(左から)楓、黒澤よう

突如現れたバンド、ROBITASを知っているだろうか?  佐藤望、北園みなみとのユニットOrangeadeを経て、現在は佐藤との棕櫚で活動、ギタリストや作編曲家としても活躍する、黒澤ようが主導する新たなポップグループだ。

彼らの曲を耳にして、まず驚くのはボーカルだろう。すさまじい存在感を発揮する歌声の持ち主は、シンガーソングライターの楓だ。TikTokやInstagramといったSNSで人気を博し、ストリーミングサービスでの“Just The Two Of Us”のカバーなどをヒットさせている新進気鋭の才能である。さらに、〈謎のアレンジャー〉として曲を作り込む役目を担う、澤田仮面(キーボード)を加えた3人でROBITASは活動している。

シティポップやAORからネオソウル、ダンスミュージックまでを飲み込んだ幅広い音楽性と練られたアレンジ、黒澤が影響を受けたSF小説的な歌詞世界は、2025年4月にリリースした3曲入りシングル『メトロポリタン』で早くも確立されていた。今回、12月に発表した7インチシングルに続いてミオベル・レコードから届けられたミニアルバム『ROBITAS』は、新曲やスティーヴィー・ワンダー“Overjoyed”のカバーでバンドの個性を改めて提示しつつ、これからの可能性も感じさせる名刺代わりの作品になっている。

ROBITAS結成に至るまでの道のりから本作の制作背景まで、黒澤と楓にじっくりと話を聞いた。

ROBITAS 『ROBITAS』 miobell(2026)

 

ポートレイツから棕櫚、ROBITASへ――黒澤ようのキャリア

――黒澤さんにはOrangeadeで取材をしたりMikikiの主催ライブに出てもらったりしたことがありますが、来歴について詳しく聞いたことがありませんでした。キャリアのスタートは井上拓己さんとのデュオ、ポートレイツから?

黒澤よう「そうです。ポートレイツは、もともと一緒に旅に出たりボートで川下りしたりしてた10代の頃からの地元の友だちと〈なんかやろうぜ〉って始めたバンドでした。その後はOrangeade、conte、棕櫚を経てROBITASって感じです。Orangeadeはconte、棕櫚とメンバーが変わるたびにバンド名が変わってるので、実質的には同じなんですが(笑)。

〈ひとつのことをやり続けられなかったのを悔やんでいる〉とまでは言いませんが、KIRINJIとか同じことをずっとやってる人はかっこいいと思います。でも50歳ぐらいまで続ければ、1人のアーティストの活動として捉えてもらえるんじゃないかなと思ってます」

――ポートレイツ以前はどんな活動をしていたんですか?

黒澤「1人で宅録をしてました。高校生の頃はニルヴァーナとかのコピバンをやってましたね」

――レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、銀杏BOYZや藍坊主などの青春パンクから影響を受けたとIMALABの記事に書いてあったのが意外でした。

黒澤「もともとグランジとかが好きで、シティポップやAORを聴きはじめたのは20代になってからで遅いんです。コードもメジャーセブンスとかはよくわかってなくて、基本は3和音で、4和音がたまに出てくると〈なんだこれ?〉って(笑)。レッチリの“Under The Bridge”のすごくいいとこにメジャーセブンスが一発入るんですよ。それが好きでしたね」

――ラー・バンドやLampはあとから聴いたんですか?

黒澤「コードを覚えたのが先で、おしゃれなコードを使った音楽を聴きたくなっていろいろ掘りました。それと同時に始めたのがポートレイツなんです」

――ポートレイツはまさにシティポップやAORから影響を受けた音楽性でしたよね。

黒澤「それこそ、のちに一緒にバンド(Orangeade)をやることになる北園みなみはもともとファンで、彼のラジオをめっちゃ聴いてました。あと先日、カフェでLampの染谷(大陽)さんにたまたま会って、LINEを交換できたのが嬉しかったです(笑)」

――やっぱりLampは憧れの存在?

黒澤「憧れますね。ずっと音楽を作ってると、聴き方が研究する感じになっちゃうんですけど、Lampはいまでも純粋にファンとして聴きたいから聴くアーティストです」

――黒澤さんは現在、ギタリストとしてサポートもやっているんですね。

黒澤「レコーディングとライブのサポートをしてます。この前はsugar meさんのサポートをやりました。ギターだけでライブをやるのは楽しいんです。歌わなくていいし、歌詞を覚える必要もないから楽で(笑)」

――ソロ活動はしないんですか?

