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音数が少なくても成立する、説得力ある歌声

――そしてROBITASにはもう1人、〈謎のアレンジャー澤田仮面〉というメンバーがいます。

黒澤「事情があって名前を出せないんです。コロナ禍以前に澤田とバーベキューをよくやってて、〈バンドでライブをやりたいよな!〉〈下北沢のライブハウスでノルマを払うところから始めようぜ!〉って盛り上がったのが始まりでした。そのバンドは僕がキャンピングカーで1人旅に出てポシャっちゃったんですが、ひょんなことから澤田と再会してまたバンドをやることになったのがROBITASです。ただその頃には彼が売れっ子になってて。なので、ROBITASでは裏方に近い感じです。

で、ボーカルを探してたらInstagramで楓さんの動画がたまたま出てきて、歌声がいいなと思ったんですね。アルゴリズムに感謝です。それで誘いのDMを送ったら無視されて(笑)。でもTwitter(X)で送ったら、10分ぐらいで返事が返ってきました。インスタのDMは迷惑フォルダに入っちゃってたようです」

――インスタのフォロワー、かなり多いですもんね(本稿執筆時は4.3万。TikTokは10.6万)。

「いえ、増えたのは最近なんです」

黒澤「当時は3,000くらいでした」

「黒澤さんにDMを頂いたときは、通知が来なくて無視しちゃってたんです」

黒澤「大丈夫。慣れてるんで(笑)!」

「根に持ってますよね(笑)?」

――黒澤さんは印象的な声の持ち主を探していたそうですよね。

黒澤「そうですね。女性ボーカルの曲を作るのが楽しいんです。それに歌声に説得力があると、ドラムと歌、ギターと歌だけとか、アカペラとか、音数が少なくても成立して音楽的に聞こえるのがすごいなと思って」

――楓さんの歌声にはそれほど説得力があるということですね。

黒澤「そうなんですよ。染谷さんも〈楓さんの声がいいね〉って言ってて」

「恐縮です……」

黒澤「(Lampの榊原)香保里さんにちょっと似てますよね。ウィスパー気味に歌うと特に似てる」

「Lampをカバーすると、そう言っていただくことがかなり多いですね」

 

「インターステラー」鑑賞後の気持ちを音楽で表現したい

――そうして始動したROBITASですが、私は『メトロポリタン』が出る前に黒澤さんからDMで音源を送ってもらっていて、楓さんの歌も曲もアレンジもすごくよくてびっくりしたんです。その頃はベーシストの井上真也さんとドラマーのオビナタユウサクさんを含む5人組でしたよね?

黒澤「バンドがやりたかったのでそうしたんですけど、蓋を開けてみたらバンドっぽい感じじゃなくなって、結局3人のユニットになりました」

――DMには〈SF作品から影響を受けた〉と書いてあって、今回のミニアルバムもそのテーマは通底しているんですね。

黒澤「ラー・バンドの歌詞もSFっぽいですよね。でもROBITASの曲はSF色がそこまで強い感じではなくて。ただROBITASで楓さんに歌ってもらいたいコンセプトはあって、儚くて憂いを帯びた、虚無っぽい感じをイメージしているんですね。……言語にするのが難しいので音楽にしてるんですけど(笑)」

――ROBITASというバンド名もSF的です。

黒澤「手塚治虫のロビタ(『火の鳥』のキャラクター)からつけました。藤子不二雄の『まんが道』や『愛…しりそめし頃に…』、藤子・F・不二雄先生の短編集にハマってた時期に『火の鳥』を読み返して思いついたんです」

――SFと聞くと「三体」のような最新の作品を思い浮かべますが、ROBITASの歌詞からはレトロフューチャーなかわいらしいイメージが浮かびます。

黒澤「SFはなんでも好きなので重たい『三体』も好きですが、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』みたいなロマンチックな作品も好きなんです。ハマったきっかけは小学生の頃に読んだ『十五少年漂流記』や『海底二万マイル』で、少年の冒険心をくすぐるようなものが好きでしたね。星新一は親が全巻持ってて、小さい頃から読んでました。そこから筒井康隆とか『マイナス・ゼロ』とか『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とか『スローターハウス5』とかを読んで……好きなものはたくさんあります」

――映画ではなく小説なんですね。

黒澤「そうですね。たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の舞台が2015年だったり、映画は描いた未来像が古くなっちゃうんです。でも文章から想像する未来は、可能性が無限大だと思います。もちろん映画も好きですよ。『インターステラー』を見たあとの気持ちってわかりますか?  やるせなくて、みぞおちのあたりにぐっとくる感じというか……。僕はあの感覚を音楽に落とし込みたいんです」