
歌詞で綴るのは架空の人物の物語
――3曲目が“Imaginary Trip”で、ベースとドラムのグルーヴが引っ張っていく曲だと感じます。
黒澤「たしか16分(音符)のグルーヴが感じられる曲にしたいってテーマがあったのかな?」
――コード進行にはひねりを感じました。
黒澤「シンプルに作ったつもりなんですけど、メンバーに〈複雑〉って言われて。それを受けて作ったのが“メトロポリタン”でしたね」
――この曲も譜割りが複雑で、ボーカルがドラムのビートとユニゾンするところがかっこいいのですが、歌うのは難しそうですね。
楓「サビのリズムがめっちゃ気持ちいいんです。音域的には歌いやすい曲でした。特にサビの音域は歌ってて気持ちいいですね」
黒澤「けっこう高いと思うんだけど、意外とそうなんだね」
――〈君と月までイマジナリートリップ〉と歌う歌詞は、まさにラー・バンド的な浮世離れした感じがします。
黒澤「ブランコで揺られながら月に行く妄想をしてて、頭のなかだけですごいことを考えてる人の話です。いま気づきましたが、全曲、架空の人物の物語を書いてますね。もちろん僕の経験も入ってはいるんですけど」
スティーヴィー・ワンダーをネオソウル感覚で再解釈
――それこそ星新一のショートショートみたいですね。ここまでが『メトロポリタン』の収録曲でした。4曲目はスティーヴィー・ワンダーのカバー“Overjoyed”です。
楓「もともと好きな曲で、ROBITASでやったらかっこよさそうだなって思ったので、〈どうですか?〉と提案したんです。何曲か挙げたなかでいちばん反応がよかったのがこの曲でした」
黒澤「僕も好きな曲だったんです。ほかにも候補はあって、僕はラー・バンドの“Clouds Across The Moon”をやりたかったんですよ。でも、男性ボーカルの曲を女性が歌うって特別感があるじゃないですか。ラー・バンドだと女性のキーでそのままできちゃうんですよね」
――原曲はストリングスが入っていてビートが立っていないアレンジですが、ROBITAS版はネオソウル的なグルーヴで再解釈しているのがおもしろかったです。間奏でディアンジェロのオマージュっぽい部分が聴けますね。
楓「グルーヴがかっこいいですよね」
黒澤「澤田に限らず、みんなディアンジェロとかああいう音楽は好きじゃないですか。だから、その要素を盛り込みました。コードは僕が書いたんですけど、ほぼ原曲どおりです。原曲のアレンジは我々じゃできないので、僕らができるピースでやりました。
そういえば、この曲も『メトロポリタン』の3曲も〈バンドやりてえ!〉って時期に録ったので、歌以外のバンド演奏は一発録りなんですよ。レコーディングは緊迫してましたね」
――“Overjoyed”は、楓さんは歌ったことがあったんですか?
楓「実際に歌うのは初めてでした。小学生ぐらいから聴いてて、当たり前になりすぎてた曲かもしれません」
ストリングスのように響く1人多重コーラス
――次の“Midnight Cruising”は3人だけで作った曲ですか?
黒澤「ビートメイク的な部分は全部、澤田がフルアレンジしてます。想像どおりの音になってて最高です」
――前半の3曲とちがって、シンセがリードしていく曲ではないですね。
黒澤「音数を少なめにしてます。夜中が舞台の曲なので、シンセが入るとシンプルにうるさいじゃないですか(笑)。なので、ちょっと静かにしてもらってます」
――そのぶん、黒澤さんのギターのカッティングやボーカルの多重録音の浮遊感がすごく気持ちいいですね。
黒澤「コーラスはちょっと入れすぎちゃったかも」
楓「10数トラックは重ねました(笑)」
黒澤「すんません! 音数を減らしたと言いつつ、コーラスアレンジをしてると楽しくてつい重ねちゃうんです」
楓「すごく気持ちいいですよね。もはやストリングスみたいになってて」
――ダンスミュージック的な音の抜き差しもあって、後半に盛り上がっていくところもいいですね。黒澤さんが好きなトム・ミッシュなどの作品との共通点も感じます。
黒澤「最近のネオソウルとかのノリも意識してますね」