黒澤「今年からする予定で、いま曲を作っているところです」

 

テイラー・スウィフトとの出会いから弾き語りへ――楓のルーツ

――それは楽しみですね。楓さんは東京出身で、幼少期から洋楽に親しんでいたとのことです。

楓「両親ともに洋楽好きで、小さい頃からいろんな音楽を聴いてました。父は若い頃にバンドをやってたそうで、いろんな楽器をやるんですが、メインでずっと弾いてたのはアコースティックギターです。それと祖父がカラオケスナックをやってて、歌う環境もそばにあって。音楽に囲まれて育った感じはあります」

黒澤「楓さんのバックグラウンドはおもしろいんですよ。出身も下町で江戸っ子なんです」

楓「私は父方の祖母と小学校が同じで、母方のほうも6代ぐらい東京にいるんです」

黒澤「だから、ほぼ『こち亀』(笑)」

――どういう音楽がルーツなんですか?

楓「最初はテイラー・スウィフトでした。まだ有名じゃなかった頃に〈お姫様みたいな子が出てきた〉って両親に教えてもらって。母は留学経験があったので、英語の歌詞にカタカナを振ってもらって、それを見ながら発音を覚えて歌の練習をしてました。父に4コードだけ教えてもらってアコギで弾いてたんです。最初に弾いたのは“You Belong With Me”でした」

――初期のテイラーを聴いていたなんて早いですね。

楓「父は耳が早いんです。エド・シーランやビリー・アイリッシュも有名じゃなかった頃に見つけてました」

――そして、テイラーがきっかけでアコギの弾き語りを始めたと。

楓「そうです。ちなみに兄は父から教わったニュートン・フォークナーにすごく影響されてて、スラム奏法でアコギを弾くんです」

――当時はほかにどんなアーティストの曲をカバーしていましたか?

楓「椎名林檎さんとか。高校生の頃は3ピースバンドのベースボーカルをやってて、SHISHAMOをカバーしてました。あとBUMP OF CHICKENがめちゃくちゃ好きで、高校の頃はUNISON SQUARE GARDENやクリープハイプも流行ってましたね。KANA-BOONがドンピシャの世代で、カバーもよくやってました」

――曲作りを始めたのは?

楓「18歳でカナダのバンクーバーに留学したときに初めて曲を作りました」

――楓さんはお兄さんと音楽活動をしているということで、それこそビリー・アイリッシュのようだなと思います。

楓「留学から帰った頃、兄がライブに誘われて、〈妹が帰ってくるから一緒にやろう〉と急に思ったらしいんです。それで初めて2人でライブをしたんですが、〈意外とうまくできるね〉〈やりやすいね〉となって。オリジナル曲を書きはじめてたので、それを兄に聴かせたら〈一緒にやってみよう〉とアレンジをしてくれるようになりました」

 

葛藤を経て選び取った音楽の道

――初めて曲をリリースしたのが2022年。作曲もお兄さんと一緒にやっているんですか?

楓「曲によりますが、ゼロイチで歌詞やメロディを書くのは私で兄が編曲、という形が多いですね。でもコードには詳しくないから、兄が〈これはどう?〉って投げてくれたり」

――muevo voiceの記事には、音楽を仕事にすることに対して葛藤があったと書かれていました。

楓「そうですね。メイク学校に行ったり、旅行会社で働いてみたり、いろいろやったんです。音楽は趣味で続けようかなとも思ったんですけど、メイクを仕事にしようとしたとき、〈ちょっとちがうな。音楽と同じレベルで好きじゃないと我慢できないかも〉と気づいて。それで、音楽で頑張っていこうと決心しました」

――その迷いは表立って発信することに対する躊躇ですか?

