ボーカリスト・Kenzi Yoshidaによるソロプロジェクト、GRID WEDGEが、1stミニアルバム『Sticky Scream』を完成させた。70〜80年代のハードロック/ヘヴィメタルの剛直さを宿した、豪快かつ重量感のあるサウンドと、強烈なハイトーンシャウトという同プロジェクトのシグネチャーを前面に押し出した楽曲から、ドラマティックなバラードまで、さまざまな表情を見せる楽曲が揃っている。
また本作のリリースに合わせ、2021年に発表された1stアルバム『GRID WEDGE』の全国販売もスタート。今回同時に届けられる2作についてはもちろん、〈10年以上悩んでいた〉というこのプロジェクトを始動させた経緯や、楽曲制作におけるこだわりまで、幅広く話を訊いた。
10年以上悩んだ末のプロジェクト始動
──まず、このプロジェクトを立ち上げようと思った経緯から教えてください。
「若い頃からほぼ英詞でハードロック/ヘヴィメタルのオリジナルバンドをやってきたんですけど、なかなかうまくいかなかったんですよね。
でも、歌えば歌うほど、ボイトレをすればするほどアイデアが思いつくし、それがどんどん溜まっていってしまって。それに対して〈お前これどうすんの?〉って、自分の中のもうひとりの自分に怒られまして(苦笑)。じゃあもうとりあえず全部ひとりでやってみようと。とにかく一度これを形にして、リリースして、世の中の皆様にご提案させていただきましたというのが現段階ですね」
──自分の中のアイデアを形にしなければと思い始めてから、1stアルバム『GRID WEDGE』を完成させるまでにどれぐらい時間がかかったんですか?
「もう10年以上悩んでましたね。ボーカリストといっても、誰かに楽曲を提供してもらう人と、自分で楽曲を作って歌う人の2パターンがあると思うんですけど。どちらが良い/悪いではなくて、自分が後者のタイプだったことに最初は気づいてなかったんです。俺は歌っていればいいんだと。他のパートはそれぞれのプロに任せて、歌に専念すればいいんだと思っていて」
──作るというよりは歌いたかったんですね。
「そもそもコピーバンドがやりたかったんですよ。でも、人生で初めて入ったバンドがオリジナルバンドだったんです。スタジオに入ると、それぞれがなんとなく楽器を弾き始めて、こう、待たれてる感じですよね(笑)。〈何か歌ってください〉みたいな、いきなり中級者レベルの要求をされて。
今思うと初心者がよくやれていたなと思うんですけど、もしかしたら自分はジャムセッションで歌うのは得意なほうだったのかもしれないなとも思います。そうやって徐々に作詞作曲を、自然と学ばざるを得なかったというか(笑)。いろんなメンバーから吸収させていただいて、その技術がやっと身についたのが1stアルバムだったのかなと思います」
──悩んでいた10年の間も、さまざまなバンドを経験されていたんですか?
「そうですね、期間の短いものから長いものまで。カバーバンドもやりましたし、打ち込みが得意な人とユニット形式でやろうという話もあったんですけど、俗に言う方向性の違いでお別れしてしまったりとか。
そういうときって〈もういいや、作ってくれる人に任せちゃおう〉という方も多いと思うんですけど、自分はそれができなかったんです。わがままと言ってしまえばそれまでなんですが」
──でも、それぐらいご自身の中でやりたいものが明確にあったと。
「そうです。でも、〈ひとりでやるのは無理でしょ〉という固定観念みたいなものがあったんです。ギターもベースもドラムもすごく技術が必要ですし、それを全部ひとりでやるなんて。
ただ、そう考えているといつまで経っても形にできないんですよね。それでやらなきゃ……やらなきゃ……という思いがふつふつと積み重なって、作っちゃいました」
──Yoshidaさんご自身がギターを弾いたりは?
「やっていくうちに、これぐらいだったら弾けるかもという感じにはなっていきましたね。いってもそんなにたいしたものは弾けないですけど。
それに、自分はボーカルだし、ボーカルメインのプロジェクトなんだから、難しいことをやるよりも分かりやすいもの、歌メロが基本にある楽曲をやれたらと思っています。もしかしたら今後変わっていくかもしれませんが、今のところはそう思ってますね」