ティボー・ペリーヌの“アコーディオン奏者のカプリス”とファビアン・ワクスマンのアコーディオン協奏曲“時の島”、この2作はアルバム『二つの愛~パリ・アルバム』にも収録されている。

FÉLICIEN BRUT 『二つの愛~パリ・アルバム』 Erato(2022)

 「アコーディオンが発明されたのは1829年。ポピュラー音楽の楽器であるとみなされがちで、オーケストラ曲のレパートリーが少なかったので、2作とも私が作曲家に委嘱して書いてもらいました。“アコーディオン奏者のカプリス”はビーチに6万人が集まっていろいろなジャンルの音楽を楽しむフェスティヴァルで初演した作品で、華やかなアコーディオンの技巧を聴かせつつ、誰もが知るフレンチポップの引用も盛り込みました。

 いっぽう“時の島”は本格的な協奏曲を意識して、3楽章で構成されています。エジプト神話をモチーフにした作品で、私がイメージしたのはルーヴル美術館のガラスのピラミッド。『二つの愛~パリ・アルバム』では、収録曲それぞれにパリの名所が紐づけられていて、街を散歩するように楽しむことができるんですよ」

FÉLICIEN BRUT 『アコーディオニスト:プレリュード、ワルツ&アンヴォル』 Erato(2025)

 2025年5月にリリースされた最新アルバム『アコーディオニスト:プレリュード、ワルツ&アンヴォル』もプログラミングの妙が光る一枚。〈プレリュード(探求と伝統)〉〈ワルツ(リズムと感情)〉〈アンヴォル(自由と現代性)〉を表わす3曲 × 5セットで構成されている。

 「僕たちアコーディオン奏者は、長らくバッハの平均律クラヴィーア曲集のプレリュードとフーガを編曲して弾いてきましたから、クラシック曲を中心としたプレリュードを入れたいと思いました。そしてフーガのかわりに、アコーディオンの歴史とは切っても切れないワルツを入れようと考えついたんです。マルセル・アゾーラ、ジョエ・ロッシ、リシャール・ガリアーノら、歴代のアコーディオン奏者たちが弾いてきたダンスミュージックには、彼らへのオマージュという意味も込められています。

 そしてもうひとつ、現代の作曲家がアコーディオンのために書いたオリジナル作品を入れることは、未来への飛翔を意味します」

 アコーディオンの可能性を探求するブリュの旅は、まだまだ続きそうだ。