楓「いえ、モチベーションの問題ですね。高校生の頃からYouTubeへの音楽の投稿は続けてたので、熱量の問題なんです。きちんと投稿を続ける、ライブをやる、ちゃんと曲を作るとか、そういうラベルがないと切り替えられないタイプなので、ちゃんとやろうと思いました」

――1stアルバム『Daydreamer』を2025年10月にリリースしたばかりです。

楓「留学時に作った曲を含め、この7年ぐらいで作った曲を全部まとめて入れた作品です」

――英語がペラペラで、英語圏の友人も多いそうですね。

楓「洋楽好きだったのもあって、英語の勉強は熱心にしました。高校も外国語コースがあるところに進学して、英語が4教科ある代わりに理数系が少ない、私にとって最高の学校で(笑)。あとYouTubeで海外のメイク動画を見てたので、リスニングは得意だったんです」

 

音数が少なくても成立する、説得力ある歌声

――そしてROBITASにはもう1人、〈謎のアレンジャー澤田仮面〉というメンバーがいます。

黒澤「事情があって名前を出せないんです。コロナ禍以前に澤田とバーベキューをよくやってて、〈バンドでライブをやりたいよな!〉〈下北沢のライブハウスでノルマを払うところから始めようぜ!〉って盛り上がったのが始まりでした。そのバンドは僕がキャンピングカーで1人旅に出てポシャっちゃったんですが、ひょんなことから澤田と再会してまたバンドをやることになったのがROBITASです。ただその頃には彼が売れっ子になってて。なので、ROBITASでは裏方に近い感じです。

で、ボーカルを探してたらInstagramで楓さんの動画がたまたま出てきて、歌声がいいなと思ったんですね。アルゴリズムに感謝です。それで誘いのDMを送ったら無視されて(笑)。でもTwitter(X)で送ったら、10分ぐらいで返事が返ってきました。インスタのDMは迷惑フォルダに入っちゃってたようです」

――インスタのフォロワー、かなり多いですもんね(本稿執筆時は4.3万。TikTokは10.6万)。

楓「いえ、増えたのは最近なんです」

黒澤「当時は3,000くらいでした」

楓「黒澤さんにDMを頂いたときは、通知が来なくて無視しちゃってたんです」

黒澤「大丈夫。慣れてるんで(笑)!」

楓「根に持ってますよね(笑)?」

――黒澤さんは印象的な声の持ち主を探していたそうですよね。

黒澤「そうですね。女性ボーカルの曲を作るのが楽しいんです。それに歌声に説得力があると、ドラムと歌、ギターと歌だけとか、アカペラとか、音数が少なくても成立して音楽的に聞こえるのがすごいなと思って」

――楓さんの歌声にはそれほど説得力があるということですね。

黒澤「そうなんですよ。染谷さんも〈楓さんの声がいいね〉って言ってて」

楓「恐縮です……」

黒澤「(Lampの榊原)香保里さんにちょっと似てますよね。ウィスパー気味に歌うと特に似てる」

楓「Lampをカバーすると、そう言っていただくことがかなり多いですね」

 

「インターステラー」鑑賞後の気持ちを音楽で表現したい

――そうして始動したROBITASですが、私は『メトロポリタン』が出る前に黒澤さんからDMで音源を送ってもらっていて、楓さんの歌も曲もアレンジもすごくよくてびっくりしたんです。その頃はベーシストの井上真也さんとドラマーのオビナタユウサクさんを含む5人組でしたよね?

黒澤「バンドがやりたかったのでそうしたんですけど、蓋を開けてみたらバンドっぽい感じじゃなくなって、結局3人のユニットになりました」

――DMには〈SF作品から影響を受けた〉と書いてあって、今回のミニアルバムもそのテーマは通底しているんですね。

黒澤「ラー・バンドの歌詞もSFっぽいですよね。でもROBITASの曲はSF色がそこまで強い感じではなくて。ただROBITASで楓さんに歌ってもらいたいコンセプトはあって、儚くて憂いを帯びた、虚無っぽい感じをイメージしているんですね。……言語にするのが難しいので音楽にしてるんですけど(笑)」

――ROBITASというバンド名もSF的です。

黒澤「手塚治虫のロビタ(『火の鳥』のキャラクター)からつけました。藤子不二雄の『まんが道』や『愛…しりそめし頃に…』、藤子・F・不二雄先生の短編集にハマってた時期に『火の鳥』を読み返して思いついたんです」

