東京発のメタルコアバンドSailing Before The Windが1stフルアルバム『Destination』をついに完成させた。重厚なブレイクダウンと叙情的なメロディが融合した10曲を収録した本作は、〈結成から15年目を迎え、波乱万丈の末についに完全体となったSBTWがお届けする、メタルコアを超えたメタルの理想形!〉と音楽ライター増田勇一が評する充実作。〈メタルコア本来の魅力とは?〉とリスナーに問いつつ、多様なサウンドにも挑戦したアルバムについて、音楽ライター荒金良介がバンドを率いるベーシストBitokuにインタビューした。*Mikiki編集部

時を超え受け継がれるメタルコアのメロディとブレイクダウン
――Sailing Before The Windは2011年結成ですよね。当時はどんな音楽をやろうと思ってました?
「もともとメタルコアをやろうと思ってました」
――当時、Bitokuさんが心を奪われたメタルコアは?
「アイ・キルド・ザ・プロム・クイーン、オール・ザット・リメインズ、オーガスト・バーンズ・レッド、あとは初期のパークウェイ・ドライヴですね」
――海外の王道メタルコアバンドが多いですね。その好みは今も変わらず?
「基本的には変わらないですね。今もメタルコアバンドをやっていますが……そのジャンルが好きというより、2025年現在に自分が好きな音楽がたまたまメタルコアというジャンルに属しているだけです」
――結成当時の初期衝動は、このバンドをやる上で原動力になってます?
「そうですね。最初にメロディとブレイクダウンに心を奪われて、それは時代の流れとは関係ないものだから。メロディとブレイクダウン、その相反する様子がパッケージされていることにときめいたんですよ」
――バンド的にはメンバー交替も激しかったですが、そのへんの苦労はいかがですか?
「あまり苦労と思ってないかもしれません。ハタから見ると、メンバーが抜けるのは大変な状況だけど、メンバーチェンジは、より良いものを目指した結果起きるものだから」
――自分の中ではポジティブに捉えているんですね。それで2014年にBitokuさん以外のメンバー全員が抜けます。それ以降はサポートのライブメンバー4人を迎えて、バンドは継続させるわけじゃないですか。その期間はどれぐらいですか?
「8年ぐらいですね。それからライブメンバーが正式に加入した流れです。今思えばですけど、最初から正式メンバー体制で一緒にやれば良かったなとは思います」
――そうしなかった理由は?
「バンドを続けてくと、どうしてもお金やセールスとか音楽とは関係ない部分を考えなきゃいけなくて。でもライブメンバーはそれを考えなくてもいいポジションだから。その方が純度高い状態で、彼らが音楽に集中できるんじゃないかと」
――話を聞くと、事務所のマネージメントの方みたいな考え方ですね。Bitokuさん、優しすぎませんか?
「はははは、そうなんですよね。よく考えると、普通にあるバンド形態で良かったのかなと」
――では、バンドとしてターニングポイントを挙げると?
「今話したように、2014年にメンバーが全員抜けて、立て直した時は転換期でした。
あと、去年ヨーロッパに初めてツアーで行ったときに確かな手応えがあったんですよ。バンドの人気や数字的なものが爆発的に変わったわけではないけど……自分たちの精神的な部分で、これは全然通用するなと。収穫はめちゃくちゃ大きかったです。自分たち目当てのお客さんではない人の前で、受け入れてもらえる感覚がすごくあったから。クラップやサークルピットが起きたりして、初見のお客さん相手にここまで通じるんだったら、これは可能性があるなと」