メタラーのジャズピアニスト西山瞳さんがメタルについて綴る連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は2025年を振り返りって、西山さんが好きだった今年のメタルアルバムを挙げてもらいました。2025年も当連載をお読みいただきありがとうございました! 2026年もどうぞよろしくお願いいたします!! *Mikiki編集部

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今回は、毎年恒例、2025年にとても好きだったメタル盤を挙げていきます。

個人的年間ベストは、スリープ・トークン『Even In Arcadia』

SLEEP TOKEN 『Even In Arcadia』 RCA/ソニー(2025)

5月の記事に書きました。

全曲採譜して研究し、自分のバンドのアイデアに繋げたりもしていました。

自分のYouTubeショート動画に少しアップもしていました。ピアノカバーアルバムが出せるぐらいもう頭に入っている!

もうね、未来だと思うんですよ、このバンドの音楽は。

ジャズも含めて、一番自分に影響した作品となりました。

 

コロナー『Dissonance Theory』

CORONER 『Dissonance Theory』 Century Media/DIW on METAL(2025)

2年前のドラマーの江藤良人さんインタビューの時、お薦めとして『Punishment For Decadence』を挙げられていて、そこから聴き始めたという新参者です。

とても知的でテクニカルで疾走感があり、アート性も感じられる緊張感。複雑な構成にも魅了されました。どのアルバムを聴いても新しいチャレンジをしていて、その音楽に対するフロンティア精神も含め、一ミュージシャンとしてとても格好良いと思いました。しかし、リリースはかなり前に止まっているので、昔のバンドだと思っていたんですよ。

そのバンドが、なんと、32年ぶりのアルバムリリースということで、リリース情報を聞いてから、楽しみに待っていました。

いやー、文句なしに格好良い

ギターのリフで運んでいくスラッシュメタルの美味しいところはビシッと押さえつつ、プログレッシブに展開される楽曲たち。ベースが楽曲のビジョンを大きく広げていく役割を持っていて、これも聴いていて楽しいです。

また、アルバム全体のサウンドはしっかり現代の音像になっており、バンドが全然古びていない。昔、人力でビシッとクオリティの高い音楽をしていたバンドが、現代のテクノロジーを手に入れると、強度が凄いなと思いました。

 

ローナ・ショア『I Feel The Everblack Festering Within Me』

LORNA SHORE 『I Feel The Everblack Festering Within Me』 Century Media/ソニー(2025)

過剰っ!

笑っちゃうぐらい過剰で、初聴きの時は、もう聴きながら声を出して笑っていました。

もう、なんなのよ! やりたいこと全部載せりゃいいってもんじゃないのよ!」(褒めてます)

メタルの中のシンフォニックな部分って、そこにフォーカスしてあまり長い時間使うと、作り物感が出ちゃうじゃないですか。このバンドのシンフォニック部分は、ストリングス系、コーラス系の両方が、重層を持たせる背景レイヤーの一つとして上手く機能しており、また、ブラストビートや、汁気のあるデスボイスと同時に鳴っていたりするので、逆にくどくない。

でも、同時に鳴っている過剰さにより、〈なんかよくわからんけど凄いものを聴いた〉という、突然殴られた感がすごいです。

そして、曲のキーとなる繰り返されるリフが、クサいのがいい

4曲目“Unbreakable”なんか、聴いてみて下さいよ。クサい泣きのリフが2つ、かなりしつこく繰り返され、その後に入るギターソロが追い打ちをかけて泣きのメロディを弾き、しかもハモリまで。一度ピッチ感がなくなる機銃掃射展開があり、終わるかと思ったら、また最初のリフに戻る……。

もはや要素が多すぎて何を言っているのかわかりませんが、今年の話題作なので、まだ聴いていない方はぜひ。

来日公演がソールドアウトしたことでも、話題になっていました。今度は大きな会場で、私も過剰の渦を体験してみたいです。