――SFと聞くと「三体」のような最新の作品を思い浮かべますが、ROBITASの歌詞からはレトロフューチャーなかわいらしいイメージが浮かびます。

黒澤「SFはなんでも好きなので重たい『三体』も好きですが、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』みたいなロマンチックな作品も好きなんです。ハマったきっかけは小学生の頃に読んだ『十五少年漂流記』や『海底二万マイル』で、少年の冒険心をくすぐるようなものが好きでしたね。星新一は親が全巻持ってて、小さい頃から読んでました。そこから筒井康隆とか『マイナス・ゼロ』とか『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とか『スローターハウス5』とかを読んで……好きなものはたくさんあります」

――映画ではなく小説なんですね。

黒澤「そうですね。たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の舞台が2015年だったり、映画は描いた未来像が古くなっちゃうんです。でも文章から想像する未来は、可能性が無限大だと思います。もちろん映画も好きですよ。『インターステラー』を見たあとの気持ちってわかりますか?  やるせなくて、みぞおちのあたりにぐっとくる感じというか……。僕はあの感覚を音楽に落とし込みたいんです」

 

転調で表現した迷いと決心

――音楽的には、やっぱりシティポップやAORを志向しているのでしょうか?

黒澤「そんなにこだわってないですね。たまたまこういうサウンドになっただけで、いろいろやっていきたいと思ってます。『メトロポリタン』の3曲はギターを歪ませたり、バンドらしいサウンドを目指したんですけど、そういうのだけじゃおもしろくないなと思って、打ち込みっぽい曲や音数少なめの曲も作ったり。まだまだ模索中です」

――『メトロポリタン』の収録曲はどれもシンセサイザーの音色とフレーズが印象的で、音色に関しては黒澤さんからかなり要望を出したそうですね。

黒澤「〈一発でROBITASってわかるシンセの音を作ってくれ!〉って澤田に頼んで、来ては投げ、来ては投げを繰り返して17ラリーぐらいしました。特に“メトロポリタン”のイントロは大変でしたね」

――1曲目“メトロポリタン”はBメロの転調にこだわったとか。

黒澤「Bメロで音が上がったり下がったり、ふわふわするのは迷ってる心情の表れで、サビで決意が固まったかのようにCにまた転調するんです」

楓「あそこ、気持ちいいですよね」

――ROBITASとして最初に作った曲ですか?

黒澤「そうです。“Muted Tokyo”と“Imaginary Trip”はもともとあって、歌ってくれる人を探してた曲でした。“メトロポリタン”はROBITASを始めるにあたって作った曲です」

――ROBITASの曲は黒澤さんが書いていて、歌詞も楓さんの曲とはちがう感じなので、ボーカルのアプローチは変えていますか?

楓「そうですね。ROBITASの曲はメロディラインが難しいんですが、そういう曲も好きなので、自分の曲を作るときとはちがう楽しさがありました。ちょっとゲーム感覚というか、自分のボーカルをどう合わせにいくかを考えて歌えたので、毎回レコーディングは楽しかったです」

――ROBITASは歌詞がユニークで、特に“メトロポリタン”は使われている単語が独特ですよね。〈パーキングエリア〉〈ポタージュ〉〈新東名バス〉〈町中華〉〈新東京格安航空〉とか。

黒澤「文字数の問題をクリアしたうえで、印象的で伝わりやすい言葉を考えました。たとえば〈コンビニ〉は使いたくないとか、自分なりの基準はあるんです」

 

平和でのどか、でもディストピア

――2曲目“Muted Tokyo”はどんな曲ですか?

黒澤「人類がかなり減少した世界を想像して書いたんですが、〈でもディストピア的な荒廃した感じを楽しもうよ〉という曲ですね。京都の鴨川のような平和でのどかな景色をイメージしつつ、でも実はディストピア、みたいな」

――楓さんは歌ってみてどうでしたか? メロディが複雑で、さらに後半で変化もしているので難しそうですね。

楓「リズムどりが難しい曲でした。〈細かくリズムをとらないと歌えない〉ってレコーディング時に教えてもらって、難しいけど歌ってておもしろかったです」

黒澤「すんません! コード進行はループしてるので、曲自体はシンプルなんですけどね」

――一方でアレンジが工夫されていて、ブレイクビーツやダンスミュージック的な要素がところどころ入っていますね。

黒澤「ムラ・マサとか最近のおもしろいビートメイカーっぽい曲にしたいなと思って、澤田と相談して作りました。イントロが長いので、そこも楽しんでほしいです。あとシングルよりもっと派手なサウンドにしたくて、このミニアルバムのミックスではヤバいことになってます(笑)」

楓「かっこよくなってますよね」

 

歌詞で綴るのは架空の人物の物語

――3曲目が“Imaginary Trip”で、ベースとドラムのグルーヴが引っ張っていく曲だと感じます。

黒澤「たしか16分(音符)のグルーヴが感じられる曲にしたいってテーマがあったのかな?」

――コード進行にはひねりを感じました。

黒澤「シンプルに作ったつもりなんですけど、メンバーに〈複雑〉って言われて。それを受けて作ったのが“メトロポリタン”でしたね」

――この曲も譜割りが複雑で、ボーカルがドラムのビートとユニゾンするところがかっこいいのですが、歌うのは難しそうですね。

楓「サビのリズムがめっちゃ気持ちいいんです。音域的には歌いやすい曲でした。特にサビの音域は歌ってて気持ちいいですね」

黒澤「けっこう高いと思うんだけど、意外とそうなんだね」

――〈君と月までイマジナリートリップ〉と歌う歌詞は、まさにラー・バンド的な浮世離れした感じがします。

黒澤「ブランコで揺られながら月に行く妄想をしてて、頭のなかだけですごいことを考えてる人の話です。いま気づきましたが、全曲、架空の人物の物語を書いてますね。もちろん僕の経験も入ってはいるんですけど」

 

スティーヴィー・ワンダーをネオソウル感覚で再解釈

――それこそ星新一のショートショートみたいですね。ここまでが『メトロポリタン』の収録曲でした。4曲目はスティーヴィー・ワンダーのカバー“Overjoyed”です。

楓「もともと好きな曲で、ROBITASでやったらかっこよさそうだなって思ったので、〈どうですか?〉と提案したんです。何曲か挙げたなかでいちばん反応がよかったのがこの曲でした」

黒澤「僕も好きな曲だったんです。ほかにも候補はあって、僕はラー・バンドの“Clouds Across The Moon”をやりたかったんですよ。でも、男性ボーカルの曲を女性が歌うって特別感があるじゃないですか。ラー・バンドだと女性のキーでそのままできちゃうんですよね」

――原曲はストリングスが入っていてビートが立っていないアレンジですが、ROBITAS版はネオソウル的なグルーヴで再解釈しているのがおもしろかったです。間奏でディアンジェロのオマージュっぽい部分が聴けますね。

楓「グルーヴがかっこいいですよね」

黒澤「澤田に限らず、みんなディアンジェロとかああいう音楽は好きじゃないですか。だから、その要素を盛り込みました。コードは僕が書いたんですけど、ほぼ原曲どおりです。原曲のアレンジは我々じゃできないので、僕らができるピースでやりました。

そういえば、この曲も『メトロポリタン』の3曲も〈バンドやりてえ!〉って時期に録ったので、歌以外のバンド演奏は一発録りなんですよ。レコーディングは緊迫してましたね」

――“Overjoyed”は、楓さんは歌ったことがあったんですか?

楓「実際に歌うのは初めてでした。小学生ぐらいから聴いてて、当たり前になりすぎてた曲かもしれません」

 

ストリングスのように響く1人多重コーラス

――次の“Midnight Cruising”は3人だけで作った曲ですか?

黒澤「ビートメイク的な部分は全部、澤田がフルアレンジしてます。想像どおりの音になってて最高です」

――前半の3曲とちがって、シンセがリードしていく曲ではないですね。

黒澤「音数を少なめにしてます。夜中が舞台の曲なので、シンセが入るとシンプルにうるさいじゃないですか(笑)。なので、ちょっと静かにしてもらってます」

――そのぶん、黒澤さんのギターのカッティングやボーカルの多重録音の浮遊感がすごく気持ちいいですね。

黒澤「コーラスはちょっと入れすぎちゃったかも」

楓「10数トラックは重ねました(笑)」

黒澤「すんません! 音数を減らしたと言いつつ、コーラスアレンジをしてると楽しくてつい重ねちゃうんです」

楓「すごく気持ちいいですよね。もはやストリングスみたいになってて」

――ダンスミュージック的な音の抜き差しもあって、後半に盛り上がっていくところもいいですね。黒澤さんが好きなトム・ミッシュなどの作品との共通点も感じます。

黒澤「最近のネオソウルとかのノリも意識してますね」

 

少ない音数で隙間を活かし、歌が映えるサウンド

――最後の“Rainbow”もグルーヴが牽引する曲で、音と音の隙間が活かされていますね。

黒澤「以前、父が倒れて救急車で運ばれたんです。父は1人暮らしで、飼ってる猫の世話をしなくちゃいけないから、僕が実家に帰って。でもぜんぜん退院してこなくて、暇で作ったのがこの曲です。

ひさびさに地元に来たら、子どもの頃に遊んでた森が住宅街になってたり、そういうところからインスピレーションを受けて。歌詞の〈見慣れた曲がり角の先/かつてのしじまは霧の中〉とかは、そのことを書いてます」

――シンリズムさんがベースとドラムで参加しているんですね。

黒澤「シンリズムくんの家で録ったドラムの音を知ってるので、あの音で録りたいなって思って。あと楓さんのボーカルを生かして、歌がいちばん映えるように音数少なめで、隙間をめっちゃ空けた曲にしようという意識がありました」

楓「私の作品は基本的に音数が少ないので、この曲は歌いやすかったです。自分のボーカルで空気を作ることができる余白を残してくださってたので、そこがすごくよくて。サビのところは〈レイドバックした感じで歌って〉と言われて、私はリズムに従っちゃうタイプなので勉強になりました」

黒澤「うしろにズレ気味でリズムをとってほしかったんですよね」

 

楓さんに歌ってもらいたい曲はたくさんある

――今後のROBITASの目標はライブをやることですか?

黒澤「そうですね。バンドの形態が変わったので、どうしたもんかって考えてます。あとは曲も作ってて、いまは冬っぽい曲を作ってます。コンピへの参加の誘いも頂いてますが、次はアルバムを作りたいですね。まだまだ楓さんに歌ってもらいたい曲はたくさんあるので」

楓「楽しみです!」

――それにしても楓さんの歌声は、聴けば一発でもっていかれるような素晴らしい響きがありますよね。ちょっと掠れた感じもかなり特徴的で。

黒澤「そうなんですよ。最近、歌の研究をしてて、英語ができる人特有の発声があるんですよね。楓さんの歌もそれで。楓さん、インスタフォロワーが1年で3,000から3万と10倍以上になったので、来年は30万になるんじゃないですか?」

楓「そんなにいかないです(笑)」

黒澤「そのうち超売れても仲良くしてね、とはよく言ってます。僕が見つけたので(笑)」

――「俺が育てた」みたいな言い方(笑)。

黒澤「とにかく楓さんのボーカルは最高にいいから!」

楓「嬉しいです。ROBITASの曲に自分の歌声が合うか最初はちょっと不安だったので、安心しました。今夜はよく眠れそう(笑)」

 


RELEASE INFORMATION

ROBITAS 『ROBITAS』 miobell(2026)

リリース日:2026年2月18日(水)
品番:PCMR0038
仕様:CD
価格:2,530円(税込)

TRACKLIST
1. メトロポリタン
2. Muted Tokyo
3. Imaginary Trip
4. Overjoyed
5. Midnight Cruising
6. Rainbow

*M1-M4 アルバムミックス
*M5-M6 新曲
*M4 スティーヴィー・ワンダーのカバー

 


PROFILE: ROBITAS

2025年1月結成。黒澤よう(ギター)、楓(ボーカル)、澤田仮面(キーボード)で活動中のポップグループ。キャッチーで唯一無二なサウンドを目指して活動している。2025年4月に3曲入りのデジタルシングル『メトロポリタン』をリリース後、12月に1stシングル『メトロポリタン(7inch Mix)/Overjoyed』を7インチでリリースした。
Instagram:https://www.instagram.com/robitas_jp/
X(旧Twitter):https://x.com/robitas_jp
『メトロポリタン』配信リンク:https://linkco.re/pSf8zYdh

■関連リンク
ミオベル・レコード ROBITAS『ROBITAS』:https://miobell-records.com/pcmr0038/